PNL第7戦 四国三郎ジャパンカップ レポート

開催地:徳島県美馬市美馬町 三頭山エリア
主催:四国三郎ジャパンカップ実行委員
レポート:只野正一郎


<プロローグ>
 今年で13年目になるのかな?日本国内では歴史のある大会地でフライトすると眼下に吉野川が徳島までズドーンと流れていて1000mを超えると北側に瀬戸内海や瀬戸大橋が見えてきます。山並みは東西に広がっていて、南向きの斜面はサーマル活動を活発にさせます。そこに冷たい北風が吹く条件になると荒く気性の激しいサーマルが発生しますが11月の日照ではちょうどいい感じになります。ヨーロッパのアルプスを思わせるような、そんなエリアの大会が四国三郎なんです。大会本部は四国三郎の郷にあって、ログハウスやキャンプ場も利用できていい環境です。四国といえばなんといってもうどんということで大会の期間中や帰り道には必ず食べてかえりたいですね。
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<大会初日TASK1>
 朝から少しもやのかかる接地逆転層が発生していたものの空は快晴でサーマルトップは1200mという予報でした。風は南~南東の予報で強さもちょうどいい感じです。タスクコミッティーではジャパンカップらしいレースをすることと、40%の選手がゴールできるようなタスクを考えて発表しました。タスク距離43km
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 レース展開は、デパーチャーオープン時間にスタートした組と後から追いかける組、テイクオフに時間がかかって遅れた組にわかれました。最初にスタートした組では扇澤、小幡、只野の3名でスピーディーなレースを展開していきました。中盤までは3人で抜きつ抜かれつだったのですが扇澤がワンレグ抜け出すような形になり只野、小幡が必死に差をつめる形でゴールまでいきました。今年のリーグチャンピオンの大澤はスタートを遅らしてトップを追いかける形をとりましたがトップ逃げ切りでした。結果的には、ゴール者23名で参加選手の3分の1がゴールできました。
 トップだった扇澤は1時間35分のタイムでフィニッシュしました。コンディションは予報どおりだったので高くても1200mと例年の北風リーサイドの条件の1500m↑と比べると渋い条件だったですね。
 フライト後は芋汁の炊き出しがあってほっこりぬくもることができました。
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<大会最終日TASK2>
 天気の予想と裏腹にコンディションはいまいちになってしまいました。接地逆転層がときより上空をカバーする層積雲に邪魔されてなかなかブレークせず、おまけに鉛直P速度も良くなくサーマルの見込みが薄い状態で12時過ぎまで待ちました。
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 ジャパンカップ、リーグの最終日、最後の最後まで戦う姿勢は崩せません。わずかな可能性を期待してショートタスクを組んでやってみました。タスク距離35km
 しかしながら、スタートからファーストパイロンまで飛んでいくのが精一杯で結果的にはわずかな点しか残らないものになってしまいました。
 閉会式は予定通り行われ、ジャパンカップの表彰とリーグの表彰が行われました。立派なトロフィーはそれぞれの選手に手渡されました。
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 今回もいろいろな方に支えられて大会を運営できました。これまでに大きなアクシデントはなくやっていけたのはたくさんの人の力添えあってのものだと感じています。


