セーフティートレーニングの目的はパラグライダー飛行中に想定される異常飛行状態からの脱出方法を身につけることにあります。もちろん、高さ、環境などに応じてはパラシュートの使用を判断しなければなりません。最近のパラグライダーの進化はすさまじく、通常のフライトで潰れに遭遇するということはあまりありません。ただ、その逆に誤操作から失速するというケースは見受けられます。それはパラグライダーは下降気流に弱い、加速装置がないとった特性を持っているからに他なりません。まずはなぜ失速するかということを知り、失速させない操作を覚えることが必要ですが、同様に失速した場合の対応、そこから発生するカスケードに対応することができれば、フライトの安全マージンは非常に高いものとなります。
まずはそのあたりを理解することから講義はスタートします。100ページに及ぶパワーポイントには、基本となるピッチの三要素を理解するための映像、写真が満載です。また、今年からの新しい試みで、よりマヌーバーを視覚的に理解しやすくするために専用のシミュレーターを製作しました。様々なコラップスなどを体験することができます。製作には何日も要しましたが、大変好評で、作った甲斐がありました。
初日の午前中にそのような様々なメディアを使用し、徹底的にストールに対しての理解を深めていきます。その間、各スタッフは準備を進めます。重要なのは特に船。地元神崎の協力を得て、毎朝、船頭さんがまいまいハウス裏の船着場に来てくれます。マーカーの設置、不測の事態に備えての救助の準備、シミュレーションが毎日行われます。
講義が終了すると、テイクオフへ移動。台風の影響で荒れてしまった登山道は神崎フライト同好会のみなさんがこのトレーニングのために整備をしてくれました。周辺各スクールに提供していただいた車に分乗し、テイクオフに向かいます。エリアの高度差は500mほど。無風時でもBOX上空で350mほどの高さが確保できます。そして、海の上でも上昇するといった通称”神崎マジック”が発生するとトップアウトした状態でBOXへ行くことができます。このときは、1フライトで5〜6回のフルストールの練習が行えます。
参加者のみなさんはテイクオフで最終準備。JPAでは救命胴衣、救命ポーチと2つ装着することで万全のバックアップを図っています。加えて、無線機専用の防水ケース、スタビラインなどに取り付ける指標など、これ以上ない装備を身に着け、パイロットのみなさんは飛び立ちます。
スタッフはランディング、テイクオフ、水上と3点から、パイロットのフライト状態を判断し、マヌーバーを行う場所、パイロットの姿勢、状態を把握し、連絡を取り合います。そしてそのパイロットの状況は地上カメラマンがすべてフィルムに収めます。次々にパイロットは飛んでくるので、カメラマンは休みなしにテープを入れ替えては取り続けます。参加者20名に対して最低でも10名のスタッフがフルに動くことでこのトレーニングは成り立っています。周辺スクールのご協力がなければまさに成り立たないイベントです。ただ、ひとたびスタッフが集まれば、JPA指導要綱のもと意志の疎通はすぐに取れます。
ランディングすると、パイロットは講師からそのフライトのフィードバックを得て、次のフライトへ向かいます。それを日本海に日が沈むまで繰り返し行います。フライトが終了すると、すぐにまいまいハウスの講義室に戻り、ビデオ解析。これで完璧に理解を深めます。解析の立ち返るのはすべて「ピッチの三要素」です。複雑に見えるマヌーバーも、すべてこの三要素で説明ができます。
まいまいハウスには宿泊、風呂、食事すべてを行う環境が整っているため、一日疲れた体は
すぐに休むことができます。
セーフティートレーニング=失速体験、パラシュートを投げるというイメージが強いようですが、それはすでに過去の話です。毎年、グライダーの変化、パイロットの傾向を見極め、そしてテーマを決めて時代に合ったシステムを構築しトレーニングを行います。
そしてパイロットのみなさんに理解をして帰っていただくことを常に第一に思い行っています。これはコノトレーニングに参加される半数以上の方がリピーター、そして定員をはるかに超える応募があることが証明しています。