第11回パラグライダーカップin富士山 大会レポート


大会レポート   大会競技委員長 扇澤 郁

冬のシーズンが始まってから素晴らしいフライトコンディションの続く朝霧高原でしたが、第一級の寒波が到来し、大会の成立が危ぶまれる天気予報の週末を迎えました。
大会当日早朝、いつものようにJPAの日下部さんが暗いうちから天気情報を入手し確認させてもらったところ、上空の風は弱く、日照は十分、気温減律良と3拍子揃った絶好のコンディションが期待できます。しかし明るくなって外を眺めると、外は雪景色となっており、期待と不安を抱えての朝となりました。

西富士友の会の離陸場をお借りして開会式を行う頃には、道路の積雪はすっかり消え大会の成立に期待が持てるようになりました。タスクコミッティーには地元ウイングキッス朝霧パラグライダー所属の藤川選手とベテランの正木選手が選出され、競技委員長の私を含めてさっそくタスクを考えます。クラウドベースが2200mアップを予想し決定されたタスクは、南は大倉ダム、北は朝霧高原パラグライダースクールのテイクオフ、沖だしに初めての試みで田貫湖入口の交差点と井の頭部落のNTTアンテナを用いた60km級で選手の半数のゴールを期待するものでした。


しかし、タスクが発表され選手はGPSへの入力を始めますが、駿河湾から入り込む南風は真っ白にもやった逆転層となり、また、毛無山のクラウドベースは山の中腹で停滞しいかにも渋そうな様相となりしばらくウエイティングを強いられます。

そして午前11時にウインドダミーのフライトを参考に、変更されたタスク内容は南下を天子南尾根まで、北は西富士砂防ダム、沖だしはNTTアンテナの40km。コンディションは渋そうな様相でしたが西富士友の会のテイクオフ前はもれなくサーマルヒットすることができ、選手は続々テイクオフしていきました。


コンディションはスタートするころに絶好となり、レースは10名ほどのトップグループを形成し展開していきました。1回目の沖だしNTTアンテナは大阪の竹尾選手が先頭でクリアーし井の頭エリアへリターン。取りついた位置はぎりぎり低かったもの良いサーマルをひっかけて一気に上昇。2番手は韓国から参加のムンソップ選手が竹尾選手の上昇をみて井の頭エリアへ。3番手は岡山の植田選手が次のターンポイントから遠くなるものの陣馬尾根へリターン。後続の選手たちはそれぞれの動きを見ながら2者選択でリターンしていきますがこの時間帯からはエリア全体が日陰となり南風の受けが良い陣馬尾根が正解。井の頭エリアで生き残りをかけた選手たちは粘りに粘りますが粘り切れずに着陸態勢となる選手が続出してしまいました。


その後花鳥山脈の東面は日当たりの悪い状態が続きましたが、リッジソアリングを行うためには十分な南風が吹き、じっくり稜線上まで高度を上げていくと西側のサーマルはしっかりと働いている条件の中、トップの竹尾を正木、隅が追いかける展開でレースは進みました。

女子はトップグループを形成していた栃木の吉川選手が残念ながら井の頭エリアへランディングしてしまう中、東京の宇野選手、石川の小森選手がキープハイで駒を進めゴールのYMCAへ向けファイナルグライドを切りました。特に小森選手はゴール目前の3時ごろに南西風が強く花鳥山脈に侵入し強烈なコンバージェンスの中、雲の間を縫うように潜り抜け、対地速度が一桁になることもある中会心のゴールとなりました。

最初から最後までトップを譲らず完璧なレースを展開した竹尾選手のコメントは「スタートからゴールまで始終行ける気がした」との、ポジティブなコメントでした。久々のトップゴールおめでとうございます。

最終ゴールは長野県の野呂選手。冬のホームエリアは朝霧ですが、こんなに頑張って飛んだことはなく、パラグライダーがますます楽しくなったとのコメントです。

女子優勝の宇野選手は、「十分に空を楽しめ良いタスクだった」とこちらもポジティブなマインドで余裕のゴールおめでとうございます。

渋いコンディションだったり、強烈すぎるコンディションだったり、主催者側の立場としてはいつもネガティブにものを考えてしまいますが、JPAの選手たちから前向きにタスクをこなす(みんなで決めた仕事を一生懸命こなす)姿を見せていただけたことで、この日は主催者冥利に尽きる一日となり感動させていただきました。

まかいの牧場で行われた歓迎レセプションは、ゴールを決めた選手をはじめ、悔しい思いをした選手も含めてレース展開を語り合う和やかな雰囲気で進みました。そして、昨年高嶺の大会で初舞台を踏んだ、「空ともパラグライダースクール演芸部」のモモクロ・・・・が披露され、宴会に花を添えました。彼女たちを含め、今大会は浜名湖パラグライダースクールのメンバーにテイクオフスタッフとして手伝っていただきました。いずれJPAナショナルリーグに参加してくる選手の卵たちとして、ベテランパイロットの素晴らしいフライトに感動していただけたことと思います。




大会2日目は、朝から強烈な北風が吹き残念ながらこの日の競技を実施することはできませんでした。


表彰
ナショナルリーグ総合
優勝 竹尾 雅行
準優勝 正木 晋
3位  隅 秀敏
4位  植田 真吾
5位  稲見 祐二
6位  藤川 稔


女子
優勝  宇野 登茂子
準優勝 小森 さちよ
3位  吉川 朋子
4位  星田 苗月
5位  田前 英代
6位  藤本 裕子


チーム戦
優勝  とちおとめ
準優勝 瀬戸内少年飛行団
3位  Team-C


毎年恒例となっているJPAナショナルリーグの第1戦目は、皆様の協力があり今年も成立しました。毎年グライダー性能がよくなり、飛行範囲が広くなっているパラグライダーです。今シーズンが始まったばかりですが、来年も参加選手の皆様と一緒になりよいタスクをこなしたいと思います。参加選手の皆様、ご協力いただいた皆様ありがとうございました。