| 大会レポート
2019 COOスプリングカップ
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レポート:競技事業部・藤野 光一
2019年シーズン第1戦の「COOクロカンカップ」では、天候に恵まれずタスクは成立しなかったのですが、その2週間後に再びCOOで開催されるスプリングカップは、事前の気象予報もまずまずの晴れベースがぶれることなく固定され、久しぶりに「BigDayになるかもしれない」と言う、何とも言えない予感が選手たちにあったのではないか?と思います。
その予想は期待を裏切らない形で現実のものとなりました。なかなかマッチしない大会でのコンディションですが、今回は本当にタイミングが合った素晴らしい大会となったのです。
4月13日(大会1日目)
天気予報は文句のつけようがない晴れ予報。移動性高気圧が張り出し、キッチリと関東平野を、本州を覆う位置取りで、風も弱く絶好の大会日和、クロカン日和であることを感じさせるものでした。
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COOの大会では、毎回朝食サービスが行われます。選手としては非常にありがたいサービスで、主催者と早朝から準備に勤しむスタッフのみなさまには本当に感謝です。朝食を頬張る選手たちは一様に笑顔で、これから始まる大会にワクワクしている様子が見て取れました。
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朝食サービス
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クロカンタスク
選手は朝食を済ませた後で受付、そしてテイクオフへ移動。一連の流れはとてもスムーズに行われ、テイクオフの優先順位のおかげもあってか、送迎車争奪戦のような殺気立ったムードは微塵もなく、終始和やかなムードで進んで行きました。
テイクオフでは9時30分から開会式が行われ、その後競技委員長によるジェネラルブリーフィングへと移行します。今回の大会はナショナルリーグ第2戦とN2リーグのシーズン初戦。特にN2リーグは、今年からルール変更があったことで300番台選手がその実力を競うリーグになりました。昨年チャレンジリーグを賑わせたツワモノたちがステップアップして参戦しているので、今シーズン注目のリーグと言えるでしょう。
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ブリーフィング
両リーグのタスクコミッティーが招集され、本日のタスクを協議します。そして、選手に提示されたタスクは予想どおりのクロカンタスク。そして、ここ数年は設定していなかった北上タスクとなりました。
ナショナルリーグは横岡ゴールの82.2Km。N2リーグも予想されるBigコンディションを生かした黒羽ゴールの67.3Km。
クロカン慣れしていないN2リーグの選手をリードすることも考え、スタートするTPもスタート時間もシリンダーサイズもすべてナショナルリーグと同じ設定。違うのはゴールだけとなりました。
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タスクコミッティー
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タスクボード
10時30分にWindow Open。スタートは12時30分なので2時間の余裕があります。ナショナルリーグ55名、N2リーグ23名、合計78名の選手も十分スタートに間に合う予定でしたが、結果的にはスタート時間になってもテイクオフできずにいた選手が見られました。2時間の空中待機は長いかもしれませんが、条件は常に変化して行きます。テイクオフも風も一定ではなく、特にCOOのような平野に位置するエリアでは、対流によって風向きが簡単に変わります。ナショナルリーグのトップ選手たちは、淡々と準備をして早々にテイクオフして行きます。彼らにとってもスタートまでの2時間は長いはず。ですが、やはり空中に身を置くことが何よりも優先されるのです。
今回、早く出るのを嫌って後半に出る選択をした選手たちにとっては、高い授業料になってしまったかもしれません。空中に居なければレースに参加することはできません。その点も踏まえ、自分の行動を決める必要があるのではないでしょうか?