ありがとうございました。


PCL第8戦 宇都宮オープンカップレポート

開催地 : 栃木県宇都宮市 スカイパーク宇都宮
主催:スカイパーク宇都宮パラグライダースクール
レポート:藤川 稔


<プロローグ>
 今回で、3回目のとなったスカイパーク宇都宮でのチャレンジリーグファイナルイベント。高気圧に覆われ、好天の中、大会当日を迎えることが出来ました。今大会には、2010PWCスーパーファイナルで4位入賞したAljaz VALIC氏がゲストとして参加です。世界最速と名高いトップパイロットの飛びを垣間見ようと多くの選手たちが宇都宮に集結しました。各クラスの年間チャンピオン争いも最終戦の今大会までもつれこみ、選手たちも気合が入っています。そんな中、宇都宮ファイナルイベントスタートです!
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<11月6日>
 大会初日、雲ひとつない快晴です。しかし、高気圧どっぷりの気圧配置となり、宇都宮エリアとしては、渋めのコンディションが予想されます。今大会、タスク設定のコンセプトは、80%の選手がゴールでき、かつ、飛びがいのあるタスクを設定すること。どこまでのパイロンを使えるか?タスクコミッティは大いに頭を悩ませます。結果、オープンクラス33キロ、チャレンジクラス20キロのタスクに決定。ウインドウオープンとともに次々と選手たちはテイクオフしていき、上空でスタート時間を待ちます。
 デパーチャーオープンとともに、Aljaz VALIC氏が異様な速さでレースを引っ張ります。選手たちは、ハイペースで周回を重ねていきますが、時とともにサーマルトップは低くなり、コンディションは渋くなっていきます。オープンクラスの鬼門となったのは、B04パイロン。渋いコンディションに加え、強い向かい風。上位で周回していた選手たちもリターンできず、次々とランディングしていきます。そんな中ゴール間際まで、距離を伸ばしたのが、松原正幸選手籾山孝一選手、みごとな粘りのフライトです。
 チャレンジクラスでは、多くの選手がランディング後、急いでリフライトに望みます。トリッキーなコンディションの中、ゴールまでたどり着いたのは、土屋真樹選手、志水克行選手、渡辺美希選手、宇野登茂子選手、伊藤まり子選手の6名、ナイスゴールです。
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 夜は、毎年恒例ニューサンピアでの豪華なパーティです。競技事業部、鈴村氏による年間を振り返っての「なんちゃら王」の表彰やAljaz VALIC氏のスピーチ、3年連続でファイナルイベントを開催していただいたスカイパーク宇都宮谷田校長の表彰など、大いに盛り上がりました。
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<11月7日>
 大会2日目、予報に反して、朝から高層雲が張り、コンディションは中々サーマルコンディションへ移行していきません。お昼には、晴れるという予報を信じて、タスクコミッティは、オープンクラス24.3キロ、チャレンジクラス15.5キロのやや短めのタスクを発表します。
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 ダミーが上がると同時にウインドウオープン。急激にコンディションは好転し、絶好の条件となっていきます。初日同様、先頭を引っ張るのは、Aljaz VALIC氏、2日目は、2ラインのプロト機でのフライトということで、その異様な速さは、さらに極みを増します。上位を争ったナショナル選手たちに15分以上の差をつける脅威のタイム(33分)でゴール。世界のトップ、恐るべしです。
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 レースの展開はというと、オープンクラスでは、終盤までもつれたデッドヒートの末、ファイナルグライドで一歩抜け出した藤川稔選手がトップでゴールメイク、続いて正木選手が、10秒の僅差で2番手ゴール。3番手には、シリアル機ながら見事なフライトで窪島選手が入ります。女子では、村上恭子選手、高橋苗月選手が好タイムでゴール。この後も次々と選手たちがゴールに流れ込み、ゴール者は総勢30名。ゴールとなったサブランディングは、ファイナルイベントにふさわしい盛り上がりとなりました。
 チャレンジクラスの選手たちもがんばります。なんと総勢17名がゴール。トップを取ったのは、志水克行選手、約26分という圧倒的な速さでゴールを決めます。2番手は、初日トップの土屋真樹選手、3位には、最近成長著しい宇野登茂子選手が入ります。ここに来て、チャレンジクラスでは、新しい選手たちの台頭が目立つようになってきました。ぜひ、上のリーグにステップアップしてもらって、日本のパラグライダー競技を盛り上げてもらいたいものです。チャレンジリーグは、競技初心者のためのエントリーリーグである同時に、ステップアップしていけば、ワールドカップにもつながるステップアップリーグでもあります。ぜひ、世界を目指してがんばりましょう!
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 大会総合では、2日とも安定したフライトで結果を出した廣川靖晃選手がシリアル機ながらオープン総合優勝です!
単身プレワールドカップアメリカに出場して以来、急激な成長で、ナショナル勢を脅かす存在となりました。来年度、ナショナルリーグやワールドカップでの活躍が期待されます。2位3位には、2日目トップ争いをした藤川、正木のナショナル勢が入り、続いたのが、シリアル勢の窪島選手、星田選手。総合優勝の廣川選手は、年間シリアルクラスのチャンピオンにも輝きました。おめでとうございます。女子の部では、年間チャンピオン争いもかかった熾烈な戦いの中、2日間丁寧なフライトで成績を揃えた清水貴代子選手が大会総合優勝、そして、年間ランキングでも一気にジャンプアップして女子の部チャンピオンを勝ち取りました。おめでとうございます。2位、3位には、原良江選手、高橋苗月選手が入りました。2選手ともここ最近の大会では、表彰台常連です。今後の活躍に期待です。
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 チャレンジクラス総合では、先頭をきってテイクオフしていく積極的なスタイルが功を奏した土屋真樹選手が優勝。2位には、表彰台常連の志水克行選手、3位には今大会初ゴールを決めた宇野登茂子選手と新鋭たちの活躍が光りました。年間ランキングでも土屋選手が総合優勝、志水選手が準優勝に輝きました。女子の部では、年間を通じて安定した成績を残した伊藤まり子選手が優勝、2位に大熊和恵選手、3位に渡辺美希選手となりました。入賞した選手のみなさんおめでとうございます。
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 2日間好天に恵まれ、ファイナルイベントを飾るにふさわしい大会となりました。主催していただいたスカイパーク宇都宮の谷田校長始めスタッフのみなさん大変お疲れ様でした。


