八方尾根ジャパンカップ2012 DAY3

朝、白馬は霧に包まれていましたが、その霧が晴れると今までの2日間を取り戻すかのような澄んだ青空に、きれいな白馬三山がくっきり顔を見せてくれました。

受付前に長い列を作っている選手の皆さんの顔にも、いよいよという期待の色が伺えます。
8:00の受付開始前に、仮タスクが発表になり選手は一斉にGPSへの入力をはじめました。


8:00受付開始され、選手も続々とテイクオフへ。9:45よりテイクオフでブリーフィングが開始され、競技委員長より本日の天候の説明などがありました。風は上層より下層の方が強めで、午後には八方ではおなじみの強めの北風が入る予想とのこと。10:00過ぎに1人目のダミーがテイクオフ。そのあとどんどん続き、風の様子を見ます。


その後発表されたタスクは、D73・T.O→B17・(1000mのエンタースタート)→B13→D74→B03→B31→D74→B28→D74→B23(2km)→A58(1km)ゴール

一斉スタート 63.5km八方・五竜・栂池と白馬、小谷村内の山々を巡る、大きなタスクです。ウィンドウオープン10:50、ディパーチャーオープンが11:20と発表になり、オープンとともに次々と色とりどりのグライダーが、空へ飛び立っていきました。振り向くと目線の先には、きれいな青空にたくさんのグライダー。圧巻でした。


11:20 全機が一斉にスタート。八方エリア目の前の三角パイロンを通過し、トップグループは栂池方面へと向かっていきました。渋いコンディションの中、いち早く八方にリターンしてきたのは、扇澤選手、宮田選手、大澤選手。低めの高度でしたが、八方で上げなおし佐野坂方面にいち早く抜けたのは、扇澤選手と宮田選手。たくさんの選手の方が山沿いで苦戦されている中、終始このレースを引っ張っていた2機のグライダーがいち早くD74八方ゴンドラ山頂からB23みねかたへ向かって飛び出してきました。

3:30頃ものすごい接戦で、ほぼ同時にゴールしたようにみえましたが、7秒差で扇澤選手が1位、宮田選手が2位でのゴール。(宮田選手はGPS計器トラブルでしたが)その後、扇澤選手はゴール上で高く上げ直し、八方ランディングへと帰っていかれました。


お二人に続いて稲見選手がゴールされました。みなさん、ゴールの後のお顔はすごく素敵でした。おめでとうございます。皆さんがそれぞれ、本部に帰着するころに予想された北風がはいりはじめました。


5:30にリザルトが発表され、外がすっかり暗くなるころ、ようやく閉会式がはじまりました。順位については、機器等の多少のアクシデントがあり、協議の結果最終的に順位の変更がなされました。

入賞された皆さんおめでとうございました。


最終日で大会も成立し、参加された78名の選手の皆さん、大会を裏で支えてくださったたくさんのスタッフの皆さんが誰も大きな怪我などすることなく、地元の皆さんのご協力もあり、無事終わる事が出来て本当によかったです。

皆様ありがとうございました。

レポート
小宮山 亜希子


八方尾根ジャパンカップ2012 DAY2

昨夜から降り始めた雨は朝になりあがりましたが、薄い雲が多めのお天気。まだまだ雨雲の近づきが気になるところです。

朝8:00より受付が開始。通常ですと順次テイクオフへ移動になりますが、降水予報の情報を確認しながら、30分後に本部前でブリーフィング。

清水競技委員長より、「雨雲が近づいているので、お昼くらいからのレースを期待してとりあえず選手の皆さんはうさぎ平レストハウス横のテイクオフで待機し、天候の様子を見ましょう」という事になりました。


うさぎレスト横テイクに到着。選手は天候の回復を期待しながらウェイティング。その間、競技委員長、タスクコミッティ、セーフティコミッティも交えて、入念な話し合いがなされ、その後競技委員長から、やはり天候の回復が見込めないということで、本日のタスクキャンセルが発表されました。またまた明日に期待がかかります。


選手の皆さんはフリーフライトで降りる方、ゴンドラで降りる方様々でしたが、最後の選手がテイクオフされる頃には、やはり雨がぽつぽつあたりはじめ、その後は八方ランディング周辺も風が乱れ、タスクキャンセルは的確な判断だったと思います。

白馬はこの三連休、「いいなぁ~白馬フェスティバル」という、イベントも開催されており、タスクキャンセルは非常に残念でしたが、いつもの大会テイクオフではなく、うさぎレスト横のテイクオフからフリ―フライトとはいえ、色とりどりのグライダーが飛び立つのを、たくさんの観光客の方に間近に見ていただくことができた事は、よかったとおもいますし、私自身も普段使わせていただいているテイクオフからの選手のフライトを見る事が出来たのは、貴重な経験でした。


