ジャム勝・サマーカップ2014大会レポート

レポート:初日 藤野光一(副競技委員長)

連続して成立していたジャム勝山の大会は、遂に昨年天候に勝てず不成立となってしまいました。悪天予報を覆して成立のジンクスも一旦途切れてしまった訳ですが、何故か今年もテンションの上がらない天気予報の中、ジャム勝サマーカップ2014当日を迎えたのです。
 太平洋側に停滞する秋雨前線と日本海側をゆっくり移動する気圧の谷によって、北陸地方の東側は所々強い雨に見舞われる中、ここ勝山は意外にも太陽も顔を出す天候。当初予想よりも気象状況は好転している模様。今大会は、チャレンジリーグの日本グランプリに加えて、獅子吼から持ち越しとなったN2リーグの日本グランプリでもあり、さらに付け加えるならば昨年の不成立によりチャレンジリーグの日本グランプリ者は現時点で不在なのです。そう言った状況からも、毎回競技委員長を務める鈴村氏の代理として初日の競技委員長を務めることになった私(藤野)は成立に向けた強い決意で臨むことになったのです。

フォトアルバムもご覧ください。

【1日目】

 8時開始の受付。いつもの様に福井大学の学生諸君がスタッフとして選手を迎えてくれます。気象予報では十分競技が出来ると判断し、受付後はTOへ移動しての開会式。通常の日本グランプリ大会であれば、前年度グランプリ覇者からのカップ返還とレプリカの贈呈が行われるところですが、前述したとおり2013年のチャレンジリーグは日本グランプリ者が不在。よって、開会式は滞りなく終了しジェネラルブリーフィングへと進みます。ここでは、両リーグともに日本グランプリの成立要件の確認と、ルール上のペナルティなどを改めて確認するとともに、本日の気象状況を説明して選手の士気を高めます。

 タスクコミッティーと本日のタスクを協議します。N2リーグではあまり難易度を上げないものの、テクニカルな部分も残した沖だけのアウトアンドリターンを含めた23Km程度のものを提示。チャレンジリーグもテイクオフ後方のファンタジーレストハウスを起点としたアウトアンドリターンの17Km程度のものを提示。今日のコンディションとムードならば十分成立出来ると判断しました。気になる降水の予測では、昼以降にその可能性が見受けられることから、なるべく早い展開での競技開始を目論んで早めにタスクブリーフィングを行ってのタスク発表。ダミーを飛ばして状況を確認するが、テイクオフ後方に発達した積雲によってジャムのある台地全体の日射を奪われてしまいウェイティングとなりました。1時間程度待った12時前、なかなか衰退しない積雲は今後も状況に大きな変化がないと判断し、「まずは競技を成立させる」ことを最優先としてN2リーグ、チャレンジリーグ共12時20分にウィンドウオープン。デパーチャーも同時刻にオープンするエラップスタイムレースとしました。条件による運の要素は否定出来ませんが、過去の経験から待ち過ぎによる手遅れになることを避けるため、大会運営側と選手との「競技を成立させる」と言う意思統一を行うことによって、選手自身に競技を作ってもらうことに期待することにしました。


 ウィンドウオープンの12時20分には、タイミングを計ったかのように台地やテイクオフにも日射が戻ってきました。次々と選手が競技に向けて飛び立ち、徐々にレースが進行して行きました。しかし、サーマルは30分しか続かず最初に出た選手達は力尽きてランディングしてしまいました。まだ1本目の選手がテイクオフしていない中、リフライトの選手が再びテイクオフに到着した頃から状況に変化が現れます。テイクオフ後方の雲は相変わらずですが、太陽が南に移動したことで台地の日射が再び復活。もとより減率のい良い気象条件も手伝って急速にコンディションが好転。ようやくレースがスタートしました。

 13時30分以降はジャム勝エリアのかなりの空域で強い吸い上げ条件となり、雲を有効に利用しつつも雲中飛行にならない様に機体をコントロールしてタスクをこなす条件へと推移します。アクセルを踏んでも翼端を折っても雲に引き込まれてしまう中、ある者はスパイラルで下降するも高度を落としすぎて脱落、またある者は絶妙な見切りと機体コントロールで雲を使い切ってタスクをこなす。隙間のコンディションに当たってしまった者は、諦めずにリフライトで再び空中に飛び出す。「ゴールを目指す=競技を成立させる」と言う強い意志を共有した選手達は果敢にフライトを続け、15時以降からやや強まった北風に流されるサーマルに苦労しながらも、まさに地に足が着くまでフライトを続けてくれました。

 N2リーグはオープンクラス2名、N2クラス1名の3名が見事にゴールメイク。No.8薬師寺選手は15時13分にゴール。No.54岡本選手はN2クラスただ一人のゴールメイク。岡本選手と僅差でゴールはオープンクラスのNo.13矢野選手でした。
 チャレンジリーグは4名がゴールメイク。トップはNo.541東選手。2位には女性トップのNo.527横堀選手。3位はNo.509中島選手。4位はNo.524清水選手でした。
ゴールした選手のみなさん、おめでとうございます。チャレンジリーグは1名以上のゴール者要件を満たして日本グランプリが無事成立。N2リーグはタスクバリディティが0.67となり、残念ながら明日の成立に期待することになりました。

