日本パラグライダー協会
 
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6月11日
 
 
 
 
2005 PWC フランス リポート
レポート: 宮田 歩
2005年6月4日〜11日

2005PWC第2戦目がフランスの開催されました。JPAからは扇澤郁、只野正一郎、宮田歩、水沼典子、後藤雄大の各選手が参戦しました。開催地のBourgSt Mauriceは冬季オリンピックの開催されたアルベールビルから、入り組んだ谷をイタリア側へ入った所にあるヨーロッパ随一のスキーリゾートとしても知られています。200kmを超えるトライアングルフライトが記録されているエリアとしてフランスでも有名。シャモニーと並んで大記録を作るスタート地点となっています。初めてのエリアですが、飛び慣れたフランスアルプスの地形に自信はあります!入り組んだバレーからなる山岳エリアですがチャンスは十分にあると望みました。



【6月3日(金)】

StMauriceに練習に入るはずであったが、フェーンで南風が強いため飛べそうなアネシー湖周辺を飛ぶことに、1年ぶりのアネシーであったがやっぱり最高!周辺エリアがだめでもなぜだがアネシーだけは飛べるのだ!軽くアネシー湖を1周した。グライダーが新しくなり滑空比が良くなったからか、エリアが小さく感じられた。アルプスを飛ぶ良いウォーミングアップとなった。

アネシー岩盤


【6月4日(土)】

朝BourgSt Mauriceへ移動。アネシーからは車だと1時間30分ぐらいでそれほど遠くない。オーガナイザーへ行き、レジストレーションを終わらせ早速、練習フライトへ。テイクオフは昨日の南風が未だ強く残っているもののフリーフライトはできた。3200mの雲底でエリア全体を把握できた。良い練習となった。谷に沿ってのアウト・アンド・リターンが基本となりそうだが、コンディションが良ければアネシー湖を含めた165kmのトライアングルが予定されているとのこと!ドンと来いだ!


【6月5日(日)】
Task1 D03-B44-D02-B45-A25 Race 73.8km

風は北風強めであるがタスクは組まれた。谷の中を1度往復し、隣の谷に入り戻ってくるタスク。
前半は扇澤・MAXを含む先頭集団が引っ張る形となる。終盤に入り、宮田セカンド集団から一気に最終パイロンへショートカット!トップ集団へ。しかし最後の山越えで悪夢が・・。通常ならバレーウインドが吹き上がり、簡単に上昇できるであろう斜面がほとんどリフトなし!高層雲が張り出してきて日射が弱まったのか!?

MAX、ベロー、宮田、ノーマン、ポールで弱いサーマルに入るが少し高かったベロー、MAXだけが上がり残りは大スタック!!後続からの集団に飲み込まれることとなった。単発で上がってくる弱いサーマルにしがみ付き、何とか上昇。数人のパイロットがポロポロと尾根越えに成功し、ファイナルグライドへ入っていく・・。痺れを切らしたパイロットは谷の入り口へ逆戻りし、上げていくものも出てきた。宮田は完全に焦り、低く尾根を越そうと試みたがギリギリ越せず、痛恨の尾根へトップラン・・いきなりミス。
扇澤、只野は中盤に水沼も確実にゴールを決めた。

Maxミーティング
 6月5日 TASK 1のトラックログ


【6月6日(月)】
Task2
朝方雨が残ったが、平野部は晴れてきていることからテイクオフに上がるが、残念ながらキャンセル決定。
小雨の中、フライダウンすることに。夕方雨は上がり、谷の中はソアリングできていた。


【6月7日(火)】
Task3 D13-B59-B91-B58-A29 RACE 65.3km

上空の北風が強いため、低いアルベールビルへ移動。アルベールビル手前の大きな谷のアウト・アンド・リターンが組まれた。2003,2004年とフランス選手権で使われていて、よく知っているエリアだ。タスクも似たようなもので、チャンスあり!

前半は今日も扇澤、MAXを含む先頭集団が引っ張る形となった。宮田、只野はセカンド集団で進む。今日の運命の分かれ道は、やはり谷のど真ん中にある最終パイロンB58だった。先頭集団は低く行ったため、パイロン直前で大きく谷の東面へシフト!やや高かった只野、宮田を含む数名はダイレクトにパイロンへ!勝負に出る。パイロン手前は弱いコンバージェンスか?弱くリフトがかっていて、ギリギリの高さでゲット!そのままバレーウインドが受けている西面へ。ここでいち早く抜け出したのはマティアス、ブルース、宮田、アンディ、トニーの5人!後はファイナルグライドへのコース取りでの勝負となった。

マティアス、ブルースは山周り。宮田、アンディ、トニーは沖をダイレクトに行った。谷の中となるダイレクトコースはバレーウインドに乗りスピードを上げ先頭に!途中のリフトをスルーした宮田は勝負にでる。完全に抜け出しトップ独走!そして、このまま滑空比的には十分届く!初の1000点にアドレナリン全開の宮田であったが・・。

残り2kmでまさかのアゲンス風!しかも強風!?激しいコンバージェンスがゴール上空に形成されておりバックし始めた。低かった宮田はもがきながらスピードに乗れず、ホバリング状態。後続は高めに風の弱い東よりコースを選び、楽々ゴール!上を見ながら宮田、涙を飲みながらもアクセルを踏み続け何とか9位でゴール。やはり1000点はそんなに甘くなかった・・。只野も12位と良ポジションでフィニッシュ!後半はコンバージェンスがさらに上昇威力を増し、水沼さんはゴールした後2時間近く高度処理をすることとなった。

ゴール!
 
