四国三郎ジャパンカップ2015
レポート 宮田 歩
2015年JPAナショナルリーグもいよいよ最終戦。前回、八方尾根から持ち越しとなったグランプリ対象大会ともなります。2015年間ランキングも10本目が成立すると5本計上と大きく変動してきます。注目の最終戦が始まります。
21日(土)大会1日目
例によって前日の練習日は、北風ベースのベストコンディション・・・。雲が多め予報で心配されていましたが、快晴の朝を迎えました。早かった7時の受付開始後、選手はあっという間にテイクオフへ。8時には本部からの全員移動が完了しました。
10時からテイクオフで開会式。三頭山エリアを管理されている、美馬スポーツ協会長逢坂さんのあいさつからスタート。そして四国電力担当者様からご注意をいただきました。地元のご協力があって開催できる競技会に本当に感謝です。
テイクオフレベルより下層に吹く強めの東風、1200mと低めのクラウドベースを考慮して37.7㎞のこのエリアにしてはショートタスクが決定しました。
11:30のスタートタイムで集団は奥のモーターランド上空、もみじ温泉東尾根と2手に分かれましたが、ほぼ全員が同時にスタート!B15から2000mのシリンダーをカットした後、断続的に強いサーマルを発生はさせますが、通称「紅葉おろし」と恐れられる強い乱気流が起こる紅葉温泉上空を通過しなくてはなりません。
トップ集団はしっかり上げきり、やはり香川県との県境となる奥をトランジット開始。テイクオフ上空まで戻ってきたところで集団は分散していきます。最も北側コースを選択したのは三頭山エリアをよく知る地元稲見選手。扇澤選手、廣川選手は三頭山アンテナから、その他の選手は真ん中のダイレクトに!B74から5㎞と大きく設定されたシリンダーは、カットするポイントの選択肢を広げてくれます。さあどこが正解だったのか?
真ん中、三頭山からアタックした組は、吉野川に沿って入り込んだバレーウインドの影響を受けた荒れたサーマルで、5㎞シリンダー手前にある尾根がいつものようには上がりません。それに対し北の奥を攻めた稲見選手は東風の影響を受けず、スタックなしでシリンダーをカット!そして高く戻ることに成功。単独抜け出します。
ここでセカンド集団は2手に分かれます。稲見選手を追走するように高杉選手、藤野選手。同じコースでは追いつけないと判断した宮田、廣川選手は強いサーマルを期待し紅葉温泉方向へ。後方から追いかけるメリットを生かし、良いコースを選んだセカンド集団は、稲見選手をB72のリターンでついにキャッチ!最終パイロンB21を取った後に三頭山南斜面で最後の勝負となりました。
ここでやや高かった高杉選手はファイナルグライドヘ最初に離脱!勝負に出ます。しかし、これは届くか怪しいぞ!宮田、稲見選手はもう少し高度を上げてGPSは+170mとの表示。後方から最大スピードで追走します。
やはり、高杉選手はタイミング悪く「紅葉おろし」に捕まりドンドン高度をロスしていきます。しかし、さすがPNLランキングリーディングパイロットは、迷わずゴールへこぼれてアタックを続けていきます。そして、ゴール手前5kmからは東風の吹き上がり空域まで飛び込み、見事トップゴールを死守!1分30秒遅れで宮田、続いて稲見選手がゴールカット。リーディングポイントで稲見選手は2位。
その後も続々と選手はゴールへ飛び込んできます。9位を争った隅選手はギリギリの高度でシリンダーをカットした後、フォローでランディング!ゴールを沸かせました。総勢26名のタスコンプリートとなり、タフだったフライトを称え合い盛り上がりました。
女子トップは唯一ゴールを決めた星田さつき選手。2位だった麻生選手、ゴール手前5㎞に惜しくも届かず。しかし、ランディング後は地元のおじさんのオモテナシを受け、さらには本部まで送っていただきご満悦でした。地元の方との関わりも、大会の楽しみの一つですね。
11月22日(日)
