高嶺カップ2016 大会レポート

レポート 鈴村 恵司


一年ぐらいのスパンで見れば「9月が飛べなかった分、10月中旬から良く飛べるようになった」と総括される週末のひとつに過ぎなかったことになるのかもしれない。しかし2016年の今年、盆明け以降に連発した台風通過や長く停滞した前線に悩まされたパラグライダー愛好家にとって10月15、16日の高嶺カップに示された天気予報はとてもありがたいものだった。絶好のコンディションの予感に早朝の選手受付では笑顔が溢れていた。
そして競技の結果は、N2、PCLともに2タスク成立。心穏やかに週末を迎えた愛好家達は、さらに穏やかな心地のまま帰路の途につくことが出来たのだった。


【1日目】
床屋へ行きたての刈上げ頭であったなら木曜日あたりに両耳の上側の皮が日焼けで向けてきそうな正に雲一つない晴天、風予報の方向も強さも絶好のコンディション。これをタスクにどう活かすかは意見が分かれる。すさまじいロングタスクを組む?行ったことない空域まで選手を飛ばす?考え方は人それぞれだ。競技委員長(私です。)が、タスクコミッティに提示したのはそのどちらでもない「のんびりと準備ができる」かつ「ゴール確率の高い」タスク。タスク発表から余裕を持ってウインドゥオープン(W.O.)時刻を迎えもらう。さらにゴールレースのデパーチャオープン(Dept.O.)時刻の間を長くとり、エリアのコンディションを探る時間を提供してタスクへの戦略を練る時間を提供した。これは、コンディションの割にはタスク距離が短いことで競技フライト時間が短くなるのが残念とする選手にフライト時間を提供する意味もあった。



高嶺山フライトエリアは、南西方向から北東方向に走る国道301号線(飯田街道)の西側にTOを東側にLDを持つ。通常のフライトではTO側で飛び、飽きたらLD側の山を使って飛ぶということが行われる。タスクも高嶺側とLD側にそれぞれターンポイント(T.P.)で三角パイロンを形成するように組まれた。PCLで最短距離が19.3km、N2で最短距離が23.6km。タスクセッターの狙いは両ゴール率80%以上、もちろん両リーグともにである。




リーグ   ウィンドウオープン時刻  デパーチャオープン時刻
 PCL      11時00分         12時15分
 N2       11時30分         12時30分

計算違いは、W.O.時刻とDept.O.時刻の間が1時間15分の余裕のある時刻設定にPCL選手達が出渋ったこと。先行するウインドダミーは難なく上昇。この後、コンディションが落ちるのは考え難い。それでも多くのPCLの選手はテイクオフしてゆかない。「スタートまでに1時間も飛んだら疲れちゃう」というコメントがあったとか。人それぞれとは言え、ちょっとビックリするコメントだ。
それでもさすがにN2のW.O.時刻が近づくと押し出されるように、11時30分過ぎにはPCL選手全員がTO。そして誰もこぼれることなく全員が空中でDept.O.時刻を迎える。Dept.O.時刻にほぼ全員が高度を稼いでおり、一斉スタートで全機がスタートT.P.に向かう。高嶺TO側に3周設定された三角パイロンの約1周半を、ほとんどのPCL選手のグライダーが横長棒状で通過する様子は、これはナショナルリーグなのかとさえ思える光景だった。

▼亥の一番のT.O. PCL 小田選手とタスクトップの北島選手


続いて N2 中島選手と星田選手


▼選手達のT.O.はこちら
N2のDept.O.時刻は15分後。こちらはトランジット距離が長い分、対岸の平谷ゴルフ場T.P.をクリアして高嶺に戻ると高度を失っており、上げ直しで一周目から差が出来きはじめる。その繰り返しで徐々に差がついていった。


TASK1結果のN2、PCLトップ6は以下。N2オープン参加の扇澤選手はこの三名より早くゴールしている。レース内のトップの競い合いを示すLO得点は扇澤選手を含めても関根選手がトップ。先行しつつもどこかでスタックした様子。L/D側のリフト発生が周期的であったことが原因か。PCLは前回の白鷹大会の優勝者 北島選手がトップ。2タスク連続でタスクトップを達成。こちらは1000点満点で文句なし。




オープン参加を除けばN2は30名中、21名ゴール。PCLは17名中、12名ゴール。ゴール確率はN2が 70%、PCLで71%。狙いの80%に届かなかったものの高いゴール率となった。さらにゴール確率を上げるタスク設定について、まだまだ研究する必要がある。もちろん競技性を失わずにだ。
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N2
PCL