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気温差の大きかったこの日のサーマルは力強く、そして時に暴力的な激しいものでした。ひとたび上昇の良いサーマルにヒットすると、まさに高速エレベーターのごとく2000mオーバーの世界へ連れて行ってくれます。しかし、同時にそこは寒さとの戦いの場でもありました。気を抜く暇もないほどの荒れた空域で手の冷たさに耐えながら、選手たちは良い位置取りをとスタートに備えるのです。
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ナショナルリーグTASK1
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N2リーグTASK1
ナショナルリーグの攻防
スタート時刻の12時30分きっかりに、B05のSSS2000mをカットし上空2000m以上に位置する大集団はゆっくりと北を目指して動き始めます。通常の場合、まずは高峰を目指して上げ直すレグとなる訳ですが、この日は十分な高さがあるため先頭集団は高峰をパスして茂木方面へダイレクトに駒を進めていきます。
この日は、東側を通るルートで集団を形成する大きなトップグループと、西側を直線的に北上した小集団の2つのトップグループがレースをリードしました。低く先行する37番只野選手や、高さを維持しながら着実に進む202番青木選手らのグループ。そしてそれを追う2nd以降のグループです。先行するグループはコンディションの整う前に進むことが多く、慎重にならざるを得ない場面も多々見られます。コースを右に左に変えながら、最も効率の良いルートを探りながら進みます。
烏山を越え黒羽を視界にとらえる頃には、ばらけていた集団も徐々にコースが集約されて行きます。そして、トップを狙える位置にいるのは1番高杉選手、2番稲見選手、36番只野選手、202番青木選手の4名。ここから先は誰が先に仕掛けてゴールシリンダーをカットするのか?にかかっています。ファイナルグライド勝負を制したのは202番青木選手。2時間24分12秒でフィニッシュ。遅れること13秒で1番高杉選手、さらにその25秒後には3番中村選手がフィニッシュでした。
その後も続々と選手がゴールに現れ、リフライトで粘りのゴールを決めた39番三浦選手がゴールした16時43分までに、実に44名の選手がゴールメイクする好レースとなりました。
N2リーグの攻防
N2リーグの方も様々なドラマを生みながらレースが進められたようです。ナショナルリーグ同様、スタート前には2000mを超える位置で待機し、一斉に北上を開始します。中にはB05の1Kmシリンダーに入るために大回りしてしまった選手もいたようです。
N2リーグの選手は、高さをキープしながら慎重に大事に進んでいきます。レースは313番谷藤選手、328番松本選手が先頭を走ってリードします。後続は集団を維持しながら比較的スローペースでの展開となりますが、先頭の2人も烏山付近でペースダウンし後続集団に飲み込まれます。そしてトップは328番松本選手と330番工藤選手に変わり、さらに318番飯塚選手も加わるなどめまぐるしく変化して行きます。
最終的に328番松本選手が集団を引き離して2時間11分04秒でトップゴールを決めました。終始トップを守った攻めの飛びが勝利を引き込んだのかもしれません。続いてゴールに飛び込んだのは昨年のチャレンジリーグ女子チャンピオンの317番谷藤幸子選手で2時間34分38秒でした。3番手は324番西川選手で2時間38分36秒。その後もゴール者は続き、16時3分にゴールを決めた304番北島選手まで10名の選手がゴールを決めました。
昨年来、なかなかレースが成立しなかったN2リーグですが、2019年の第1戦は幸先の良いスタートを切ったのではないでしょうか?