曇り予報に反して青空が見える朝。今日もやれるぞ!選手は気合十分でテイクオフへGO!ところがテイクオフから望む吉野川バレーにはガッチリ逆転層が見えます。これは渋そうです。タスクコミッティは25㎞のミニマムタスクを決定。何とか成立を目指し最大限の準備で待ちます。
周期的に覆われる高層雲になかなか地表温度は上がりません。しかしウインドオープンタイムの10:45ごろには一時的に青空が!オープンタイムと共に扇澤選手から続々とテイクオフしていきます。三頭山南斜面はテイクオフレベルまでは上がるものの、なかなか逆転層はブレークしません。40機近いグライダーが弱いサーマルにしがみ付き、逆転層のブレークするのを待ち続けます。
空中待機するパラグライダーは、まるで生簀の中にいる鮪のようです。接触しないように旋回は続きます。鮪は泳ぎ続けないと死んでしまうらしいですが、これはパラグライダーも同じ。しかし、無情にも次の高層雲が日照を遮り、サーマル勝度は徐々に弱まっていきます。高度が低い選手から、順番に美馬橋LDへこぼれていきます。そんな状況で、三頭山南斜面に見切りをつけ、エリアを熟知している高木選手は数名引き連れスタートシリンダーへトランジット開始します。リフライトを狙い美馬橋LDへ向かう選手と、スタートシリンダーへ勝負をかける選手に分かれましたが、宮田、西尾選手、吉田選手の3選手は三頭山南斜面でサーマル活動の好転を待ちつづけます。狙うは主稜線に形成された積雲ですが・・・。
そして下層の吉野川にバレーウインドが進入したことがトリガーになったのか、やっと下層からサーマルが押しあがるようになったのです。三頭山で待ち続けた3名は、待ってましたと県境の主稜線を目指し、テイクオフ北側コースへトランジット開始。この頃、リフライト組も飛び始め、勝負は一度リセットされた様子。
リフライト組の只野選手、大塚選手は低く、最短距離を直線的に狙っていきます。生き残った宮田は慌てずB15からのリターンも奥から高く戻り、B21をゲット。徐々に厚くなる高層雲よりも先にゴールできるのか!?
14時を過ぎ、頼みの綱だった三頭山南斜面、紅葉温泉のサーマルも終了に近づき、最後は距離伸ばしに・・・。2回目のB15を取った数名のパイロットも残念ながらランディング。ゴール者は無しに終わりました。5㎞のミニマム距離を越えた選手は多くいたため、この時点でグランプリは成立です。しかし、このタスクは何点つくのでしょうか?
トップは17㎞を飛んだ宮田。22名の選手がミニマム5㎞をクリアーしています。トップは188点。少ない点数でしたが、2日間の総合成績は大きく変動することとなりました。
成績が確定した夕方には、無情にも眩しいほどの太陽が・・・。この晴れ間がもう少し早かったら。渋い条件の中、全力を尽くした選手でしたが、誰しもがそう感じたはずです。その分、明日も奇跡の成立があるかもしれない。そんな思いで、最終日に向け闘志を燃やすのでした。
11月23日(月)
しっとりとした曇りの朝。雨は降っていませんが、雨雲レーダーでは11時に雨が降ってくる予報。残念ですが、8時の時点でキャンセルが発表されました。9時からは閉会式と表彰式がスタート。
結果は2日目に粘りのフライトで距離を伸ばした宮田選手が逆転優勝。今季4勝目を飾りました。併せて2015年PNLグランプリチャンピオンにも決定です。2位は初日トップだった高杉選手。3位はリフライトで頑張った只野選手。4位は僅差でした2015年N2Lチャンピオンの藤野選手。5位は3ライナー機で大健闘の大塚選手。6位に地元の稲見選手。女子優勝は星田さつき選手。2位は麻生選手。3位は吉川選手。
2015年PNLランキングも確定しました。2015年PNL総合ランキング優勝は高杉選手。競技会でしか飛ぶ時間がないにもかかわらず、この成績は本当に凄い!強い!女子優勝は吉川選手。恒例となった涙の表彰台に、皆さん感動をいただきました。年間チャンピオン!おめでとうございます。
2016年は1月16,17日に開催される「第13回JPAパラグライダーカップ in 富士山」からスタートです。2016年PNLグランプリ対象大会でもあります。皆さんの参戦をお待ちしております!