2015 オールジャパン in 白鷹
レポート 宮田 歩
毎年5月のゴールデンウィークに開催されてきたナショナルリーグ「オールジャパンin白鷹」でしたが、2015年は9月シルバーウィークに変更となり開催です。贅沢なスーパーコンディションは期待しなくとも、安定した天気で多くのタスクを成立させ、選手に白鷹の空を楽しんでいただきたい!主催者の熱い思いを込めて開催です。
9月の長期休日を利用し余裕を持った日程となっているため、前日は参加選手が練習タスクを行う予定でした。ところが、前日に通過した前線の影響が残り西風の強風。前日入りし、気合を入れていた選手の皆さんには肩透かしとなってしまいましたが、練習日が良いと本番の天気が崩れるのが世界共通の謎。おかげで、初めての白鷹を飛ぶ選手には、エリア説明、攻略方法がセミナーされ、準備は万端!明日からの本番に備えることができました。
9月19日
白鷹大会の朝は、恒例の地元まあ・どんな会の温かい朝食から始まります。選手もスタッフの皆さんも、これで心も体もエネルギーを充電完了。いつも美味しい朝食をありがとうございます。
西から張り出してきた移動性高気圧の動きは予想より遅く、やや北風が強いものの、受付が終了後は予定通りテイクオフへ移動。開会式、ジェネラルブリーフィングが行われました。初めて白鷹を飛ぶ選手に対して、再度注意点、攻略方法が説明されました。
白鷹エリアは山形盆地と置賜盆地、2つの盆地に挟まれた境界に位置します。局地風はどちらかというと、最上川に沿って進入してくる日本海側から北風となります。ところが、置賜盆地北部は下層に南西風が回り込み、白鷹エリア周辺にはコンバージェンスライン(風のぶつかり)が形成され、風の淀み、思わぬ上昇風帯を作り出します。
いかに、このコンバージェンスを読み切り、安全を確保したタスクを設定するかがタスクコミッティの頭を悩ませます。初日は、低い雲底を考慮しPNLはエリア周辺を回った後、荒砥ゴールの25㎞。PCLは白鷹テイクオフを起点にしメインLDゴールする周回タスク15.5㎞が決定。
ウィンドオープン後の雲底高度は予想外に1600mまで押しあがり、絶好のコンディションとなり選手は雲底で待機します。PNLで絶好のスタートを切ったのはスカイトライ矢野選手。単独、高い風上位置をゲットし、トップ集団を牽引します。そして前半の難所、B19 (ダム)から3500mのシリンダーを取った後、矢野選手痛恨のタスク設定ミス。何とB19を200mシリンダーと勘違いし戦線離脱。
その後サーマルの起点となる白鷹山頂は一時オーバーキャスト。このタイミングでウインドオープンとなったPCLはほとんどの選手が降りてしまう波乱となってしまいます。PNLは、上がらないテイクオフ前に見切りをつけ、絶妙なファイナルグライドに入ったのは立山の中島選手。狙っていたパレス松風で最小限高度を稼ぎ、後続を振り切りトップゴール!テイクオフからフルスピードで巻き返しを狙った宮田は20秒遅れでESSをカット。続いてTAK中村選手。その後も続々と26名がゴール!大量ゴールで大会初日から盛り上ります。ゴールでは、地元白鷹クラブ衣袋農園のゴールリンゴが振舞われました。とれたての新鮮なリンゴは皮ごと食べてもしゃきしゃきで美味しい!
