レスキューレベル3による救助

 レスキューレベル3の搬送技術を使用しなければならない事例が発生しましたので、共有したいと思います。

 先日、レスキューレベル3による救助が行われました。ツリーランした方は、自分で木から降りたものの、その後斜面を滑落。救助班はSKEDストレッチャーに要救助者をパッキングし引き上げ搬送後、ヘリコプターランディングできるポイントを作り、救助ヘリに引き継ぐことに成功しました。

レスキュー隊には パラグライダー関係者に日本山岳レスキュー協会による資格認定者がいること、および日本パラグライダー協会の安全に対する取り組みに対して敬意を払っていただきました。

 今回の事故は、近隣に救助に行くことができる人はJPA関係者以外には居ませんでした。パラグライダーでフライトする以上、レスキューしなければならない事態は、いつ起こるかわからないものです。各スクールには定期的なトレーニングを受けたレスキューレベル所持者がいることは必須です。

 今回の救助は、ルートファンディング、レスキューをやり遂げる体力、レベル3相当の搬送技術がなければ成しえなかったものです。救助班のみなさま、お疲れ様でした。

*写真はJPAでのトレーニングの模様です。



(救助レポート)
11:20
1機のハンググライダーがレスキューパラシュートを投げツリーランディングとの情報。

12:00
関係者から救助要請。この時点では、落葉樹に引っかかっている。ケガなしとの情報。

12:15
上野(レスキューレベル3)をリーダーに救助班を設置。F氏(現場を上空から確認、現場付近ハイク経験あり)。K氏(レスキューレベル2、医師)。O氏(レスキュー経験豊富)。以上の4名とハング関係者4名で出発。

12:45
登山口到着。登山開始。現場までの道のりは、斜面の角度がきつく、高圧線のメンテナンスのため木を切った丸太がそのままのため歩行が大変きつい。

14:00 
本人が自己脱出を試みた模様。現場から100mほど下の斜面にうずくまっていた。肩、肋骨を負傷している模様。さらに、肋骨が肺に損傷を与えている可能性がありそう。この時点で、要救助者は自力での歩行が不可能。本部に無線で、SKED(プラスチック製のストレッチャー)、救急車の要請。ヘリ救助の可能性も伝えた。

15:00
要救助者が衰弱し始め、ヘリ救助要請。時間が限られているため、あらゆる可能性を考え、引き上げシステムを構築し、ヘリが近づけそうな場所まで搬送することに決定。引き上げは100mほど。

15:30
SKED到着。要救助者のパッキング。引き上げ開始。
引き上げ完了後、ヘリへの受け渡しがスムースに行くよう、周辺の雑木を伐採しスペースを確保した。

16:00 ヘリ到着。

16:30  要救助者ヘリ搬送。

18:15 レスキュー隊下山。

(救助のポイント)
・持ち運びが容易なSKED(プラスチック製のストレッチャー)がエリアに常備してあったこと
・レベル3相当の引き上げシステムを構築できたこと

(レスキューレベルの重要性を再確認)
レスキューレベル1 ツリーランディングからの自己脱出。
基本は救助を待つです。しかし日没までに救助隊が到着する見込みがない、凍死などのおそれがある場合は、自己脱出を決断しなければならないかもしれません。
山が深い場所でフライトする人は、必要な道具を持ち、自己脱出の技術を確実なものにする必要があるでしょう。

レスキューレベル2 木を登っての救助。
エリアにて誰かが持っている必要があります。持っている人が多ければ、エリアでの安全管理は高まります。

レスキューレベル3 搬送
今回初めて、レベル3の技術が必要となる事態に遭遇し、ヘリレスキュー隊到着までは、こちらで搬送する必要がありました。
レベル3の技術が必要な場面イコール切迫した状況です。
ケガ人がいる現場ではかなり緊迫しプレッシャーがかかります。後で考えると多くの改善点があります。二次災害を防ぐ意味でも、もっとトレーニングする必要があると感じました。

 頼みの綱であるレスキュー隊もすぐに来てくれるとは限りません。他に重大な事故が起こっている場合。消防隊が現場を確認しなければレスキュー隊が出動しないなどの事が考えられます。
日没までのタイムリミットがあり、レスキュー隊を待っている時間的余裕がない。事態がより悪化して行く場面では、自分たちが動かなければ最悪の事態を招くおそれがあります。今回も後手に回っていたら、日没になりヘリへの搬送がアウトだったかもしれません。限られた時間の中で、スムーズにレスキュー隊に引き継ぐためにはどのような行動が必要かを問い続けなければならないと感じました。

 救助班に参加いただいた皆様には、この場を借りて深く感謝を申し上げます。レスキュー隊、関係者の皆様にも感謝を申し上げます。ありがとうございました。

JPA安全普及事業部
上野 陸

*写真はJPAでのトレーニングの模様です。