 来年度、スカイパーク宇都宮では、2月にナショナルリーグ第2戦を開催していただきます。条件が整えば、フラットランドを使った大きなクロカンタスクが設定される予定です。チャレンジリーグで活躍しナショナルリーグへのステップアップを目指す選手たちもぜひふるってエントリーしていただければと思います。


 多くの選手がゴールを決め、選手たちにとって大変満足の行くフライトが出来た大会だったかと思います。スタッフの皆様、本当にありがとうございました。


JPA/PCL 第7戦 高嶺カップ2010 大会レポート

開催地 長野県平谷村高嶺山パラグライダーエリア
主催 JMB中部パラグライダースクール
レポート 鈴村恵司


【一日目 10月23日】


レースと名の付く競技なのだから競う相手は当然、自分以外の選手であるべきだ。しかしこのパラグライダー競技は時として(いや今年は“しばしば”か)気象条件そのものと戦わされる場合がある。そして今回の「高嶺カップ2010」に参加した選手も難しいコンディションとひたすら格闘することとなった。(一般向けには暴風雨でのゴルフ大会とでも説明すれば良いのかも。)


けっして悪いとは言えない天気予報のもと、オープンクラス:38名、チャレンジクラス:26名が長野県南部に位置する平谷村高嶺山エリアに集合した。5キロも西へ行けば岐阜県、10キロちょっと南下すれば愛知県、まさに長野県南部の地である。


選手を迎えるスタッフは「JMB中部とんびいず」のメンバの面々、そしてスクール間で親交の厚い愛知県のパラグライダースクール「スカイトライ」のメンバも合流している。


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朝からの雲の多い天候の中、テイクオフでの開会式、ゼネラルブリーフィングと大会運営は粛々と進行する。ソアラブルなコンディションが本当に訪れるのか、選手、スタッフ、共に気もそぞろといったところ。タスクコミッティは、昨年のタスクを基本にさらに安易にしたものを設定し“その時”が来るのをまった。昨年はオープンクラスで18名、チャレンジクラスで9名のゴール者が出ている。


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雲が薄くなり日射量が増した11時過ぎにTO前でウインドダミーがソアリングを始め、オープンクラスで11時30分のウィンドウオープン、12時00分のデパーチャーオープンのエラップスタイムレースが開始される。時間の経過とともによりソアラブルになって行くだろうとの予想でチャレンジクラスの時間設定はオープンクラスの20分遅れで設定されている。