本部前では、選手の皆さんに温かいうどんが振る舞われ、みなさん美味しそうに食べていただけました。
                レポート By 八方尾根PGS


八方尾根ジャパンカップ2012 DAY1

大会1日目(10月6日)

紅葉も上の方から少しづつ色付き始めている白馬で、『PNL第5戦 白馬八方尾根Japan Cup』が今年もはじまりました。

大会初日の空は高層に雲が張り、三山も見え隠れ。少し微妙な空模様です。6:30分くらいには、もう受付前には選手の皆さんの長い列が出来ており、にこやかにお話をされている方、緊張の面持ちで荷物を確認されている方、様々な中、7:00から受付が始まりました。


受付後、本部前でブリーフィングを済ませた選手は順次、テイクオフへ。10月三連休初日ということもあり、テイクオフへ向かうゴンドラ乗り場には長蛇の列が。大きなザックを背負った選手の皆さんに、登山者の方々も興味津々の様子でした。

テイクオフに到着し、選手の皆さんはそれぞれ準備開始。10:00から開会式とブリーフィングが始まり、前堀実行委員長のごあいさつ、清水競技委員長からのごあいさつ、ローカルルールの説明、初日ということで無線機のチェックなどがありました。


その後ダミーがフライト。日射が弱く少し渋いあがりです。雲も多く、午後には降水予報も出ているということを踏まえ、決められたタスクは、フリースタート、D73→A54→D74→A54→D74→B31→B21→A58  27.8km。

11:30にウィンドウオープン。最初に、続けて4名程の選手がテイクオフするも上りがいまひとつ、様子をみている選手はなかなか後に続きません。テイクオフの風もアゲインストですが非常に弱く、みなさんギリギリまで粘りながらも、+2時間のウィンドウクローズ前には全員の選手が無事テイクオフしました。しかし、本日はミニマム距離を超える選手がおられず、残念ながら大会は不成立となりました。

その後、本部前でレセプションがはじまり、選手の皆さんも明日に期待しながら
楽しんでおられる様子でした。


2012立山らいちょうバレーカップ 大会レポート(その2)

 

大会2日目

 

予想に反して空は僅かに高層雲がかかる程度の快晴。高層の雲も強風を示すものとは違い、どことなく秋の趣を感じさせる穏やかなムード。そして、この日は私たちが待ち望んだ「その日」となりました。

 

ブリーフィングでは昨日のタスクストップで発生した不具合についての説明の後、立山の条件を最大限に使い切るために扇澤競技委員長より以下の提案がなされました。

・条件が整い始めたら、選手は機体に行っていつでも飛べる様に準備する

・ウィンドウ、デパーチャーオープン時間はその時点で発表する

こうすることで、良い条件の時間を無駄にすることなく使い切ることと、競技をスピーディーに行い、昨日不成立だったチャレンジリーグの選手にも十分な時間を与えることが可能になると言う試みです。ナショナルの選手は快く同意し協力していただけました。どの様な状況であっても、臨機応変に対応出来るのもナショナルリーグの選手ならではです。

 

ナショナルリーグのタスクは、昨日のタスクをベースに次の様なものとなりました。

D32-B04-B05-A55-B04-B05-A55-B04-B05-A55-B04-B13-B04-B13-A52

47.6Km

対岸を含んだ三角を3周してから美女平B13、B04を往復してA52山野ゴールと言うものですが、対岸は緊急ランディングをターンポイントとしてダイレクトにB04へ向かうか、一旦対岸のB16付近で上げ直すかのオプションがあります。



 

チャレンジリーグは、昨日成立していないので「今日こそ美女平へ」と言うこともあって最終ターンポイントはもちろん美女平。

D32-B03-B27-B04-D31-B04-B02-B27-B04-B02-B27-B30-B05-B13-A52

31.8Km

シリンダー400mとは言え、このタスクは飛び応え十分なはず。どんなツワモノでもノミナルタイムの45分を切ることは不可能でしょう。

 

ダミーの上りが今一つの時間が続きましたが、対岸は十分に対流しており「その時」まで間もなくです。ナショナルの選手は予定どおりに各自の機体へ移動してセットアップ。そして11時15分にウィンドウがオープンされ、次々と飛び立って行きました。今日は日射が遮られることもなく、金山上空には立派なガーグルが出現。スタート時間の11時35分に合わせて選手がB04へ向かう様子は何度見ても圧巻・・・としか言いようがありません。