 6月7日 TASK 3のトラックログ


【6月8日(水)】
Task4 D3-B92-D02-B36-B37-B-34-D07-A25 Race 75.6km

晴れるが今日も北風が強い。谷の中アウト・アンド・リターンが組まれた。前半のB92へのコース取りでいきなり明暗が出る。山のピークに沿って低く行った先頭集団(扇澤、只野含む)はいきなりスタック!宮田、水沼はあせらずセカンド集団で飛ぶ。後半宮田スパート!得意のショートカット勝負が決まり、トップ集団の最後まで追い上げ、ファイナル勝負に出る。

フランク、トーマスは谷の中を。宮田はリフトを期待し山沿いに!高さのある最終パイロンをそのままパスしたのはフランクとトーマスだけ。宮田は100m足りず、上げ直し遅かった・・。コース取りが明暗を分けた・・。遅い時間は谷の中でも高度の高いところは風も弱く沈まないことが多いらしい・・勉強になった。扇澤さんは見事そのコースを見切り、後半一気にまくっていた。

 6月8日 TASK 4のトラックログ


【6月9日(木)】
Task5 
晴れているが今日も北風強い予報。昨日の事故もあり大事を見てキャンセルとなった。


【6月10日(金)】
Task6 D03-B92-B37-D12-B92-D02-A25 Race 80.6km

昨日の風も収まった。Task1を大きくした内容の80.6kmのタスクが組まれた。やはり勝負ポイントは裏の谷の対岸となるD12だ。前半はいつものペースで進む。そして本日の運命の分かれ道D12。宮田はフランクといつものショートカット!先頭はクリスチャンが抜けていたがトップ集団最後に追くことに成功。セイフティーポイントであったB92の高度が高く、只野はギリギリとれずスタック。宮田は手堅くクリアーしファイナルグライドヘ。やや遅れた扇澤さんは脅威のスピードで追い上るが、3人ゴールが出た時点でタスクストップ。B92付近でレスキューを開いたアクシデントがあり、ヘリコプター出動のためだった。

岩盤と扇澤さん
 6月10日 TASK 6のトラックログ


【6月11日(土)】
Task7 D01-D05-D11-B37-B35-D02-A25 Race 69.8km

最終日やはり北西風が強いが、弱まる見込み。コンディションは最高らしい!ついに165kmが出るか?朝のブリーフィングでは最終日なのに選手はすでにヒートアップ!早い時間から東面のD01に上がる。選手の期待に反し、北西風の弱まりが鈍く、安全のための谷の中のショートタスクとなった。ウインドオープン後初め渋かったものの、テイクオフのブローが強くなったのに合わせ劇的に好転した!スタート前の運底はなんと3700m!モンブランが飛んでいけそうなくらい近くに見えた。

3700mから一斉にスタート!D05を取って一気に北西の尾根を目指す!やはり上空の北西風は強く尾根からのかぶりは強烈だった。何機かは大きく潰され、コンディションがハードなのは誰の目にも明らかだ!それでも果敢に尾根を目指す!スタートすれば、強いコンディションでもアドレナリン全開!突っ込む。オーガナイザーからはテイクオフの風が強くなったとのアナウンスがあった。それでもキャンセルコールがあるまでは攻める!

先頭集団が尾根を越えた時点で「Task is Cancel!」無線からコールがあった。全身の力がどっと抜けた・・。終わった。最終日だけに残念な反面、張り詰めていた緊張感と安堵感が交じり合う複雑な心境だった。

遠くにモンブラン


大会成績では 2 日間トップをとり、安定して上位に入ったベテランのパトリック・ベローの完全勝利で幕を閉じた。 2 位には、またもベテランのブルース・ゴールドスミス。 3 位にはアベレージパイロットに徹したフランク・ブラウン!(今回は宮田と一緒に飛ぶことが多く、良い勉強になりました。)

また 6 本成立した現時点のワールドカップ総合成績は、 1 位に今回ブッチギリだったパトリック・ベローが躍りることに! 2 位には安定した成績をキープしているフランク・ブラウン。 3 位はクリスチャン・マウラー。クリスチャンも昔のようにガンガン突っ込むのではなく、一歩引いたところからよく流れを見ているように感じた。ワールドカップも飛び方が変わってきているのか、いかに 900 点台をキープできるか?選手間の技術は拮抗してきているだけに、スピードだけではなく空中での戦略こそが勝敗を分ける様になっていると強く感じた大会だった。

ワールドカップ総合成績では宮田 5 位に扇澤が浮上。残り 3 戦、安定して成績で総合表彰台を狙います!

・大会成績
・ワールドカップ総合成績