そしていつものようにコンペティショングライダーを擁する強者達がレースを引っ張る。雲底待機に成功した数機が12時のデパーチャーオープンに合わせてスタートパイロンに向かってレースを始める。


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タスクはTOのある高嶺山側の三角パイロンを3周し、国道をまたぎLDのある桐山側の往復パイロンを3往復するもの。チャレンジは三角をサイズダウンし往復が2回。


トップグループが三角パイロンの2周目に入ったところで、先に述べた戦う相手が気象条件に入れ替わって行った。オーバーキャスト、雲量増、リフトがなくなる。グライダーの高度がどんどん落ちて行く。レースどころではない、飛ぶだけで精一杯だ、選手の声が聞こえてきそうだ。(但し、これは高嶺山側の話、実は桐山側はソアラブルな条件を維持していた。)


高嶺山側のグライダーが一掃されたあと、日射復活、セカンドステージ到来。リフライトを待ちかまえた選手がTO。しかし、30分程で再度オーバーキャスト。またもグライダーがいなくなる。


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1時30分を越え、三度目の日射条件が訪れサードステージが開幕、するといつの間にかブーメラン7、ブーメラン5、アイスピーク3が高嶺山の谷間でセンタリングを始めている。ファーストフライトで高嶺山から逃げて桐山側で空中待機していたまさに強者、小幡、薬師寺、藤川の3選手である。ここまでで、すでにあっぱれなのだが小幡選手はさらに高度を稼ぎ、駒を進め、ついには2時過ぎに本日唯一のゴール者となる。いわゆる渋い条件の中32キロを完走。驚異的な粘り、という表現は単に重さや、つらさに耐えているような静的な印象があり適正ではないように思える。わずかのリフトを感知し、細やかなグライダーコントロールを行い、瞬時に次の移動を判断する。きっとココロもカラダも精密機械のように動き続けていたに違いない。


オープンクラスのシリアル機では廣川選手がサードステージの条件を使って14キロを飛び、薬師寺選手をも越えた。


チャレンジクラスは、やはりサードステージをうまく使い切った宇野選手が12キロを飛んでタスクトップに輝いた。この人、今年、PNLにもスタッフとして現れる。どの大会でも見かける人だ。


オープン、チャレンジ両クラスとも、半数以上がミニマム距離を越えられなかった条件でありディクオリティはオープン:0.195、チャレンジ:0.125。選手全員に均等な条件が与えられた訳ではない故のGAP計算値。それぞれの勝者が手に入れた得点はわずかなものとなった。もちろんだからといってゴールの栄誉は損なわれるものではなく、むしろ際だって見える。


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夕方には、ベーシックセミナーを開催。JPAパラグライダー・レスキュー認定検定会の講師をつとめ、レキューBOOKの校正も手がけたフリークライマーの南裏健康氏を迎えての講演である。内容は、飛ぶ人としての覚悟についてから始まり、1990年のトランゴ・タワーの新ルートでのソロ完登、そこからのパラグライダーでの滑空経験。さらには世界のクライミング事情の紹介など、興味深い話を数多く頂くことが出来た。


そして夜の交流会。大会本部にも使用させて頂いているレストラン将軍を借り切ってのパーティ。今日の苦心、明日への期待、明日の天気、選手の話題は尽きない。


【二日目 10月24日】


まぁ要するに曇り空である。低気圧も近づいており雨の降り出しも懸念されるところ。まさかのワンチャンスが訪れることを期待して、今日の気象条件(南東風、強め)に合わせたタスクを設定して冷たい風の吹くテイクオフで待つ。雨雲レーダーでは雨雲は北に抜けているようであるが、気象安定でソアラブルになる兆候は見られない。


