日本パラグライダー協会

会員の皆様からお寄せいただいた「ひやっとしたこと(インシデント)」を分類し、分かりやすくご覧いただけるようにしました。スクール様だけでなく、一般フライヤーの皆様にもぜひご覧頂き ご自身の安全フライトにお役立てください。

ひやっとノートフォーム

山岳ウェーブ

発生時間 : 12:00~
パイロットレベル : パイロット
天候 : 晴れ
天候その他 : 上空、西から北西のウェーブ
風速 : 9~
状況 : 強いサーマル発生
内容 : パイロットデータ 
[A]20代、P3年、年間フライト日数20日以下 
[B]50台、P10年以上(XC)、年間フライト日数100日以上 

午前中ウェーブの雲が発生し10時頃、エリアクローズ。 
ウェーブの雲も消え、高層雲で日照も抑えられてきたので11時過ぎにオープン。 
上空の状況を注意しながらテイクオフレベルで比較的穏やかにソアリング。 
12時ごろから上昇が強くなり高層雲中にウェーブの雲(レンズ雲)ができ始めパイロット[A]が吸い上げられ一気に3000m近くまで上がる(本人確認の余裕なし)。 何とか翼端を折り雲の無い北へ進路をとる東に流されながら谷の中で高度が落ちるが風の変化にコントロールが間に合わず電柱脇の支線に掛かり宙吊りに。 
近くに写真を撮りにきていた男性にサポートされ自己確保し救援を待つ。 
20分ほどでエリアから2人が到着、パイロットをおろし電柱番号を確認し電力会社に連絡、その後電力会社によりキャノピーを回収する。 
同時刻、パイロット[B]はセンタリング2周目で違和感を感じセンタリングを中止し翼端を折る。 
この状態で上昇しながら東へ流される。 
南北に進路を変えながら東山上空で沈下し始める。 
ランディング可能地点の目星をつけ進入中にローターにより潰され高度をロスし森の中にツリーランとなる。 
携帯電話が通じないため自力で地上に降り近くの民家から連絡、本人を回収、機体は日没が近いため翌日に回収とする。 
考えられる要因 : ・ウェーブの雲が消え、高層雲が張り日射が抑えられたためオープンしたがその後の発生した雲の発見の遅れ。 
・フェーン気味の気圧配置で気温が急激に上昇したための気象変化に対する注意不足。


2009/05/10

障害物との距離感不足

発生時間 : 13:00~
年齢 : 57
性別 : 男
経験年数 : 5
パイロットレベル : パイロット
年間フライト日数 : ~80日
天候 : 晴れ
風速 : 4m
状況 : サーマル発生
内容 : 北西4mの風でテイクオフ。リッジソアリング中(少しサーマル混じり)サーマルを感じ左旋回180度近くまで回った所で山頂にあるアンテナに近すぎると気づき、左ブレークを更に引いた為、翼端から失速しアンテナ施設のフェンスから10m程度の林の中にツリーランディング。木の高さは4m程度で自力にて回収。怪我はなし。

ビジターフライト(但し、月に1~2度来てフライトしている)
考えられる要因 : 山頂テイクオフ付近アンテナが並び弱い風のリッジではアンテナの近くを飛ぶ傾向にはあったが、アンテナとの距離感と自分の360度旋回の大きさと沈下を考えた時、安全マージンを取っていなかったため、サーマルの上昇の悪さと旋回の流れによってアンテナに近づき過ぎ、慌てて左のブレークを引きすぎたために失速に入ってしまった。

・アンテナとの安全距離の認識が足りない。
・自分のグライダーコントロール技術の過信。

今後は
・安全マージンを多めに取るフライトを心がける。
・ビジターフライヤーはいつもエリア情報の外側にいる為、ビジターを含めたフライト前のミーティングを開催していく。


2009/05/03

ランディング直前の潰れ

発生時間 : 13:00~
年齢 : 46
性別 : 男
経験年数 : 17
パイロットレベル : パイロット
年間フライト日数 : ~20日
天候 : 快晴
風速 : 3m
状況 : サーマル発生
内容 : サーマルコンディションだった為、ランディングの風の吹き方に強弱があり、斜面に沿って十分低くしてから平地に出るように声を掛けていたが、アプローチの際に(ベースターン)斜面から離れて平地に膨らみ過ぎると、フワッと持ち上げられ、その直後前縁が潰れ、降下しながら着地となった。
怪我は無しだったものの、ちょっとタイミングがズレていたら、怪我の可能性もあり得る。