三角パイロンでは、予想通りにA55からダイレクトにB04へ向かう選手がほとんどでしたが、低く移動してしまった選手は罠にはまって苦しい状況に追い込まれるか、もしくはランディングを強いられる展開になりました。そんな中でも順調に周回をこなし、最終の美女平からトップでゴールしたのは稲見選手。そして、1分遅れて竹尾選手がゴール。その後もゴールに飛び込んだ選手が続き18名がフィニッシュです。


 

チャレンジリーグも難しい沖のパイロンB02からのリターンで直接B27へ向かうか、安全策で金山へ戻るかのオプションによって生き残る者、地上に足を着ける者を振り分けることになりました。そして、その苦しい展開を凌いだ選手だけが、美女平からの至福のファイナルグライドを手に入れることが出来たのです。そのトップを切ったのが佐藤選手。地元立山の選手で、地の利を生かした飛びに2位以下に10分以上の差をつけてのダントツゴールでした。チャレンジリーグも15名がゴールメイク。ここに「普通の立山」でのゴール者が居るレースが成立したのです。

 

この日は何もかもが上手く行ったと言える日で、「歯車が噛み合う」とはこの様な状況を形容するための言葉なのだとレポートを書きながら思い返しています。天候、条件、タスク、選手、空域、タイミング、そして全ての大会に関わる方々の思い・・・。素晴らしい日でした。

最終日

 

大会最終日はフェーン現象で上空は強い南風。競技は不可能なことから、早々にキャンセルが発表されました。

9時からの表彰式では、全ての選手が笑顔で入賞者を称えていました。

 

 

ナショナルリーグの結果

総合

優勝  藤川稔選手

準優勝 正木晋選手

第3位 隅秀敏選手

第4位 稲見祐二選手

第5位 中村雅彦選手

第6位 青木翼選手



 

女子

優勝  吉川朋子選手

準優勝 増子友美選手

第3位 森由美子選手

第4位 吉原紀子選手

第5位 小森さちよ選手

第6位 清水貴代子選手



 

チャレンジリーグの結果

総合

優勝  佐藤裕選手

準優勝 岩崎聖子選手

第3位 山田昌平選手

第4位 関口敏夫選手

第5位 中村由香選手

第6位 松田竜一郎選手



 

女子

優勝  岩崎聖子選手

準優勝 中村由香選手

第3位 小野晶子選手

第4位 八子文恵選手

第5位 山岸里子選手

第6位 西尾奈津子選手



 

EN-B以下

優勝  関口敏夫選手

準優勝 越坂政也選手

第3位 杉岡洋選手



 

入賞された選手のみなさん、おめでとうございます。また、ナショナルリーグ女子優勝の吉川選手の涙には感動しましたね。これからも頑張って下さい。

立山エリアには競技における長い歴史と伝統があります。そして、今回はその歴史に新たなページを刻むことが出来ました。参加された選手のみなさん、大会を支えて下さったスタッフのみなさん、JPAの競技関係者のみなさまに感謝の気持ちをお伝えして、レポートを終えさせていただきます。

文責:藤野光一



2012立山らいちょうバレーカップ 大会レポート(その1)

今年も9月の3連休に設定された「2012立山らいちょうバレーカップ」。過去3年も同じ時期に開催され「何とか成立してきた」と言うのが大会を主催し運営してきた主催者やスタッフの偽らざる気持ちだった。大会レポートの前に過去3年の結果を振り返ってみると

 

2009年・・・Task1 34.2Km Goal者なし TOPは18.6Km

        Task2 41.6Km Goal者なし TOPは37.7Km 

2010年・・・Task1 44.7Km Goal者なし TOPは22.0Km

2011年・・・Task1 32.4Km Goal者なし TOPは25.5Km

 

と言った具合で、ナショナルリーグではゴール者なしのタスクばかり。しかも、その全ての大会では立山らしからぬコンディションにぶつかってしまい、「本当の立山」での競技が出来ない大会が続いていた。それ故主催者やスタッフが願うのは「普通のコンディションでいい・・・」と言う一点のみに。 そんな私たちの願いをあざ笑うかのように週間天気予報は曇りとも雨ともつかぬ微妙な予報と、北陸付近をかすめるかの様な前線を描いた予想天気図。「またしても・・・」と言う思いがよぎったのは言うまでもありませんでした。

