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このページではPWCに出場している選手からのリポート随時掲載していきます。 
 PWCトルコ 参加選手からのリポート
 
大会の行われているカイセリの町は、トルコのほぼ中央、アナトリア高原にある海抜約1100mの町です。人口は50000人以上いるらしく、かなりの都会です。HQは町の中心部に有り、ホテルも歩いていけるところに取ることが出来ました。オリエンタル建築物とモスク(寺院)の巨大スピーカーから流れる大音響のお経のような音楽に異国情緒はを感じることが出来ます。 初日の25日からオーガナイザーに熱烈な出迎えを受け、ホテルの手配、テイクオフへの送迎、XCの回収など、かなりお世話になっています。しかし肝心の大会の準備はさっぱりで、町の中にはPWC開催の旗やポスターなどはほとんどなく、30日の休日(戦争勝利の記念日)の式典一色な感じでした。さらにテイクオフはただ斜面を重機で均しただけの土と石ころが散乱していていて、ものすごい土ほこりとラインの根がかりで最悪です。(広さは充分なのですが・・。)スポンサーである町の役人がチェックに来ていましたが、満足げな顔をしているところ見るとパラグライダーへの理解が未だ浸透していないようです。

テイクオフはカイセリの町から約10kmにある3つのピークを持つほぼ円錐形をした何も樹が生えていない海抜1700mの単独峰です。その形から通称「おっぱい山」と呼ばれています。グラナダの一番低いテイクオフを円錐形の山にした感じです。大会で飛ぶエリアは若干の起伏はありますが、ほぼフラットパイロンもほとんど平野部にあります。テイクオフ周辺を少し回して平野に出て行くタスクが予想され、戦略としてはグラナダと同じような物となりそうです。
気象状況について。天気はもちろん晴れ。海沿いのエリアは雨予報でもここは雨が降りそうな気配すらありません。雲底は初日の渋かった2700mから昨日の4500mと4日間で極端に好転して来ています。低気圧が接近しているらしいですが、雨は降りそうもなく大気だけが不安定になるようです。
 
地表の風向きは基本的に西よりの風が吹いていて、パイロンのある平野部へはフォローで出て行くことが出来ます。日によって北または南よりに変わり、風下側へコンバージェンスラインを形成することが考えられます。とにかく毎日タスクは出来そうで、長期戦は必至となるでしょう。
  
 
8月29日(日)
Task1 
RaceToGoal 52,7km
D99(テイクオフ) 13:40〜
B05 10km 14:40〜
B05
B11
A55(Goal)



朝起きてまず心配だった腹の状態をチェック。薬が効いてきたようで良好。ひとまず、ほっとした。昨日からの前線通過で北西風の強風予報だが、快晴で風も弱い。強風予報と初日ということもあり、オーガナイザーの動きはゆっくり。テイクオフの風が予想に反して弱いため、11:00にテイクオフへ移動した。町の中心にあるHQからテイクオフのある通称「おっぱい山」まで40分で行く事が出来る。アクセスはとても良い。
テイクオフは充分な広さがあるのだが、重機で均しただけの石ころと根っこが多くあり最悪。さすがに選手が文句を言ったのか、当日になりでっかいブルーシートがひかれ少しはましになった。さすが砂漠の国トルコ!山の上に草などないのは当たり前、グライダーが土ぼこりで真っ白になるのが普通な考えのようだ。(キャノピーには最悪なのに・・・。)パラグライダーへのイメージがアルプスとはかなり違うようだ。確かに飛べばコンディションも良く最高なのだが、この場所でずっとパラをやろうとは思いがたい。(爽やかでない!冒険のノリ!)
テイクオフ周辺は気象予報に反してそれほど風は強くなく、しかも南東風。情報は全く外れているが競技は出来そう。初日と言うこともあり、風下の平野部へジグザグに飛ぶ52.7kmのRaceToGoalが決まった。風下へのタスクのため難易度は低い。キープハイで飛べばゴールは簡単だ。テイクオフの状態が良くないためエアースタートまで1時間とられている。あせらずじっくり行くことを念頭にテイクオフする。しかしいきなりの試練が!