考えられる要因 : ランディング全体が高台のような立地の為、強いブローが吹いている条件では、外からの風が巻いて吹き込んでいる所があり、あまりにひどい時にはストップを掛けますが、この時は斜面に沿っていれば十分降りられる状況と判断した。この判断にも甘さが考えられるが、斜面から離れてしまった事、そして最近はそんなに頻繁に飛んでいなかったパイロットなので、もう少し早めの声掛けと飛び出すタイミングをずらす提案をしても良かった。


2009/04/29

ランディングアプローチ中にストール

: 11:00
: 男
: エキスパート
: 快晴
: 1m
: サーマル発生
: サーマルソアリングフライト後に、ランディングする際突風にあおられストールからスピン、直ぐレスキューを投げ出し開くと同時にランディング場近くの水田に着地しました。幸いパイロットは怪我無く道具もダメージ無しでした。

(この日のコンディションは、・・朝からサーマルが活発でランディング場は風向きがころころ変化していた。ランディングの仲間からは風情報が伝えられていた。日中サーマルが活発でTO・LDともブローが強く入り出した為15時迄風待ちし、フライトしていただきました。)

(このフライトで本人の話・・・サーマルが強くなりコンディションが荒れてきたので着地をしようとしたがランディング近くで上がったり下がったりきつく、なかなか降りなく、別の場所へのランディングも考えましたが仲間が居るメインランディング場を選び高度処理をしていた時に風に煽られた。高さが無かったので直ぐレスキューを考え投げ出した。)


: 突風に煽られ突然急激なノーズアップした際に、(ランディングアプローチ中でもあり少しブレークコードを引いていた)無意識にブレークを引いてしまったのかも知れない??(本人の話)。そのためにノーズアップからの失速に入り、フロントダイブとコラップス、90度スピン、レスキュー開傘となってしまった。


2009/03/21

テイクオフ取りやめできずツリーラン

: 11:00
: 男
: ベーシック
: 曇り
: 1m
: 穏やか
: 最初にインストラクターがフライトし、その後練習生からフライトを始めた。尚、このテイクオフはディレクター以外のインストラクターがビデオで撮影している。
フロントテイクオフのライズアップの時、肘が後ろに伸びきっているのと、風が弱かったので、なかなか上がってこなかった。斜度がきつくなり始めるころにグライダーが頭上へ上がる。この時にラインの絡みに気づき「はい、一回止めるよ!」と言いながらライザーをつかもうと左手を伸ばすが、つかめず止められなかった。グライダーは傾きなく上がり、スピードがついていて滑空状態に入る。
本人は、ストップの指示にテイクオフを取りやめるためブレークをするが、フルブレークでは止まれないと思ったので、とっさに片方(左手)のブレークを引き下げた(後の本人からの状況説明)。
グライダーのスピードを止めきれず、傾斜もありパイロットも止まれずそのまま滑空し、ランチャー台をこえ、ゆっくり左へ旋回しながらテイクオフ左下の木へ横からツリーランディングする。木に正面からぶつかるが、枝のかかりが浅かった為ずり落ちて、地面にエアバック部分から着地する。枝がしなって落下がゆっくりだったこと、落ちた場所が斜面の枯れ枝のところだったのでケガはしなかったが、グライダーのエアインテーク付近が3箇所破損した。

: (1)パイロット・ディレクターのプレフライトチェックが不十分だった。

(2)ディレクターがラインの絡みに気づくのが遅かった。

(3)メガホンと無線機をそれぞれの手で持っており、とっさの時にメガホンを離すことができなかった(ディレクターの「必ず止める」という意識不足)。

(4)後にビデオで確認すると、パイロットはディレクターの左から右に通過して行くのに、とっさの時にもかかわらず右手のメガホンで「やめるよ!」と声を出していた為メガホンを離せず、左手でグライダーを追いかけるようにライザーをつかもうとしていた(ディレクターの判断力不足)。

(5)今回の状況でのデッドラインをパイロットに示していなかった。又、パイロットもデッドラインについて理解不足だった。

(6)講習バーンで、無風時にライズアップをした場合のデッドラインを理解させていない。又、無風時の西テイクオフでの取りやめの方法も理解させていない。


2009/03/09