結局、10時20分にタスクをキャンセル。フリーフライト、送迎車、思い思いの方法での下山となった。実際、フリーフライトは、ほぼぶっ飛び。競技になる日ではなかった。


最後にフライトしたのは、小幡選手。なぜか南の尾根でセンタリングして高度を維持している。まったく、この人ときたら、である。


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雨の降り出しはまだ先のことと思って野外の表彰式を設定したら、開始直前に霧雨となった。やれやれ。


賞品は大会実行委員長である片桐校長、手ずからの“鳥のまるごと薫製”やら“とれたて野菜”やら“リンゴ”やら。さらにはシャンパンシャワーなんてイベントも。


来年も開催されるそうです。いい天気になるといいなぁ。


さて2010シーズンのJPAチャレンジリーグも大詰め、2週間後に宇都宮大会、まさにファイナルである。


PNL第6戦 2010栂池ジャパンカップ レポート

開催地 スカイワンダーランド栂池エリア
主催 栂池ジャパンカップ実行委員会
レポート 大澤行英





<プロローグ>


 毎年6月に開催されている栂池ジャパンカップ。今年はPWC白馬開催があったので、初めて10月の体育の日をからめた三連休で行われました。この時期の栂池は初冠雪も期待でき、山の高所では雪、中間では紅葉、下段では新緑の三つの色が楽しめる「三段紅葉」が有名です。


 2007年に日本グランプリが開催され、栂池エリアで2回目となる日本グランプリ。2004年から毎年ナショナル大会が開催されており、高い確率で成立しております。今年行われたPWCでは安曇野市三郷へのゴールも大成功をおさめ、新たな可能性を持った栂池ジャパンカップに80名もの選手が集いました。


 そのほかⅩ-白馬も同時開催され、栂池には熱いパイロットたちが集いました。


<10月9日>


 前日の8日の練習日にはたくさんのスタッフと10名以上の選手が集まり、準備とフリーフライトが出来ました。フリーフライトでは岩岳往復が出来ただけに、大会当日に限って雨…。非常に残念ですが、天気ばかりはしかたありません。


 しかし、選手たちは雨でもその時間を楽しむかのように、選手同士交流を深めていました。競技事業部宮田部長による三郷町ゴールへの説明を、今年行われたPWC白馬のトラックログを見ながら行われました。さらに半谷競技委員長より、地形を下見するべきだという指摘もあり、はじめてフライトに行く場所へ挑戦するパイロットに心構えが説明されました。三郷ゴールに現実味がおび出来た選手間では、闘争心が湧いてきたようです。


 主催者により用意された交流会でオードブルをご馳走になった後、選手たちは下見などで各々の時間を有効に使いました。





<10月10日>


 天気予報では雨予報で、フライトするモチベーションがやや沈み気味でしたが、朝の天気は晴れ間ものぞいていました。しかし、予報では明らかに前線が通過する心配がありました。一度はあきらめ、選手ミーティングを行っているさなか、雨雲レーダーから前線がなくなりました。さらに八方エリアからはフライトできるという情報が!10時テイクオフに上がることになりにわかに騒がしくなりました。


 11時過ぎ、選手全員がテイクオフに集まりましたが、先程の晴れ間はどこにもなく、霧のような雨が降っていました。雨はやむときもあるのですが、降ったりやんだりを繰り返します。さらに雨雲レーダーでは消えていた前線が現れました。このままテイクオフで待っていても競技で飛ぶどころかフリーフライトも出来なくなってしまうので、競技はキャンセルとし、希望者のみフリーフライトを楽しんでいただきました。


 下に降りて帰着を済ませた選手たちには、暖かいトン汁がふるまわれ、霧雨で冷えた選手の体を温めてくれました。


 二日間雨でしたが、明日の最終日は間違いなく良い予報です。近隣のエリアに飛びに行くなど、選手は準備に余念がありません。


  


<10月11日>


 早朝、雨が降っていて北風が強く予報とは違う天気に戸惑いましたが、雨がやみ期待していた通りの展開になっていきます。選手たちもそんな天気に心配と期待の表情で、受付の7時30分よりも早く集まり、受付前には早くも行列が出来ました。


