| 大会レポート
四国三郎ジャパンカップ2018
レポート:競技委員長・扇澤 郁
毎年恒例となっているJPAナショナルリーグ最終戦・四国三郎ジャパンカップは、紅葉が深まる四国三郎流域の絶景の中、好天に恵まれ開催されました。
ここまで天候不順に悩まされた今シーズンのナショナルリーグでしたが、来シーズンのシード権を狙う選手たちが実力を発揮するためのファイナルレースの舞台は、地元関係者、近隣パラグライダースクール等、大会関係者全員の熱意で整い、熱い戦いが始まりました。
1日目
大会初日、寒冷前線通過後の四国三郎流域には北風が流れ込む予報となり、水の丸テイクオフから組まれたタスクは、吉野川の右岸にいても左岸にいてもコンプリート出来るフレキシブルなコース取りができる54Km。レース序盤の見どころは、北風の具合により、サーマルのラインが対岸なのか、川の真ん中なのか、手前なのかを読み、スタートをどこのラインで切るかでした。
レース序盤スタート時刻12:30頃、対岸ではリーサイドサーマルに苦戦し、高度を稼げずスタートを切れない選手が多い中、川の真ん中で高度を保ちスタートした選手が少しずつ距離を伸ばしていきます。そのなか、川を渡らず、手前のリッジで距離を伸ばしていたNo.8の吉川選手が順調に距離を伸ばしT2へリターンしたころで、競技委員長からは風が強くなりつつあるとの判断でタスクストップのコール。
タスク1はTask Validity:0.05でポイントの低いレースとなってしまいましたが、北風ベース時の吉野川流域の風の流れとサーマル活動の関係の典型的なコンディションを体感でき、明日につながる良いチャレンジだったと思います。
2日目
大会2日目。決戦の時の朝サーマルトップは1400m~1500mで終日晴れ予報ですが、コミッティーは渋めのコンディションを観天望気し、タスクコミッティーの稲見選手(リーグ戦総合2位)からは、同じくタスクコミッティーの高杉選手(リーグ戦総合1位)を最終タスクで抜き去るためのタスクが提案され、双方合意の上発表されました。
タスクは、四国三郎エリアを東西に3往復する50Km弱ですが、安全圏の山コースだと実走距離がかなり長くなることから、沖コースを狙う一発逆転組と、上位をキープしたい安全圏組に分かれることが予想される興味深いものです。
スタート後レース序盤は、沖を通る選手と山を通る選手に分かれはしたものの、TP2をクリアーしたのちは三頭山のハウスサーマルで上げなおすことになる、集団からなかなか抜け出せない渋めのコンディションが続きました。
レースが動いたのはTP3リターンの時で、真っ先にサーマルトップに到達した只野選手が、ワールドクラスの読みで一気に先行をする展開に。高杉選手を含むトップ集団が只野を追いかける中、一人逆転を狙える位置にいる稲見選手は勝負をかけ大奥の竜王コースを選択。
トップでTP4を折り返した只野選手は高度が低く、平野部で何とか渋いサーマルを育て始める。追いかけたトップ集団の中でも高度を保てた中村選手が、そのサーマルの上にかぶさり高度を稼ぎ始める。ここで、トップに躍り出たのが高度を保ちながらテイクオフレベルの山へ戻った竹尾選手。一気に高度を獲得し水の丸TO8Kmのシリンダーへ向かい始めます。一人旅で竜王コースを選択した稲見選手は大正解で高度ロスなくTP4をリターンし、モトクロス場上空まで戻り戦況を観察しながら余裕のセンタリング開始。
三頭山テイクオフで観戦していた大会スタッフは全体を監視しながらも、この面白い戦況を楽しませていただきました。
トップ2選手の心境を解析すると・・・
只野選手と一緒に低くなってしまった高杉選手は、稲見選手の断然リードと判断。高杉選手は稲見選手が900点代後半の良い位置でゴールした場合、最終タスク前の4本成立の得点計上では断然有利の高杉選手のアドバンテージがたったの8点しかない状況が読めていた。高杉選手は只野選手とは違い遅いゴールは必要なく稲見選手と同等なタイムでゴールラインを切る必要があり、当然のごとく只野と離れギャンブルに出たことで戦線離脱。
稲見選手は、集団から抜け出してきた選手の中に高杉選手の機影がないことを確信し、900点台後半でゴールすることで、リーグ戦トップは確定との判断。集団の中から抜け出してきた中村選手と一緒に余裕のファイナルグライドへ入るつもりで高度を稼ぎまくる作戦。この時、四国三郎の郷上空でシリンダーをカットし山に戻って上げなおしている竹尾選手を確認したが、有利な山コースでゴールを目指しても950点後半は取れるだろうと判断。
・・・等など(扇澤の勝手な推測です)
レース終盤は、コンディションが好転し沖周りの竹尾選手が余裕の単独ゴール。逆に、確実な山周りでゴールを目指した稲見選手を含むセカンド集団は若干スタックすることになり、トップから大きく後れを取った形でゴール。小森選手は集団と一緒にゴールし、女子では断トツのゴール。
その後も、4時間のフライトでESSをカットした吉川選手まで16名のパイロットがゴールを決め、選手全員が笑顔で帰着申告を目指した最終タスクにふさわしい終演となりました。
大会結果
本大会総合順位は竹尾選手が堂々の優勝。女子優勝は小森選手でした。
チーム戦は1本目の順位が加味され珍しく瀬戸内少年飛行団、チームX2、チームドラゴン、チームバーズ!の4チームが優勝。皆様、おめでとうございました。
年間表彰
興味深かったリーグ戦の順位は、975点でトップに並べた稲見選手が919点と振るわず、高杉選手のリーグトップで確定。2位に稲見選手。そして、3位はこの大会でもポイントをゲットした中村選手が初のポディウムを決めました。おめでとうございます。
女子は、小森選手が星田選手を逆転し優勝。2位に星田選手。そして、3位にこちらも初ポディウムの片貝選手が入りました。おめでとうございます。
チーム戦は全9タスクでポイントを重ねた三浦選手代表のConta会が優勝に輝きました。
2位は星田選手率いるチームドラゴン。3位は、隅選手がリーダーのチームZ2となりました。皆様、ナショナルリーグ戦にご参加いただきありがとうございました。
今回競技委員長をやらせていただきましたが、競技会は
・よいエリアで
・よい風が吹き
・よいパイロットが集う
ことで素晴らしいレースができるのだと確信できました。もちろん、出張エリアでの大会開催は準備が大切で、大会運営を陰で支えていたスタッフの皆様、素晴らしいエリアを管理されている皆様に感謝申し上げます。
そして、安全に楽しく笑顔で帰着申告していただける参加選手の皆様にも、この場を借りで心から感謝申し上げます。