ダミーは良い上がりを示していたがウインドオープン後テイクオフ周辺は強烈な逆転層におさえこまれた様に全く上がらなくなった。テイクオフ前に120機の地獄絵図状態。経験の浅い地元パイロットも多くかなり危険な状態が約50分続くことに・・。スタートまで残り10分!アラーの神に願いが通じたのかテイクオフ前に強烈なダストデビルが発生!!地表から吹き上げられたゴミと共に突き上げるようなサーマルが上がった。3500mまで一気に上昇した。ギリギリスタートに間に合った。

一気に15km先のファーストターンポイントをB05クリアー!そのまま最短距離をセカンドターンポイントB11まで突っ走る。途中やっと発達したあ積雲のしたに入り3800mまで上げてトップ集団でB11へグライド。そして今日の運命の分かれ道が!B11からゴールA55までは真っ直ぐフォロー。後は一発最初にサーマルを引っ掛けた物が勝者となるのは必至!血の熱い連中はそのままゴール方向へグライドし勝負に出る。僅かに高度の高かった宮田は運良くターンポイント上で弱いサーマルをゲット!回すか否か!?
勝負に出た連中は運に見放されかなり低くなっていた。チャ−ンス到来!!しっかり上げれば最初にファイナルグライドに入ることが出来る。ドイツのNorman,フランスMaxも合流しファイナルグライドに入る。Norman、Maxは右よりのコース、宮田は勝負をかけて左コース。宮田の読みどうりNormanは低くなり回し始めた。そして宮田もリフトに入った。どうする?このまま行くか?バリオのファイナルグライドカリキュレーターは+100mを示している。突っ込みたい気持ちを何とか押さえてもう300mだけゲインすることに。トップはNormanに譲ることにした。初日からリスクを負う事は危険すぎる。手堅く2位をゲット!

長い大会の初日は最高のスタートとなった。3位には後半追い上げた川地が入った。長島、城所、辻、上山が続いてゴールを決めた。
 
 
8月30日(月)
Task2 
RaceToGoal   74.8km
D99(テイクオフ) 13:00〜
B06 15km   14:30〜
B06
A44(Goal)


  大会2日目。今日も快晴。予報は昨日と同じ北西風強い予報。昨日のこともあり当てにはならない。テイクオフは北西風4m、MAX7m今日は当たっているようだ。今日も平野部へのジグザグタスクで一番遠いゴールA44を使うこととなった。作戦は昨日どおり冷静に行こう!気合を入れてテイクオフした。
しかーし今日もいきなりの試練が!最初の集団はスポッと抜けてが自分の集団は全然上がらず、テイクオフ周辺を1時間以上もがくこととなった。当然スタートには間に合わず、いきなりサーマル1つで遅れる。正一郎、辻はトップ集団で順調にスタート!平野部のコンディションは雲のないブルー!サーマルも渋くかなりスローペースで進む。遅れていた宮田はなんとか追いつこうとショートカット攻撃を単独で試みるが、思うように決まらずその差をつめることはなかなか出来ない。リスクも大きく一度対地100mまで高度を落としてしまう。運良く上げなおせたがやばかった。

結局その差を詰めることは出来ず。自分のペースを取り戻した正一郎はトップ集団を引っ張り5位でゴール!辻はゴール前での勝負にはずれ痛恨の10kmショート・・。宮田は遅れて 位でゴール。城所、長島、上山もきっちりゴールを決めた。未だ2日目!残り5日!先は長い。
 
 
8月31日(火)
TASK3 
RaceToGoal 79.7km
D99(テイクオフ) 12:30〜
B07 14km 13:30〜
B07
A33
A22(Goal)


 今日も快晴!いつもの北西風予報。3日目 となり昨日までの風下へのタスクとは違い、アゲンストのレグが入れられ難易度の高いタスクが発表された。ダミーの上がりが良い為か、昨日より早い12:30ウインドオープン。しかしテイクオフの風がコンディションの好転に伴って強まることが予想され、エアースタートは1時間後の13:30。つまりまだ渋くても風が強くなる前に空中にいて待っていろ!と言うことである。

 テイクオフのある通称「おっぱい山」はその名のとおり見事に円錐形をしており、また斜面には樹などない。そのため風の引っ掛ることがなく斜面は見事に風が吹き抜ける構造となっている。まさにエアロダイナミックス!強い風が吹いていてもテイクオフ前でリッジソアリング待つことはできず、逆に強い吹き抜けとなって高度をロスしてしまう事が多い。斜面に沿って上がってくるサーマルブローにあわせてテイクオフできれば良いが、狭いテイクオフでそのタイミングを待つことなど競技中のウインドオープン後は無理である。斜面から離れた沖から上がってくる気まぐれなサーマルに合わせなくてはならないため、悪いタイミングによってはPWCの選手でもいきなり低くなり、あわやぶっ飛びそうになる選手も多くいた。もちろん自分も例外ではなく、この日は正一郎、上山と一緒にかなり低いところまで下がる羽目となってしまう。1時間という長いスタートまでの時間がそんな選手に公平にスタートラインに立たせるためには、やはり必要だ。今日も何とかギリギリスタートに間に合った。

