日本パラグライダー協会

会員の皆様からお寄せいただいた「ひやっとしたこと(インシデント)」を分類し、分かりやすくご覧いただけるようにしました。スクール様だけでなく、一般フライヤーの皆様にもぜひご覧頂き ご自身の安全フライトにお役立てください。

ひやっとノートフォーム

高齢者練習生

発生時間 : 10:00~
年齢 : 66
性別 : 男
経験年数 : 0
パイロットレベル : ベーシック
天候 : 晴れ
天候その他 : 初心者高々度飛行可能な状態
風速 : 2m
状況 : サーマル発生
内容 : 穏やかなコンディション、高齢者ベーシック練習生で高々度フライト6本目。離陸前の点検を担当イントラと一緒に実施。弱いサーマルの発生があったため、イントラが離陸タイミングを計る。ハーネスベルトの調整と取り付け、そしてライザーやグリップを適正に持った事を確認し、イントラは振り返ってテイクオフから飛行方向の空域と気流状態を確認し、15~20秒後、再度練習生の方を振り返って、離陸OKの指示を出す。ライズアップ動作良好、頭上安定の後加速体勢に入る時、グライダーの動きやハーネスが体にフィットしていない妙な状態に気づき、ライザーに飛びつきブレークを操作して間一髪のところで離陸中止。点検したところチェストベルトが完全に緩んだ状態になっていた。さらに右側ブレークがライザーを一回りしていて絡んでいた。このことに気づかず飛行を開始していたら、高々度飛行6本目の練習生にとってはとてもシビアな状態になったと思われる。
考えられる要因 : イントラと一緒に点検・装着を実施したが、イントラが飛行方向を向いている間にフライトスーツのポケットに入れた携帯電話が鳴ったため取り出そうとしたが、チェストベルトが邪魔になったためベルトを緩めて取出した。マナーモードにした後、ポケットにしまう際、チャックを閉めるとき右手に持ったブレークグリップを左手に持ち替え、チャックを閉めた。左手に持ったグリップを右手に持ち替えたとき、イントラから離陸OKの指示があった。離陸OKの指示が出たときチェストベルトを緩めたことを忘れた。
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事後の調査で、練習生の行動と原因が判明した。このことに気づかず飛行を開始し、事故になったら原因不明、練習生の操作不良とされると思う。練習生、特に高齢の方の場合は常にイントラが側にいて、全ての面での密着したサポートが必要と深く考えさせられた。
残念なことに、この練習生は2週間後の練習の際、テイクオフでの加速途中で前方へ転倒し上腕骨を骨折する重傷を負ってしまった。高齢者には、徹底した手取り足取りサポートで教習をしなくてはならないと感じている。


2009/11/03

初高高度フライト時の無線トラブル

発生時間 : 11:00~
年齢 : 62
性別 : 男
経験年数 : 0
パイロットレベル : パラメイト
無線機 : ハンディマイク
天候 : 曇り
風速 : 2m
状況 : 穏やか
内容 : 基礎練習が終わり良好な初高々度飛行コンディションに恵まれ、初めての単独での高々度飛行。高度差150m。イントラをテイクオフに、ランディングにアシスタントイントラを配置して飛行開始。良好な状態で離陸、場周経路への進入コースへ向けて飛行するが、イントラの無線誘導と飛行経路に微妙なズレを認める。ベースターンのタイミングがかなり遅れる。ファイナルターンの旋回はとても乱暴、ショートで十分なフレア操作がないままヒップランディング。着陸後、練習生から無線誘導がほとんど聞こえず、パニックとなりとても怖い思いをしたとのこと。
考えられる要因 : このフライトの寸前に、タンデムフライトを連続して3本実施。2本目は、ブレークを渡し飛行経路と操作要領を説明。3本目は、離陸と着陸のフレア操作以外はブレークを持たせて練習。そのお陰で、無線誘導が無いにもかかわらずどうにかかろうじて着陸場所に滑り込んだ。自身の機体を持つまでは、スクール機材とヘッドセット無しのヘルメットで練習させていた。事後、練習生から申告、日常生活でも耳が聞こえずらくなっているようだと。初高々度飛行の緊張と、これまでにない風切り音、進行してきた軽い難聴。担当イントラは机上講習や会話の中では難聴であることに気づかなかった。直ちにヘッドセット付きヘルメットを購入していただき、本人が聞きやすい音量に調整して練習を継続。本人も大喜び。練習生には早い段階でヘッドセットを装着させることが必要。初級者に高々度をヘッドセット無しで飛行させることは絶対に避けなければならない。


