2015栂池ジャパンカップ

                            レポート 宮田 歩
今年、梅雨入り前の白馬エリアは最高のコンディションが続いたようです。連日北アルプス主稜線を安全に飛べたとのレポートもされ、選手のモチベーションも最高潮!そして、大会前の天気予報は2日間ともに晴れ予報に主催者もホッと一安心。西日本では梅雨入り宣言されましたが、長野県でも北に位置する白馬エリアは、どちらかというと北陸の天気予報が当てはまるようです。今回はN2Lグランプリ対象大会となっています。さあ、今年の栄冠は誰の手に!?

6月6日(土)
初日、昨晩に降った雨により白馬盆地はしっとり・・・。雨は朝には上がったものの、北アルプスは上空に残った寒気のせいでテイクオフは霧の中。午後から天気は急速に回復する予報ですが、強めの北風が吹く予報も出ています。




受付終了後は、クラブハウス内で開会式とカップ返還式とジェネラルブリーフィング。そして予想タスクを基にした栂池攻略法セミナーが開催されました。競技フライト前に、強い先入観を持つことは危険ですが、一般的なエリアのセオリーを知っているうえでのフライトは必要です。初めて栂池エリアを飛ぶパイロットも多くいましたが、参考にしていただけたようです。





お昼前にはセミナーも終了。さあどうかな?と外を眺めると、やっぱり霧は取れず、そして、予報通り北風が吹き込み本日のタスクはキャンセルが決定。選手はエリア内の緊急ランディング確認組と北風のお助けエリア「生坂エリア」ビジターフライト組に分かれました。




夕方には再度、栂池クラブハウスに集合し、懇親会が行われました。2014年N2Lチャンピオン関根選手の「今年もいただきます!」との勝利宣言と乾杯のあいさつをいただき、懇親会は盛り上がりました。翌日の好天予報に、皆さんふつふつと闘志を燃やし明日に備えるのでした。







6月7日(日)
早朝は、予報通り雲一つない快晴!!青い空に残雪が残る北アルプスは息をのむ絶景です!選手の皆さんはもちろんですが、スタッフも興奮を押さえつつ、ゴンドラに乗り込み、テイクオフへGO!






9時にはダミースタッフがフライト開始。テイクオフレベルにある逆転層のせいか、なかなかトップアウトできません。逆にランディングはすでに活発にサーマルが発生し、下りません・・・。テイクオフレベルの逆転層がブレークする時間を見守りながら、タスクコミッティは時間を検討します。タスクの内容はすでに発表されている予想タスクですが、N2L最大の難所「岩岳」シリンダーを大きくするか?ダミーが到達したサーマルトップで決定することとなりました。





10:00。ダミーの小林宙さんが2500mの雲底から岩岳を余裕でゲット!した時点でコンディションは十分と判断!N2Lは北の小谷エリアから南は岩岳まで最大限に使った28㎞。PCLはその内側を周回する18.5㎞が決定しました。









広い栂池テイクオフから選手は、あっという間に出ていきます。(いつもこうあってほしいです・・)そしてもれなく2400m付近の雲底で待機します。過去に経験したことのないようなスーパーコンディションに、スタート前の選手は、栂池自然園上空にまで広がっています。下から見ている監視スタッフはちょっと心配でしたが、空中のコミッティからの「レベル1」コールにどうやら上空も安定しているようです。選手はスタート前までの時間、北アルプスの絶景を空中から堪能しているようでした。ウーンうらやましい!




N2Lは11:30。PCLは12:00に一斉にスタート!!N2Lは、スタートポジションで大きな差が出たようです。上空が南西風だったこともあり、高かった鵯山頂からよりも、風上となるテイクオフ南側雲底からスタートしたほうが早く、高くスタートポイントをゲット!そのまま、前半はオープン参加の薬師寺選手がトップ集団を牽引します。PCL選手もはるか雲底から確実にスタート!やはり空中一斉スタートは見ごたえがあります。そして、順調にタスクをこなしていくかと思われました。

N2Lに動きがあったのは、やはり難所と思われた岩岳でした。しかし、南風の谷風が弱くなるにつれて、岩岳付近のサーマルは活発化し、ご立派な積雲となり発達します。これを狙っていたかのように、ダイレクトに突っ込んだのは、立山の藤野選手。岩岳ピークよりやや西に位置する「くびれ」上空において、ハイバンクでグリグリと上がっていく姿は、まさに赤い昇竜。すかさず星田選手も飛び込みます。そして、テイクオフ西側を経由した集団から抜けだすことに成功します。



栂池エリア周辺のサーマル活動は12:30をピークに達し、ひとたび雲底まで達した選手たちはガンガンのスピードレースとなりました。雲底下では雲に吸われないように、高度調節が必要なほど!!N2Lグランプリに相応しいコンディションとレース展開に、見ているほう(監視)もドキドキです。さあ誰が最初にゴールへ飛び込むのか!?

さて、13:00頃には予想していた北風が低いところに侵入してきました。冷たい北風はサーマル活動を一時的に衰退させますが、その入り始めはもちろんトリガーとなり、小谷=岩岳方向にクラウドストリートが形成されたのです。こうなると遠回りの鵯尾根経由を取らなくとも真っ直ぐ勝負に!ここでのコース選択でも差が出たようですね。



尻上がりに良くなるコンディションの中、N2Lは立山の藤野選手がオープン参加の薬師寺選手を数秒抑えトップゴール!そして続々とN2L選手がゴールになだれ込んでいきます。ゴール後、ランディング上空は活発なサーマル活動で降りるのが大変なほどに!



この北風侵入によりランディング東側は強い上昇風隊になった反面、テイクオフから続くゴンドラ尾根周辺は下降気流帯に・・・。上げなおしのタイミングと重なったほとんどのPCL選手はこの吹きおろしに捕まり無念のランディングとなってしまいました。

早めにランディング上空に出てきた数名は、上げ直しに成功し、何とか生き残ります。そして、テイクオフレベルも安定した北東風となり、サーマルコンディションも何とか復活。トリッキーなタイミングを耐え抜いた立山の東選手、TAK藤本選手は再び雲底へ到達し、至福のファイナルグライドを決めることができたのです。

N2Lは28名がゴール! 2015年N2Lグランプリチャンピオンは藤野選手。女子チャンピオンは宇都宮の吉川選手に決定しました。PCLは2名がゴール!優勝は立山の東選手。女子優勝は寒風山の籾山選手でした。入賞された選手の皆様おめでとうございます。













2015年栂池ジャパンカップは、N2Lグランプリに相応しいスーパーコンディションコンディションと素晴らしいタスクが成立することとなり、選手の記憶に残る素晴らしいフライトになったことでしょう。これも、大会を準備していただいた後藤校長をはじめ栂池クラブ員のご尽力のおかげです。皆様ありがとうございました。来年のこの季節の大会開催を楽しみにしています。