 B07までは順調にフォローのため集団はで進んだ。それからのA33まではサイドの風で進まなくてはならない。強いサーマルのみで回さないと簡単に風下へ流されてしまう。上げきったら、やや風上側へグライドをかけて少しずつA33へ近づいていく。早い段階で勝負に出る選手は出来るだけ長くグライドをかけようと、ギリギリの高度まで攻める。しかし低い高度ほどアゲンストとなる北よりに風向きが向いていて一度強いシンクにはまってしまうとあっという間に高度をロスして降りてしまいハイリスクだ。未だ中盤戦のためあせらず、キープハイでセカンド集団で進んだ。
 
 しかしそのキープハイ作戦に執着しすぎ、A33付近では注意していたにもかかわらず、かなり風下まで流されてしまう。無理やりアゲンストに位置するA33を取りに行って激低くなってしまった。何とかターンポイントを引き返したものの対地高度は100m以下!大ピンチ!いまさら風上には行けず、何とか弱いリフトをキャッチした後はサーマルが立ち上がるまでひたすら風下に流すしかない。ゴール方向とは90度向きの違う山の裏へどんどん流された。こうなれば、開き直って上がるまで流しつづけてやる!どこかでコンバージェンスがあり生還できることを信じて・・。20km流したところでやっとコンバージェンスに到達!3200mまで上昇し、ゴールのある風上側の山向こうへ奇跡の生還!!そして、そのままファイナルグライド!何とかゴールできた。39位と遅かったがゴールしたことで何とか踏みとどまった。695点と低い点数であったが、後半戦につながる貴重なゴールだったと前向きに考えることにした。先頭集団の辻は3800m残り15kmでファイナルに入るが、強烈なシンクに捕まりまさかの2kmショート。川地13位、エディ19位、城所23位とゴール。城所総合4位に浮上!宮田10位をキープ。



  
 
9月1日(水)
TASK4 
RaceToGoal 86.3km
D99(テイクオフ) 12:30〜
B13 30km 13:30〜
B08
A55(Goal)


もちろん今日も快晴!雨の気配さえない。北西風が強い予報。今日もジグザグに飛ぶ平野のアウト・アンド・リターンが組まれた。今日もアゲンストレグは長く、タスク距離も86.3kmと長くなっている、難易度は高い。しかし上位選手はこのフラットランドをアゲンストで進む飛びに慣れてきており、単独で突っ走る選手も出てきた。そんな突っ込みパイロットに引っ張られるかのように昨日までのゆっくりなペースは無くなり、集団全体のペースも上がってきている。



 昨日までのブルーサーマルとは違い、今日はテイクオフ周辺から積雲がランダムに広がっていて、サーマルの場所もわかり易い。今日もトップ集団の最後を高く最高のスタートすることが出来た。積雲が出来ているためサーマルも雲底に近づくにつれて上昇はしっかりしている。トップ引きをする突っ込みタイプのパイロットは積雲を1個飛ばしで進み、そのやや後方を集団で飛ぶセカンドグループは手堅く、積雲ごとに雲底まで上げきり高く、長いグライドで追いかける。追いつき、そして離されるイタチゴッコのような展開ではあるが少しづつその差は開いてしまった。



 スイスのハンス、マティアスやチェコのトーマスはリスクを負い低く飛びながらも見事にサーマルを見つけ、先頭を突っ走る。宮田、辻、正一郎を含むセカンド集団は高い高さと長いグライドで追従するもやはりサーマル一つ遅れる形となる。そして、そのままの順位で最終パイロンからゴールに向かってのファイナルグライド。きついアゲンストでのグライドとなった。ハイリスクを負って突っ走った数名は、見事そのまま突っ走りぶっちぎりでゴール。セカンド集団も続くがファイナルグライドのコース取りとタイミングで明暗が分かれた。きついアゲンストの中、宮田・正一郎たちは50mでギリギリゴール!やや遅れた辻のグループは強いシンクにはまり、またもや数百mのショート・・。さらに後方にいた長島、城所は高く手堅くゴールした。47名のゴール者がでるタスクとなった。総合では城所8位、宮田9位と手堅く毎日ゴールしていたパイロットが上位に入ってきた。
 
 
9月2日(木)
TASK5 
RaceToGoal 68km
D99(テイクオフ) 12:30〜
B10 25km 13:30〜
B08
B11
A22(Goal)


やっぱり快晴!この調子だと6日間フルに出来ることは間違いない。現在9位少しでも順位を上げるためには今日からスパートしなくてはならない。気合を入れた。風向きは今日も北風強い。68kmと距離こそ短いが、今までよりも一つターンポイントの多いタスクとなった。つまり今までがZだったのがMに変わることとなる。(詳しくは添付ファイルのHTMLを見てください)難易度はさらに上がることとなった。