【ウェルカムパーティ】
もちろん結果に完全に満足できるのは、タスクトップの二人だけだろう。それでもゴール者の多いタスク成立後のパーティは活気に溢れる。鍋パーティ。さらに大会実行委員長のJMB中部とんびいず片桐校長てづからの鳥の燻製も振る舞われた。さらにスタッフによる宴会芸(?)の披露。にぎやかで楽しい一夜となった。
▼パーティの様子はこちら

【二日目】
この日の結果を散文的に表現するなら「朝、飛べないコンディションを昼まで待つことでタスクが成立した。」となるだけだ。しかし、先の見えない長いウェイティングの我慢の後、フライト出来ただけでなく、距離は短いとはいえタスク成立の結果を得たことは、ご褒美を与えられたような感覚だ。選手達の熱意が良い結果をもたらしたなんて、非科学的なステレオタイプの言葉も使ってみたくなる。そんな一日となった。
空域はともかく、高嶺側は南西向きの地形と言える。これに対して9時30分のゼネラルブリーフィング時点では、ほぼ真東の強めの風。多くの選手が「今日はダメかな」と思ったのではないか。


日射が南側に回り込めばサーマル活動が活発になり本流がブロックされる?PM2時過ぎに予報されている曇り空がやはり本流の強さを弱める? “良くなる”可能性を探しつつエキスパートパイロットのウインドダミーで状況を確認しつつ待つしかないのが現実だった。
なかなかタスク設定しづらいコンディション。それでも「のんびりと準備ができる」ことは守りたい。競技ができる最終時刻を15:30に設定し、逆算で競技進行の流れを想定。13時にPCLからウィンドウオープンでゴール者が出せるフライト距離(N2で16.2km、PCLで9.93km)を持つタスクをそれぞれのリーグに設定。もちろん強い南東風でもリスクの少ない空域を使ってのタスクだ。あとは“良くなる”のを待つだけとした。




11時過ぎごろ、遥か彼方にあった雲のある空域がだんだん近づいてくるのがわかった。12時過ぎるとわずかながら風が南方向振れてきた。ダミーがLD側で高度を稼ぎ始めた。まだ東南東の風は強めだ。少しリスクはあるもの実行委員長、タスクコミッティと協議してPCLからのウィンドウオープンを決定、両リーグでの競技が開始された。
PCLから小田選手(W.O.待ち)、30分後のW.O.でN2の星田選手


▼二日目の選手のT.O.はこちら
13:00のW.O.時刻から13:30のDept.O.時刻までのPCLの選手の空中待機は、しっかり上げきる選手もいれば、さほど強くないリフトに大きな旋回で臨んで強い風に流され中々高度を稼げない選手もいた。今にも高嶺特有のバレーウインドに捕まるのではないかと少しナーバスになって思わずいろいろ指示してしまった。競技のスタートを決めた以上、選手を信じるべきでした。反省しています。
PCLのDept.O.時刻は13:30、これはN2のW.O.時刻でもある。N2選手はTOしてすぐに全ての選手が高度を稼ぐことが出来るコンディションとなっていた。ゆえにPCL選手のトップの西川選手は、約10kmのタスクを28分で駆け抜けている。N2トップの星田選手のフライト時間は33分。これはオープン参加の扇澤選手よりも短い。N2ゴール者は一日目と同様の21名、PCLは少し減って9名だった。


以下3枚の空中写真(photo by 扇澤選手)





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N2
PCL

◆表彰式
2タスク合わせた成績でN2は星田選手が総合優勝、女子クラスは小森選手が優勝。星田選手は、オープン参加者を含めてもトップ、さらにシニアクラスを合わせて高嶺大会の3冠王となった、PCLは2タスクともに2位の小田選手が優勝、女子クラスは石川選手が優勝した。
表彰者には、リンゴづくしの賞品が配られた。高嶺大会の賞品の恒例となりつつある。




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N2
PCL

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ウェルカムパーティで発表されたが、来年はナショナルリーグとチャレンジリーグの併催。少し趣きを変えることとなる高嶺カップ。時期は同じ10月第3週で10/14(土)、15(日)。ここ数年の好コンディションが続くなら、来年のPNLには隣の隣ぐらいの町までの、クロカンゴールも準備したいのが主催者の意向だ。
それでは皆様、来年も高嶺カップでお会いしましょう。