JPAパラグライダーレスキューレベル2更新研修会および検定研修会 11/29(金) グランボレ(群馬県)
レポート:小林 晋
11月27日金曜日、JPAのレスキューレベル12の実技検定・更新講習会が行われました。場所は群馬県みなかみ町のグランボレパラグライダースクールです。受験者は3名でした。検定を前に、この検定が日本山岳レスキュー協会の承認を得ていることを説明します。受験者には、すべての行動が審査の対象となっていることを伝えます。
早速、実技の内容を伝えます。最初の実技内容は「宙づりからの自己脱出」を行います。この実技を行う目的は、それぞれの道具を正しく使えること。また道具の組み合わせによって、正しい脱出のためのシステム、方法論を実践できることを確かめることです。早速宙づりのロープを張り込むところから、受験者に作業を行ってもらいます。検定者から指示された場所まですばやく木をのぼり支点をつくり、必要なロープをどんどん張っていきます。
ロープが張れれば、すぐに試技を始めます。受験者はあらかじめ携行しているフライトの装備のうち、自己脱出に必要な装備を使用します。しかし、ここでは応用のため、いくつかの装備品を取り除きます。たとえば、スリングがない。あるいはロープジャッキのロープがない。このような状況でも対応できるかが試されます。
受験者はあらかじめ練習をしていたためか、円滑に試技を進めていきます。大きなトラブルもなくこの試技は終了しました。終了と同時にすぐにロープを回収します。木登りに使用した道具や、自分のフライト機材をすぐにまとめ直します。
このような準備や整理が手早く行えることも救助活動にとっては非常に重要です。そのため、準備をしながら、次の行動が指示されます。すぐに2番目の実技内容を言い渡されるのです。
二つ目の実技内容は、現在地から山頂付近まで徒歩で移動し、救助を行うというものです。パラグライダーのレスキューの現場は山中であることが多く、そして場所が明確に特定できないケースなども珍しくありません。この場合は捜索活動から始めなければならず、かなりの距離を動き回りそして、現場に到着するやすぐに実際の救助活動を始めなければならないのです。実技ではそのような状況を想定し、ランディングからテイクオフまでおよそ500メートルの高低差を移動し、その上で救助活動を行います。
ここで、受験者にも差が現れます。道具を最低限度にまとめ、素早く移動できる人と、多くの道具を持ってしまい、遅れて現場へ到着する人。実際の救助のケースではまずたどり着き、そして最低限度高所から落ちないための措置を行う必要が有ります。たしかにケースバイケースではありますが、素早く移動できることのメリットの方が大きいと思えます。
それでも40分から1時間の間で設定した救助現場に到着した受験者は休む間もなく救助活動を始めます。救助の内容は宙づりになってしまっている要救助者をカウンターラッペルの技術で救助します。組まれているセットはカウンターラッペルで救助を行うには、かなり難しい(救助するために登る木から距離がある。)設定のために、事前にどのようなシステムを作って救助するのかが、しっかりと描けていないといけません。とくに、カウンターラッペルを行うための下降支点をどのような高さに作るか。もう一つはどのようにロープを移動して、救助者に近づいていくのかです。この点を誤ってしまうと、まず救助は成功しません。それから必要なのは正確さとスピードです。救助であることを忘れてはいけないのです。
木を登る。下降支点をつくる。安全に下降するためのオートブロック(マッシャー)をセットする。ロープを移動して要救助者に取り付く。ロープジャッキを使用して、グライダーを外す。どれを間違えても成立しません。救助者にはこれらを確実に実行する技術と体力が必要です。
受験者は難易度の高いセットながら、きちんと救助を成功させていました。ここまで朝から一時も休むことなく動き続け、すでに時間は14:30です。本日二つ目の実技課題が終了すると同時に、次の実技課題が言い渡されます。
3つ目の実技課題は応用になります。救助活動はもちろんそれように準備しておいた装備、道具を使用します。しかしながら、それらの道具が直ぐには使用できないケースもあるはずです。それでもその場所にある道具で出来るだけのことを行うことが求められます。そこで3番目の実技は専用の救助用の装備を使用せず行います。状況は次のように設定します。3メートルぐらいの高さでやや宙づりのようにぶら下がっている。道具は通常のフライト装備だけ。つまり自己脱出の道具だけはそこにあることになります。
まずは行動の優先順位と速度です。すぐさまそこにある道具で滑落しないための方法を実践します。チームはロープバッグを木の枝越しに投げることを指示し、ひとまずこれが成功しました。直ぐにこのロープを固定し、救助者のための自己確保とします。これに失敗すれば人間が自己確保をセットするために予備のロープをもって、同時進行で木に上り始めます。救助者はスリングを応用して簡易のハーネスを作成しそれを使用して木に登り始めます。先ほど固定しロープをそのまま下降ようのロープとして、樹上でロープジャッキによってライザーを外し、無事に救助ができました。常用なことは、まず要救助者が落ちないための方法です。その現場にある道具でなんとかする技術もレスキューの技術として非常に重要です。
以上で実技がすべて終わりました。朝7:30に集合してはじまった検定会は16:00までかかりました。その間いっさいの休憩や昼食もなく、ひたすら動き続けましたので、受験者はそうとうにキツい内容だったと思います。また動くと汗をかき、止まると冬の寒さで一気に冷え込む状況のなか、なるべく起こりそうな状況で実技を行いました。今回はすべての試技をやりおえて全員が合格・更新となりました。
しかし、課題はまだまだあります。もっと早く置こうためにライザーやラインをカットする指示を出したときに、それらに必要な道具を携行していなかったことは強く検定員から反省を促されました。そういう甘さがなくなり、エリアを管理するインストラクターとして常に不測の事態に対処できるように日頃の準備が必要であることを再確認して本日の検定会は終了しました。
検定員:小林 晋(グランボレパラグライダースクール)
上野 陸(エアハート)
レベル2更新:加藤 奈保子(グランボレパラグライダースクール)
レベル2合格:岩村 誠(グランボレパラグライダースクール)
林 浩嗣(グランボレパラグライダースクール)