COOクロカンカップ

レポート 藤野光一(競技委員)

黄砂、花粉、PM2.5などで何やら騒がしいこの頃ではあるものの、それらの言葉が春を告げるキーワードでもあります。今年は桜(ソメイヨシノ)の開花も例年より早まっており、関東近辺では花見で賑わう週末になったことでしょう。 そんな春の訪れを告げる大会の一つとして定着したのが「COOクロカンカップ」。PNL第2戦、PCL第1戦となる大会で、チャレンジリーグに参加する選手にとっては大事な初戦。事前の天気予報では競技が出来そうなのは初日の23日のみで、24日は雨マークも入っているものの、両リーグ併せて86名の選手が「クロカン」に期待を膨らませて集まりました。


大会1日目


COOエリアの山々には朝日が照らしているものの、勢いよく噴出される花粉によって周囲は黄色く霞んで見える。マスクや帽子、メガネなどで花粉を徹底的にガードする出で立ちで受付に並ぶ選手が多く見られたのも春の風物詩と言って良いのでしょうね。GPSへデータを転送するのに予想以上の時間が掛かってしまったものの、大会に手馴れたCOOエリアのスタッフは決められた役割をキッチリこなして選手が次々とテイクオフへ運ばれて行きます。


10時から開会式、ジェネラルブリーフィングと続き気象概況もアナウンス。それによると、「上層は北寄りの風が終日強く北上タスクは難しい。低層は日中海風が入るが、やや強めが予想される。」とのこと。この情報を元にタスクコミッティーはタスクを組み立てることになるのですが、海風の進入時刻をいつ頃と読むかがポイントとなりました。10時台のCOOエリアは、既にソアリングコンディションとなっており、いつでも競技が出来そうに見えます。

チャレンジリーグは初戦と言うこともあり、湾内ではあるものの飛び甲斐のある26.7Kmのエラップスレース。

PCLーTASK1:D01-B58-B03-B22-B47-B03-B06-B51-B03-B12-A89

ナショナルリーグは八郷盆地を反時計回りに周回する53.2Kmのエラップスレースが発表されました。

PNL-TASK1:D01-B17-B05-B61-B13-B08-B31-B03-A90


とは言え、海風による東寄りの風が進入することを懸念して、チャレンジリーグからのウィンドウオープン。ブリーフィングからウィンドウオープンまでの時間が短かったものの、選手は手早く準備を済ませてテイクオフして行きます。ナショナルリーグのウィンドウが開いた11時頃には雲低が1600mを超えるまでになり、レース展開に期待が膨らみます。しかし、COOエリア東側の対流が活発化したことにより西風を引き込んだのか、テイクオフはしばらくフォローになってしまいます。それでも先に出た選手、何とか出られた選手はそれぞれのスタート時間になるとレースを開始して行きました。チャレンジリーグでは、この時間差が大きく結果に影響することになりました。

結果論になりますが、チャレンジリーグのリザルトを見ると、ゴールした選手7名はスタート時間である11時10分台にレースを開始しています。フォローを挟んで後半に出た選手は、タスク途中に進入した海風の影響を受けてしまい、結果的にはゴール出来なかったと言うタスクコミッティーの”懸念”が現実のものとなってしまいました。ゴールした選手に聞くと「海風が入る前にゴールするつもりでタスクを回った」と言うことでした。条件を読んだレース運びはチャレンジリーグの選手レベルがアップしたことの現れですね。
ゴールした選手の中でもダントツの飛びを見せたのがタスクトップを飾った郷之丸選手。ただ1人1時間を大きく切って40分台でのゴールは素晴らしいと思います。今後の活躍が楽しみな選手ですね。
ナショナルリーグの方は、湾内のターンポイントをこなした後にフラワーパーク、不動峠、朝日峠と続くターンポイントのコース上に殆どの選手がランディングする結果となりました。前半にスタートした選手は整っていない条件に苦しみ、後半スタート組は強まった海風によって前進を阻まれてしまったようです。
殆どの選手が帰着を済ませてCOOの大会本部前で寛いでいた15時を過ぎた頃に1機のブーメラン9が北方向から足尾山頂へ向かって進んできます。厳しい条件を凌ぎきって最終ターンポイントの足尾山をクリアし、貫禄のファイナルグライドで大会本部上空に現れたのはベテラン扇澤選手。今年はX-ALPSの参加も控えての忙しい身ながら、世界レベルの技術を見せてくれました。扇澤選手によると、やはり風が強く苦労したとのことでした。



選手が揃った16時からは懇親会。いつもながらCOOの大会は素晴らしい料理が振舞われて選手も大満足です。支えてくださるスタッフの皆様には本当に感謝です。クロカンタスクは出来ませんでしたが、それぞれのフライトについて話したり、唯一ゴールを決めた扇澤選手の話を聞いたりと、楽しいひと時と過ごすことが出来ました。


大会2日目


COOの大会では朝食サービスが行われます。これもまた楽しみの一つ。朝早くから準備して下さるスタッフの皆様はさぞかし大変だろうと思いますが、こう言ったところにも選手への気遣いが感じられ「また来よう!!」と思わせてくれます。
曇天でもあり、競技成立の条件が極めて限定されるため、兆候が確認されるまではドームテント内にて扇澤選手のフライトログを見ながらの解説。やはり、技術や知識を総動員しての難易度が高いフライトだったとのこと。さすがの飛びでした。


今日は、風向きが北から北東に振れてくる予想。テイクオフ付近の風は4m/s~5m/sと強めですが、北東になればリッジソアリングで競技が出来る可能性があるため、そのタイミングをテイクオフで待つことにします。雲低は足尾山をやや隠すレベルであり、このままでは仮に風向きが変化しても競技は出来ないため、現状考えうる最低限のタスクを提示して準備することになりました。

選手はタスクをGPSにセットして待機しますが、風向きはおろか風速もどんどん下がってリッジソアリングが出来るレベルを割ってしまいました。競技の可能性は低いと判断し11時にタスクキャンセルが発表され、13時ランディングクローズのフリーフライトに切り替えられました。車で下山する選手、フライダウンする選手と様々でしたが、みなさん無事に帰着を終えて暖かいカレーうどんに舌鼓を打っていました。


14時からは表彰式・閉会式が行われ、初日のみの成立ではありましたが無事に競技が出来たことに満足げな顔がそこにありました。入賞されたみなさん、おめでとうございます。

4月もCOOでスプリングカップが開催されます。次回も素晴らしい環境とスタッフによる大会にぜひ参加下さい。次こそは良い南風が吹いて、わたしたちを北へ導いてくれることを願って・・・。