 18時から開催されたウェルカムパーティーでは、飛べた喜びと競技成立の喜びに浸る選手、スタッフの笑顔がたくさんありました。かくいう私(藤野)もとりあえず初日の大役を無事に終えることが出来たことと、チャレンジリーグの日本グランプリを成立出来た安堵感で一杯でした。選手のみなさんの頑張りに本当に感謝です。ありがとうございます。
パーティの様子はこちらから
これで明日は正式な?競技委員長の鈴村さんにバトンを渡すことが出来ます。明日も基本的には今日と大きく違わない気象予報。選手のみなさんには気を抜かないように注意を促して本日の任務を終えることにいたします。

【二日目】
レポート 鈴村恵司(競技委員長)※変則的なリレーレポートとなります。


明けて31日の朝。曇り、薄日あり。テイクオフ周りは雲にまかれている。もとよりどっちつかずの天気だとはわかっているものの、初日トップの岡本選手の心境たるや、いかばかりか。


ウェザー予報は、初日と非常に似通っているものの、午後早めに曇ってしまうとの情報。タスクをN2リーグは少し簡単にして、チャレンジリーグは初日と同一、1/3ほどいたボムアウト(ミニマム距離以下のフライト距離)の選手にリベンジの機会が与えられた。



11:20ウィンドゥオープン。ウインドダミーは、なんとか浮いているぐらいのコンディションであるが、早めの好転を期待して続々テイクオフ。
十数名が飛び立ったのちに、やはり、コンディションは“タレ”てしまう。結果としてファーストアプローチ組は全員リフライトとなった。

11:40のちょい前にコンディションがやや復活、ここぞとばかりにセカンドアプローチが始まる。このセカンドアプローチ組も12:00前後には少しコンディションが落ちた。しかし、そこを乗り切った関根選手が結果的に単独ゴールを決めることなる。
「無理せずに時間をかけて高い高度を稼がない限り移動をかけない」セオリーはわかっている。しかし、それでリフトのある時間帯が終わってしまってはゴールは出来ない。選択にまよう。多くの選手がD92テイクオフからB37砂防ダムへの移動をダイレクトで行うなか、一旦、テイク前方のリフト帯で上げきってから砂防ダムをとる道を選んだ関根選手が唯一無二の正解を手に入れることとなった。



2014シーズン、COOのスプリングカップではタスク1:11位、タスク2:6位。栂池では22位ながら獅子吼では10位、そして昨日の勝山タスク1は4位。
この人、今年に入って調子を上げ、成績の出し方がわかって来ているという雰囲気だ。
関根選手のゴールは12:52。小雨がパラツキ出し、雨のカーテンが迫ってきたためタスクストップしたのが12:58.まさにチャンスを最大限に活かしたフライトとなった。
リフライト組も十分なリフトの中、早いスピードでタスクをこなし、タスクストップまでに多くの選手がフライト距離を稼いだことからタスクバリディティは上がり、関根選手は716点を手に入れた。二日間の総得点が1000点を越え総合1位の関根選手は逆転で見事、N2日本グランプリチャンピオンに輝いた。
女子のN2日本グランプリチャンピオンは星田苗月選手。二日目では麻生選手に上をいかれたが、初日のアドバンテージが効いた。
EN-C以下クラスは初日の成績が効いて陳選手が優勝。今となっては知る人ぞ知るという域の選手であるが、今後もEN-Bグライダーで活躍してしまいそうだ。
また、オープンクラスまで含めると薬師寺選手が二日間安定した成績で大会全体の一位を得ている。


栄誉に輝いた皆さんの様子はこちら


チャレンジリーグでは波乱は起きなかった。サードアプローチ組といえる11:50前後のスタート組にいた東選手はフライト時間51分でゴール。しかし、ファーストアプローチで早々にランディングし、リフライトでデパーチャークローズ時刻前の12時過ぎに“リ”スタートした選手達の方がフライト時間は短かった。むしろ遅くスタートするほどコンディションが良くなっていったことが各選手のフライト時間から読みとれる。(デーパーチャークローズ時刻12:20過ぎにスタートし、フライト時間が実際より長く記録されるにも係わらず、トップの吉田選手は29分を切る最速タイムを叩き出している。)
チャレンジTASK2
それでも、しっかりゴールし得点を確保した東選手に、横堀選手、中嶋選手が逆転することはなく、東選手がチャレンジリーグ日本グランプリチャンピオンとなった。女子は総合でも2位の横堀選手、文句なしの女子チャンピオンである。


大会を終えた翌日、雨模様となった9月1日は、8月32日ではなく、すっかり秋の気配が感じられる9月であった。おそらく多くのフライヤーが欲求不満に感じた2014年の夏は終わったようだ。次は9月第3週の白鷹エリア。選手は、ほぼ間違いなく秋のコンディションに迎えられることになる。トリッキーな夏コンディションに悩まされた選手の皆さん、リベンジの機会です。