 スタッフもそれに応え、選手は9時前には全員テイクオフに集まりました。しかし、テイクオフの視界を低いガスが覆い隠しています。それに気温が低くひんやりとします。選手たちはウエイティングには慣れている様子で冷えないように調整し長くなるウエイティングに備えます。


 最初のブリーフィングでは、気象データを参考に唯一ビッグタスクの可能性が大きいフライトコースが発表されました。テイクオフ→三郷ゴール、54km。ターンポイントはなし。スタートラインはゴールより45kmのビッグシリンダーで、八方と五竜との間に設定されました。あまりにもシンプルで大胆なタスクに選手からどよめきが起こりました。


 タスクを行う上での岩岳周辺の注意事項が説明され、あとはタイミングを待つだけとなりました。時間がたつにつれ、ガスが晴れ10時頃には視界が良くなりましたが、晴れ間がありません。11時を過ぎてようやく栂池エリアに日照が出て、ダミーがサーマルを捕えて上昇します。


 タスクコースは予定通り、D72テイクオフ→A64三郷ゴール54km、スタートラインはA64を中心とする45kmのシリンダーで、八方エリア付近で空中待機できるように設定。ゲートオープンは11時30分、デパーチャーオープン12時30分のエラップスタイムが発表されました。


 ゲートオープンからスタートまで一時間ありますが、栂池から八方まで通常30分ほどかかりますのでスタートに間に合うためには十分に時間があるとは言えません。ゲートオープン時には選手は急ピッチでセットを終え、次々とテイクオフしていきます。


 テイクオフしてすぐに200mほど上空の雲底にはたどり着くことは出来るのですが、栂池からスタートライン付近の八方までには7kmの距離があり、途中には難所の岩岳を越えなければなりません。岩岳へ低く突っ込んだ選手は大スタックを余儀なくされました。低くなったものは上げ直しがさらに難しく、リフライトのため栂池ランディングへ向かう選手も少なくありませんでした。


 そんな中、スタート時間までに30機ほどの選手が集まりました。多くの男性選手の中には女子の村上選手もいます。八方では雲底に着くまでには至らず、1600~1700mの高度でデパーチャータイムを待ちます。


 デパーチャー時刻2分前に2km手前から絶妙のタイミングで走ったのは高杉選手です。その他の選手はフライングしないよう1分前に2km先のスタートラインを目指します。先に行く高杉選手がスタックする間に、扇澤選手、小幡選手、宮田選手が加わり、そのすぐ後ろを大澤選手、稲見選手、長嶋選手、竹尾選手が追う展開となります。


 早い時間に五竜へ到達したグループはなんとか集団で高度を維持して佐野坂へと向かいますが、少しのタイミングの差で下降気流に阻まれる選手も多い中、女子の村上恭子選手、平間利恵選手が佐野坂まで、小森さちよ選手がその手前まで距離を伸ばしました。


 佐野坂付近で二つのコースに分かれました。木崎湖へと伸びている尾根上に低い雲が立ちはだかっているのです。先行している選手の宮田選手、小幡選手は雲の左側の木崎湖コース、高杉選手、扇澤選手は右側の爺ヶ岳にコースを取ります。少しあとから様子を見ていた大澤選手、稲見選手は爺ヶ岳にコースを取ります。この時間を最後に佐野坂上空の雲はさらに大きくなり爺ヶ岳方面のコースを閉ざしてしまい後の選手は木崎湖コースをしか選択肢がなくなりました。どちらのコースが吉と出るか!面白い展開です。


 最初は木崎湖付近で高度が下がります。しかし、大町へと近づくとサーマルにヒット!高度を回復し平地へ出るときには高瀬川上空を飛ぶコースと高度の高い山が続く西コース、低い山が続く東コースに分かれました。トップグループで高瀬川コースを選んだ宮田選手はグランドサーマルを乗り継ぎゴールへと向かいます。