大会初日

勢力を強めた太平洋高気圧、台風、前線と言う微妙なバランスの中で大会当日を迎え、気象条件的には初日が最もコンディションが安定する可能性が高いはずでした。

ナショナルリーグ56名、併催された「チャレンジ立山」が25名。総勢81名の選手が立山に集い、受付を終えた選手はGPSダウンロードを済ませると手慣れた様にゴンドラに乗って極楽坂テイクオフへ移動。そして、ナショナルの選手は思い思いの場所に自分の愛機をセッティングし始め、それは時間と共に機体の花がゲレンデに咲くが如くテイクオフを埋め尽くして行く。この光景がまさに「立山らしさ」と言えるでしょう。

9時30分からはテイクオフにおいて開会式。実行委員長のJMB立山パラグライダースクール関沢校長から開会の挨拶とローカルルールの説明。地元電力会社から送電線に関する注意事項説明。今大会の競技委員長である扇澤氏からはジェネラルブリーフィングと続き、最後は「立山エリアが初めて」と言う選手(主にチャレンジリーグ)向けに、「20年ここで飛んでいる!!」と豪語した私(藤野)によるエリア攻略講座を開催し、コンディションが整うのを待つことになりました。


 



ナショナルの選手たちにとっては、昨年のタスク「対岸と美女平の往復」がかなり強烈に残っているらしく、タスクコミッティでも「対岸と美女の往復レグは避けたい」と言う意見を尊重し、初日のタスクは次の様なものとなりました。

D32-B04-B05-B02-B04-B05-B16-B04-B13-B16-B04-B13-A52 40.2Km

対岸のB16は三角コースの一つとして扱い、強制的に対岸を往復するようなコースとならないように設定。

 

一方、チャレンジリーグでは最終パイロンで美女平を使うかどうかを協議したが、「立山に来たら美女平へ行って欲しい」と言う私たちの思いを反映して次のタスクを設定。

D32-B03-D31-B04-B29-B28-B04-B02-B27-B03-B05-B13-A52 27.4Km

エリア内の三角コースを徐々に広げ、それをクリアした選手は安全のために設けられたゴンドラ山頂駅B05 をクリアしてB13美女平へ渡り、ファイナルグライドでA52山野グラウンドへゴールするチャレンジリーグとしては豪快なもの。

 

尾根上の南風が落ち着き、テイクオフには順風が吹き始める。ナショナルリーグが12時ウィンドウオープン、12時30分デパーチャーオープンのスケジュールで選手がスタート。しかし、ウィンドウオープン後わずか数分で状況が一変。先ほどまでジリジリと私たちを照らしていた太陽が、南から発達する雲に遮られエリア内の日照は断たれてしまう。半数弱の選手がテイクオフを完了しており、ここからサバイバルが繰り広げられることになる。日射のない稜線付近を諦めて、まだ日射の残るランディングを含む沖に向かって僅かなリフトにしがみつき、生き残ろうと持てる全ての技術や感覚を使い機体を操縦する様はナショナルリーグにふさわしい見応えのある光景でした。あまりの渋さ故にテイクオフを一時的にクローズしたことにより、テイクオフからその光景を見ていたナショナルの選手達自身が「凄い!さすがナショナル!!」と言わしめたサバイバルでした。

この状況は、またしても立山としては「普通」とは言い難い条件で、結果的には選手の技術によって数名が生き残ることに成功してレースを続行。再びオープンされたテイクオフからも選手が真っ直ぐランディング方向へ飛びリフトを掴んで上昇、レースを進めると言う奇妙な光景ではあるものの、雲が発達してタスクストップのコールがかかるまで飛び続けた選手達に支えられての「タスク成立」であったと言っても過言ではないでしょう。

この日、トップはサバイバルを凌いだ正木選手を始めとして岩沢、藤川、吉田、隅、高杉らの選手達が距離を伸ばしたのです。

 

チャレンジリーグは、タスク内のB04をB03に変更し、更に最後の美女平B13をB24粟巣野に変更してレースを開始したものの時既に遅く、タスクストップ時点でミニマム距離を飛んだ選手は存在せず不成立となってしまったのです。

しかし、タスクストップの判断は絶妙だった。全選手が安全にランディングし、パッキングを終えて帰着申告も全て完了した頃合いになってから雨が降ると言う先を読んでいたかのようなオペレーションに、表向きは「当然」と言うべきでしょうが、個人的には「脱帽」の的確さだった。改めてこの素晴らしい安全管理の下で大会に参加出来ることに感謝の意を表したいと思います。

 

いつも思うことですが、飛べた後のBBQは盛り上がります。選手の顔も結果はどうあれ満足感がにじみ出て、その表情を見るだけでスタッフは疲れが癒されたに違いありません。


~大会レポート(その2)へつづく~