25kmは慣れた1stターンポイントまでは出来るだけ風上のラインを飛ぶことを頭に置いた。いつもの突っ込みパイロットたち(正一郎を含む)はかなり風下にグライド。宮田、辻を含むセカンド集団は風上側コース。大きく2つにコースが分かれた。前半リードしていた風下組であったが、B10に近づくごとにアゲンストがきつくなりペースダウン。B10を取った後低くなり、B08の手前では一つの大きな集団となった。ところが、ここで中盤からコンディションは急激に好転!突っ込みパイロット達は水を得た魚のように、猛烈にスピードアップ!!信じられない突っ込みで一気に差をつけられてしまった。最終パイロンを取った後はフォローでゴールへ突っ込むだけ!見切りよくいった正一郎はセカンド集団から抜けだし、18位でゴール。宮田は手堅くセカンド集団28位でゴール。トップ14人の突っ込み集団のタイムが余りに早すぎ正一郎でも697点、宮田668点と低い点数と終ってしまった。それでも宮田総合8位に浮上。まだチャンスはある。
  
 
9月3日(金)
TASK6 
RaceToGoal 70.1km
D99(テイクオフ) 13:00〜
B05 10km 14:00〜
B03
B12
A22(Goal)


 ついに6日間連続の快晴!何と安定した天気!練習日を含めると連続10日間飛べていることになる。恐るべしトルコ!ワールドカップのルールでは成立するタスクは1大会6本までとなっているため今日が最終日となった。選手の疲れもピークに達していて、まさに体力、精神力の戦いとなった。宮田は表彰台を狙うために、今日は突っ込むしかない勝負日!!コンディションは昨日とほぼ同じ、しかしブルーサーマル。距離も70kmとほぼ同じだが、M字型のコースがさらに風上側へシフトしており、難易度は今回で最も高いものとなった。難易度の高いタスクの中で勝負どころを狙う、宮田のスタイルには合っているのでチャンスあり!。最終日にふさわしいタスクが発表された。

 昨日とは違い積雲のないブルーサーマル。さすがに突っ込むのはリスクが高く、1stターンポイントまでグライドを短く刻んで、サーマルごとに回して進むスローペース。しかし2ndターンポイントを越えてからは最終日ということもあり、中盤からスパートをかけ始める。少し先行していた正一郎を含むトップ集団は最終パイロンの風下側へグライド。あわてず宮田は最終パイロン風上側をグライドし、チャンスを伺うことに。そして勝負の時がやって来た!先頭集団のコースは最終パイロン手前で弱いサーマルしかヒットできず、かなり風下へ流されている。チャ−ンス!宮田、上山はパイロン手前で、ここぞと大きく風上側に勝負に出る。そして見事強いサーマルをゲット!一気に風上から最終パイロンをクリアーしトップに踊り出ることに成功!風下からパイロンに向かう先頭集団は大きく高度ロスしスタック・・。しかしそんな中、ハンスと正一郎だけがかろうじてパイロンをクリアーしていた。ハンスは低い高度でそのままゴールへ流していく。正一郎、宮田、上山は合流し、最後のひと上げがほしいところ。正一郎は見切ってハンスに続く、勝負に出た。上山、宮田は少しだけゲインして続いてファイナルグライドへ突入!強いフォローを背負い対地速度は時速70kmを越えた。宮田は上山と並んで日本人同士のグライド勝負!上山は何度も潰されるも、根性のアクセルワークでハイスピードをキープそのままゴールラインカット!。宮田は10秒だが競り負け・・。正一郎2位、上山9位、宮田10位!!最終日になって決めた!狙いどうりのところで勝負に出ることができ、上山太郎に負けたのは悔しいけど、最後に納得のいくレースをすることができた。この後、続々とゴール者は65名。

 宮田は総合6位!!ワールドカップ自己最高位をゲット!ワールドカップランキングも16位に浮上した。波乱のフラットランドステージでコンスタントにゴールできたこと、長期戦でのモチベーションの維持ができたことが良い成績につながった理由と考えられる。非常に似たステージでもあるオーストラリア(マニラ)での大会経験があったことが大きな自信となっていたことも大きいだろう。しかし何と言っても練習日での激しい食あたり(下痢)が大会初日までに治らなければ、勝負どころではなかった・・。このあたりからツキも味方していたのかもしれない。オーガナイザーのドクターには本当にお世話になった。



 
考察
ヨーロッパアルプスの山岳エリアだけでなく、今回のようなフラットランドのトレーニングも必要であると考えます。フラットランドエリアでは平野でのフライト技術はもちろんです。しかしもっと大きな理由に、その安定している気象コンディションから長期戦となる大会のための戦略理解や、精神面・体力面の維持を経験するには最も適しているように感じるからです。気象の安定しない山岳エリアで身につきにくい技術・経験は今回のようなステージでは波乱の結果となって現れるようです。
 自分にとって今回のトルコは大きな自信になり、次につながる良い経験をさせていただくことが出来ました。ありがとうございました。
 
 
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