 一方、爺ヶ岳は対流現象がなく、そんな中生き残った高杉選手、扇澤選手、大澤選手は低いながら粘り大スタックの末、ようやく爺ヶ岳を抜け出します。


 少し遅れた長嶋選手はどのコースも渋そうであることから東側の山を選択。しかし、東側のコースはサーマルがなく真ん中の高瀬川コースに戻ります。たとえ好条件に見える高瀬川コースといっても他に比べれば日照がある程度で、渋く苦しい旅が続き、サーマルに乗り継ぐことが出来ず一人、また一人とランディングしていきます。


 その頃、遅れて単独で木崎を離れた伊藤選手は、確実にあげるという自分のペースを崩さずに高瀬川上空を飛んできます。


 PWC白馬で実績のある西側コースの高杉選手、扇澤選手、大澤選手はペースを上げ南下しますが、秋の太陽の傾きは早く陰った東斜面からは下降気流が発生しはじめ、2時過ぎにはサーマル雲が消滅し、西側斜面に回り込めなくなった高杉選手から順に、扇澤選手、大澤選手とランディングしていきました。


 日照の当たっている場所でもサーマルは終焉となり最後までサーマルを使い切って宮田選手はただ一人ゴールまで辿り着きました。単独で後を追いかけていた伊藤選手は最後のサーマルまで使い切りゴール手前7kmまで距離を伸ばしました。


 こうして秋の栂池ジャパンカップ最終日は宮田選手たった一人が54kmをゴールしたわけですが、渋い条件で距離を伸ばした選手が少なくDayクオリティーが不十分で、がんばったにもかかわらずトップの宮田選手得点が760点。グランプリとしては不成立でした。


 しかし、ナショナルリーグ大会としては十分成立条件を満たしています。総合は唯一ゴールした 宮田歩選手が優勝、2位には 伊藤博之選手、3位に 大澤行英選手、4位 扇澤郁選手、5位 松原正幸選手、6位 高杉慎吾選手となりました。女子は1位 村上恭子選手、2位 平間利栄選手、3位 小森さちよ選手。シリアルクラスは、1位 平間利栄選手、2位 榎本康次選手、3位 隅秀敏選手。チーム戦は1位 きのこ山 2位 オレンジレーシング、3位 碧きWINGKISSと なりました。入賞された皆さんおめでとうございます!


 本大会は選手たちに白馬で山を越えていく難しさ、渋いときでも距離を延ばす必要な粘る必要性を、時間とともに変わる日射の計算の大切さを教えてくれました。


 グランプリは11月に行われる次のナショナル大会「四国三郎ジャパンカップ」に場所を移して再度開催されることに決定しました。選手たちはグランプリ優勝という目標にむけて再スタートです!


主催者 後藤敏文様より 


 地元の皆様、近隣スクールや各スキー場関係者,ならびに御後援をいただいた各自治体のご協力で、大会運営も非常にスムーズに進めることができました。JPAの競技関係者の皆様、ならびに大会スタッフの献身的な協力なしには、大会の成功はありえません。今大会に携わってくださいました、すべての皆様に感謝いたします。本当にありがとうございました。お疲れ様でした。


2010PWCスーパーファイナルinトルコ

エピローグ


 10月2日、11日間に及ぶスーパーファイナルは7本のタスク成立で終了しました。JPAから参加の水沼、増子、扇澤、長嶋、植田、高杉、宮田、大澤、小林9名は大したアクシデントもなく無事終えることが出来ましたことを、ひとえに皆様の応援のおかげだと感謝しております。


 良い成績とは言えないことを、応援していただいた皆様に大変申し訳なく感じております。本当に申し訳ございませんでした。


 うまく飛べなかった理由は、雰囲気にのまれたもの、モチベーションを維持できなかったもの、調整不足、健康管理などそれぞれですが、これからのJPAが世界で戦っていく上で、重要なことばかりです。


 次の世代や次回のスーパーファイナルを目標にしておられるに方のためにしっかりとフィードバックしていきます。来年には今年よりもたくさんの参加選手がJPAから参加して、結果が残せるようにと願っております。