PCLリフライト組がテイクオフへ上がったタイミングでは、本流の北風強風が入り込みリッジソアリングコンディションに。そんな強風をものともしなかったのは、唯一ゴールを決めたTAK横田選手!しかし、痛恨のスタートミス。距離を伸ばした清水選手がトップとなりました。
9月20日
西から張り出してきた移動性高気圧により今日は風が弱い!絶好のコンディションが予報されました。タスクコミッティは最良のシナリオでは、PNL朝日連山の東斜面を往復も選択できる荒砥ゴールへのアウトアンドリターン。PCLは白鷹エリア外の荒砥ゴールを狙います。
テイクオフでのブリーフィングが終わったころ、そろそろ雲底が上がってくるかと思われましたが、昨日同様に雲量は多くなかなかコンディションは好転しません。11:00近づき仮タスクは変更。PNLは西黒森スタートの米沢ゴール。シンプルな35㎞。PCLは白鷹山を周回し荒砥ゴール。こちらもシンプルな13.5㎞。
12:20のウインドオープンからコンディションは好転。低い雲底は1400mほどですが、高い雲底は1700m。高度差がある雲底を飛ぶため、視界が悪くテイクオフ上空は一時混沌としていました。コミッティのレベル2コールに選手はやや拡散。安全を確保しながらベストポジションを伺います。
PNLを牽引したのは立山の中島選手。白鷹山を低く通過し、次の雲へ突っ込み見事セカンドサーマルをゲット!抜け出します。PNLタスクコース上は南北にコンバージェンスの雲が続いています。高く雲底下をグライドするには良いのですが、一度低くなると大きくオーバーキャストした空域の対流は弱く、これは渋い・・・。それでも流石PNL選手は何とか生き残り、米沢ゴールが待っている置賜盆地へ到達します。
長井側からはTAK中村選手。群馬の関根選手。南陽側から宮田、正木選手からアタック!雲が切れた平野部のサーマルは間欠的。高層雲も張り出しサーマルのサインは乏しい・・・。しかし、残り10㎞。弱いサーマルでも当たればゴールできそうです。残念ながらトップ4名は順調に高度を損失し無念のランディング。それを見て雲底から平野に出てきたヨッチャンこと吉田選手が高くアタックしますが数km手前。そして高層雲の切れ間から日射が復活してきたところで、秋田の菊池選手!活発化した平野部のサーマルをゲットし、悠々とファイナルグライド。唯一のゴールかと思われましたが1㎞手前にショート。ゴール者はなし。
一方、PCLはスタート前にピークに達したサーマル活動も、発達した積雲でオーバーキャスト。またしてもほとんどの選手がランディングを強いられます。そんな中、唯一生き残ったのは宇都宮の田村選手。そして復活したサーマルコンディションで悠々と荒砥トップゴールを決めお見事1000点!果敢にリフライトに臨んだ選手も、良いコンディションに間に合い、4名がゴール!ほとんどの選手がゴール前へのファイナルグライドを楽しみました。
9月22日
移動性高気圧の動きは予報よりも遅れたようで、一日遅れで今日がベストコンディションとなりそうです。3日間成立すれば、様々なタスクにトライできます。最終日ですが、PNLはテクニカルなタスクを設定されました。
PNLは昨日のリベンジ米沢ゴール(7㎞)から平野部を南陽ゴールまでリターン32.3㎞。タスク距離に現れない難易度は高い。PCLはエリア内の周回数を増やして荒砥ゴール15㎞。スタート時間は昨日までより1時間早く設定されました。
ウインドオープンと共に次々と選手は空中へ。しかし、昨日までと違い、中々上がりません・・・。一度上げきった選手は悠々と雲底で待機していますが、低い選手はジリ貧。スタート時間に間に合った選手を下から眺めながら、生き残ることに集中します。
PNLピッタリのスタートをした集団は、今日も立山中島選手が牽引します。「何人たりとも前は飛ばさない!」素晴らしいアタックで大きく先行しますが、長井手前で北風を追い越してしまいスタック。追走していたウィングキッス藤川選手と、宇都宮の喜多選手は、ブレーキをかけて確実に雲底下を高く南進。スタートを大きく出遅れたセカンド集団でしたが、やや東寄りのコースをコンバージェンスラインに乗って追走。コンディションは好転しスピードも上がります。そして、宮田は南陽市上空で先頭集団に追いつきます。
先にファイナルグライドに入ったのは、藤川選手と喜多選手。米沢ゴールから7㎞のシリンダーを取って後、見事サーマルをヒットさせたのは喜多選手。最小限の高度を獲得し、見事トップゴールを決めました。宮田も1,800mからファイナルグライドに入りますが、コース取りを誤り痛恨の1㎞ショート。その後も後続組は続々とファイナルグライドに入りますが、届きません。15時を過ぎ、もうゴールはいないかと思われたころ、はるか雲底からファイナルグライドに入るグライダーがありました。リフライトの稲見選手。午後に好転したコンディションを使い効率よくフライトし、見事ゴール決めました。やはり置賜盆地は14時を過ぎてからだったようです。
PCLもほとんどの選手がリフライトする中、Coo平松選手と地元松田選手の2名が見事ゴール。初ゴールかと思われた宇都宮の江副選手は、シリンダーミスでした。惜しい!
トリッキーなタイミングもありましたが、3日間素晴らしいコンディションで3本のタスクが成立しました。PNLは手堅くまとめた宮田が総合優勝。準優勝はウイングキッス藤川選手。3位はTAK中村選手。最終日までもつれたPCLはTask3でトップをかざったCoo平松選手が逆転優勝。2位は宇都宮の田村選手。3位はTAK横田選手でした。入賞された皆さんおめでとうございました。
3日間成立し、スタッフの皆さんお疲れ様でした。PNLの連日、米沢ゴールタスクでの広範囲の選手回収で大変だったと思われます。本部に帰着した後の、カレーや山形名物「芋煮」とてもおいしかったです。植木実行委員長からは、来年も9月に開催していただけることのお言葉をいただきました。やっぱり9月の白鷹は時期的にも最高。また来年、みんなで来るぞ! ありがとうございました。