ナショナルリーグもN2リーグも大勢の選手がゴールし、ゴールにはたくさんの笑顔がありました。久しぶりのクロカンタスクで、最高の条件で、自分の力を出し切って掴んだゴールは本当に素晴らしいフライトだったと思います!!おめでとうございます。
ゴールからエリアへ帰るバスの中は大いに盛り上がったのでした。
エリアへ戻れば選手にはハンバーガーが振る舞われました。とても美味しかったですね。ありがとうございました。
4月14日(大会2日目)
大会2日目は曇りがちな、それでも予想よりも日差しが多く暖かな朝を迎えました。初日同様に7時30分から朝食サービス、選手受付、そしてテイクオフへの移動となりました。
今日は南西の風が強まる予報もあり、選手は西テイクオフで準備です。まだ穏やかですが、この後徐々に風が強まる予想だけに、しばらくは様子を見てウェイティングとなりました。
タスクコミッティーが招集され、タスクの可能性を探ります。風が強くなる前にレースを終えるためには、早めの展開が必要です。しかし、西テイクオフの場合はサーマルが活発になるまでに時間がかかります。レースが開始された後に風が強まった場合のエスケープなども考えると、やはりリスクが高いと言わざるを得ません。タスクは難しいとの結論で様子を見ていると、やはり強い風が徐々に入り込んできました。この段階で競技委員長はタスクキャンセルを宣言し、選手が下山することになりました。
そして、これをCOOスプリングカップの競技は終了しました。
N2リーグ表彰
N2リーグの入賞者のみなさま、おめでとうございます。
総合
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優勝 328 松本 健吾 BGD CURE
準優勝 317 谷藤 幸子 ADVANCE SIGMA10
第3位 324 西川 慎治 GIN GLIDERS EXPLORER
第4位 310 藤原 雅宏 ADVANCE IOTA
第5位 312 岸 幸民 ADVANCE SIGMA9
第6位 302 中川 俊治 NOVA SECTOR
女子
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優勝 317 谷藤 幸子 ADVANCE SIGMA10
準優勝 307 中久喜千代 GIN GLIDERS EXPLORER
第3位 332 山岸 里子 GIN GLIDERS BONANZA2
チーム
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優勝 西日本連合
(312岸幸民、310藤原雅宏)
準優勝 PinCOO
(302中川俊治、307中久喜千代、311横堀紀子、318飯塚宏祐、330工藤成史)
第3位 今井浜
(308岩野おさむ、313谷藤公明、314斎藤光秋、317谷藤幸子)
ナショナルリーグ表彰
ナショナルリーグの入賞者のみなさま、おめでとうございます。
総合
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優勝 202 青木 和広 OZONE ENZO3
準優勝 36 只野正一郎 GIN GLIDERS BOOMERANG11
第3位 1 高杉 慎吾 OZONE ENZO3
第4位 10 正木 晋 GIN GLIDERS BOOMERANG11
第4位 中村 浩希 OZONE ENZO3
第6位 竹尾 雅行 OZONE ENZO3
女子
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優勝 19 吉川 朋子 OZONE ZENO
準優勝 17 片貝 月子 NIVIUK PEAK4
第3位 24 田前 英代 NIVIUK ICEPEAK7
第4位 28 吉原 紀子 OZONE ZENO
第5位 37 岩崎 聡子 NIVIUK KLIMBER P
第6位 45 関根 睦 OZONE LM6
チーム
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優勝 瀬戸内少年飛行団
(2稲見祐二、11山本雅史、24田前英代、35田前敏、40山田俊介)
準優勝 Team EVOX
(4中島義雅、10正木晋、20伊澤光、21藤野光一、201平松久)
第3位 Z3(ゼットスリー)
(1高杉慎吾、13隅秀敏、63竹内直之)
X-ALPS日本チーム
最後に、間もなく始まるRedBull X-Alpsに日本から参戦する扇澤郁選手とサポートを含めた日本チームが紹介されました。2013年以来の出場となる扇澤選手は今年還暦を迎える最高齢での挑戦です。
各地のパイロットが寄せ書きした日の丸を手渡して、健闘を祈りました。
レースは6月16日スタートです。日本チームはゴールデンウィーク明けから現地でトレーニングを開始します。
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左からサポーターの渡部と小熊
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寄せ書きされた日の丸
2019年シーズンのナショナルリーグ第2戦、N2リーグ第1戦のCOOスプリングカップは、素晴らしいクロカンタスクが成立し幕を下ろしました。選手の頑張りはもちろんですが、いつも大会を支えてくれるスタッフのみなさまに心から感謝申し上げます。
これで今シーズンのJPA競技会も弾みがつくことと思います。まだまだ始まったばかりです。選手のみなさま、今シーズンも一緒にJPAの競技会を盛り上げて行きましょう!!