2009/06/16

自身でのブレーク長変更

発生時間 : 13:00~
年齢 : 55
性別 : 男
経験年数 : 16
パイロットレベル : エキスパート
年間フライト日数 : ~40日
天候 : 晴れ
風速 : 3m
状況 : 穏やか
内容 : サーマルでの旋回中に翼端がコラップスし、回復操作を行なった時にフルストール状態になり墜落
幸運にも急斜面の比較的柔らかい所に落ちた為、右肩脱臼だけですみエリアに居られたフライヤーのお医者さんに手当てをして頂きました。念の為病院で検査し一晩様子を見る為に、1日入院しました。

考えられる要因 : 新しくグライダーを購入され、フライトした際にブレークコードが長いとの事で自分で短くしたそうです。その事をインストラクターに相談して頂いていれば全く問題なく今回の事故も起こらなかったと考えられます。
長さを短くした事も、10cmと極端に短くしてしまった事と、余ったラインを結び目から上部に向かって巻きつけた為、フルリリースしてもその巻き付けた部分の上部が滑車に当たりより短くしたのと同じ状態になった事が原因です。


2009/06/01

山岳ウェーブ

発生時間 : 12:00~
パイロットレベル : パイロット
天候 : 晴れ
天候その他 : 上空、西から北西のウェーブ
風速 : 9~
状況 : 強いサーマル発生
内容 : パイロットデータ 
[A]20代、P3年、年間フライト日数20日以下 
[B]50台、P10年以上(XC)、年間フライト日数100日以上 

午前中ウェーブの雲が発生し10時頃、エリアクローズ。 
ウェーブの雲も消え、高層雲で日照も抑えられてきたので11時過ぎにオープン。 
上空の状況を注意しながらテイクオフレベルで比較的穏やかにソアリング。 
12時ごろから上昇が強くなり高層雲中にウェーブの雲(レンズ雲)ができ始めパイロット[A]が吸い上げられ一気に3000m近くまで上がる(本人確認の余裕なし)。 何とか翼端を折り雲の無い北へ進路をとる東に流されながら谷の中で高度が落ちるが風の変化にコントロールが間に合わず電柱脇の支線に掛かり宙吊りに。 
近くに写真を撮りにきていた男性にサポートされ自己確保し救援を待つ。 
20分ほどでエリアから2人が到着、パイロットをおろし電柱番号を確認し電力会社に連絡、その後電力会社によりキャノピーを回収する。 
同時刻、パイロット[B]はセンタリング2周目で違和感を感じセンタリングを中止し翼端を折る。 
この状態で上昇しながら東へ流される。 
南北に進路を変えながら東山上空で沈下し始める。 
ランディング可能地点の目星をつけ進入中にローターにより潰され高度をロスし森の中にツリーランとなる。 
携帯電話が通じないため自力で地上に降り近くの民家から連絡、本人を回収、機体は日没が近いため翌日に回収とする。 
考えられる要因 : ・ウェーブの雲が消え、高層雲が張り日射が抑えられたためオープンしたがその後の発生した雲の発見の遅れ。 
・フェーン気味の気圧配置で気温が急激に上昇したための気象変化に対する注意不足。


2009/05/10

障害物との距離感不足

発生時間 : 13:00~
年齢 : 57
性別 : 男
経験年数 : 5
パイロットレベル : パイロット
年間フライト日数 : ~80日
天候 : 晴れ
風速 : 4m
状況 : サーマル発生
内容 : 北西4mの風でテイクオフ。リッジソアリング中(少しサーマル混じり)サーマルを感じ左旋回180度近くまで回った所で山頂にあるアンテナに近すぎると気づき、左ブレークを更に引いた為、翼端から失速しアンテナ施設のフェンスから10m程度の林の中にツリーランディング。木の高さは4m程度で自力にて回収。怪我はなし。

ビジターフライト(但し、月に1~2度来てフライトしている)
考えられる要因 : 山頂テイクオフ付近アンテナが並び弱い風のリッジではアンテナの近くを飛ぶ傾向にはあったが、アンテナとの距離感と自分の360度旋回の大きさと沈下を考えた時、安全マージンを取っていなかったため、サーマルの上昇の悪さと旋回の流れによってアンテナに近づき過ぎ、慌てて左のブレークを引きすぎたために失速に入ってしまった。

・アンテナとの安全距離の認識が足りない。
・自分のグライダーコントロール技術の過信。

今後は
・安全マージンを多めに取るフライトを心がける。
・ビジターフライヤーはいつもエリア情報の外側にいる為、ビジターを含めたフライト前のミーティングを開催していく。


2009/05/03