| 大会レポート
白馬八方尾根Japan cup 2022
レポート 大会実行委員長代理:前堀善斗
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより2年連続で中止となってしまい、3年ぶりに開催させていただいた今大会。
コンディション、選手、スタッフ、その他すべての関係者の方々に恵まれて、2日間とも事故もなく素晴らしいレースが成立するという最高の結果となりました。
皆様ほんとうにありがとうございました。
2日間とも本当に見ごたえのある面白いレースでしたので、レース展開の詳細を多めにレポートさせていただきます。
1日目
毎週のように接近する台風にこの週末も心配でしたが、台風18号は悪影響をもたらすことなく、ほどよく高気圧に覆われて秋晴れとなりました。北アルプスの山々が選手たちを歓迎してくれています。
予報では地上付近から上空まで全体的に北風ベースでサーマルトップは2300m付近。心配なのは逆転層の影響。
3年ぶりの大会は運営システムが大幅に簡略化されており、多少戸惑いながらもその恩恵は絶大。選手受付~フライト監視~回収まで非常にスムーズです。
受付完了後の選手たちをすぐにゴンドラリフトへ送迎開始しましたが、ゴンドラ乗り場が予想以上の大混雑。
久しぶりの週末快晴予報でたくさんのお客様が押し寄せて、真夏の繁忙期を超えるほどの大行列で乗車まで約1時間。
しかし、苦労してたどり着いたテイクオフで待っていたのは絶景!行列のストレスも吹き飛びます。
選手の皆さんが、絶景と同じくらい(絶景以上に!?)気になるのは逆転層。テイクオフレベルにはっきりとした層が見えます。
コミッティーの皆さんは、この逆転層がブレイクするタイミングを見極めながら北風ベースの白馬エリアでのレースを最大限に楽しめるタスクを考えてくれます。
北風だと岩岳以北はリスクが大きいので、南側でのタスクとなりました。
発表されたタスクは、
「八方→さのさか→岩岳→さのさか→八方→さのさかゴール」
の40.4km。
心配していた逆転層ですが、10時半頃には最初のダミーが予想以上に良い上昇を見せてくれ、一気にレース開始に向かって動きだします。
ウィンドオープン11時、デパーチャーオープン11時45分。
選手の皆さん続々とテイクオフし、ほとんどの選手はスタート前には2400mオーバーで2500mを超えている選手もチラホラと。八方池と白馬三山をバックにたくさんのパラグライダーが飛ぶ絶景を堪能していただけたようです。
(敬称「選手」略)
スタートはテイクオフ(八方)と第1ターンポイント(さのさか)の中間に2kmシリンダーで設定されていたため、時間までに南側で高度が取れれば先行の可能性あり。この作戦を狙ったのが6番小野寺、30番青木、209番菊地。しかし、思ったように高度が取れず、八方で2500m付近まで上げ切ってダイレクトにさのさかを狙ってきた後続達に飲み込まれてしまいます。
さのさかリターン後の五竜でトップグループが形成されつつある中、11番田邊が単独で低く岩岳のターンポイントに先行。しかし、残念ながらこの作戦はハマらず八方でスタックすることになってしまい早くもトップ争いから脱落。
10数機で形成された先頭グループは八方でしっかりと高度を上げて岩岳を目指します。
いち早く抜け出したのは33番吉田と30番青木。若干遅れて4番中村、3番正木、7番伊澤、6番小野寺、5番吉川。
ここで、このレースの最初の見どころ。その他全選手が八方へ戻る中、岩岳リターンから沖周りでダイレクトに五竜を目指すルートを選択したのが7番伊澤、6番小野寺そしてそれを追う209番菊地の3選手。これが好判断となり、北東風の良いラインに乗り、先行していた33番吉田、30番青木と共に先頭集団を再形成。209番菊地は若干高度が足りずついていけない。
先頭がさのさかをリターンし、五竜で上げ直す流れの中で猛追してきたのが4番中村、遅れてしまったのが30番青木。
最後は、33番吉田、4番中村、6番小野寺、7番伊澤のデッドヒート。
今回のレースはここからの展開が2つ目の見どころ。
五竜から八方ターンポイント経由でのファイナルグライドに向かう高さの判断。最初に抜け出したのが33番吉田。その動きを見て追いかける7番伊澤、4番中村、6番小野寺。33番吉田7番伊澤がゴールへギリギリと思われる高度で八方リターンする中、中村が上手くラインを見極め100mほど高度のアドバンテージをゲット。少し遅れてさらに高く6番小野寺。先行する33番吉田と7番伊澤はアクセルを踏み込めず、上から4番中村がフルアクセルでESS手前500mほどでかわして見事トップゴール。続いて33番吉田、7番伊澤、そして6番小野寺は1歩及ばず1秒差で4番手。4位までの差は33秒。大混戦の見ごたえのあるゴールでした。
2分半遅れて26番竹尾、3番正木、女子トップは約3分遅れで5番吉川が7番手。
その後も多くの選手がゴールし、最終的には26名がゴール。
最終順位は、リードアウトポイントが効いて33番吉田選手がタスクトップでした。トップゴールの4番中村選手はレース全体での若干の遅れがひびいてしまい4位。
飛んでいる選手側も、見ている側も非常に楽しめる素晴らしいレースでした。
白馬八方尾根Japan Cup 2022
Task1 リザルト
ALL
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t1_all.pdf
女子
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t1_women.pdf
チーム戦
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t1_women.pdf
認証機クラス
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t1_uc.pdf
認証機クラス女子
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t1_uc_women.pdf
2日目
テイクオフ付近の気温減率があまり良くないことと、午前中の少し強めに吹きそうな南風が気になりつつも、白馬エリアを南北に最大限使えるタスクが期待できる予報。
しかし、テイクオフに上がってみると昨日よりも強固そうな逆転層。地上から立ち上る煙も完全に蓋されています。
そしてなによりも、南風が強い。逆転層による水平成分の増大だと思われますが、この南風がなかなか収まらず。”キャンセル”という最悪なシナリオも頭をよぎります。
テイクオフに自信のあるダミー3機が飛び立つと、やはり南風が強く前に出ない。そして空域は荒れ気味。それでも、上手く高度が取れれば2000mオーバーで五竜方面への移動も可能なコンディション。
逆転層のブレイクと共に南風が収まってくるのを待ちつつ、スタート時間は限界まで遅らせて、サーマルコンディションギリギリの13時。
14時半まではコンディションが持ってくれると予想して組まれたタスクは、
「八方→月夜棚→八方北尾根→さのさか→八方→さのさかゴール」
の29km。
八方エリアとしてはスタンダードなショートタスクの今日は変化球無しで真っ向勝負のレースです。
12時15分のウィンドオープン。選手の皆さん強い南風に苦労しながらもテイクオフ。自主キャンセルを悩む方も数名いらっしゃいましたが、最終的には全員テイクオフ。
上がってしまえば、南風が強いながらも上空のコンディションは良好でスタート時間にはトップ集団は2300mオーバー。一番高い選手は2600m以上。
スタート前にしっかりと高度を上げた先頭集団が10数機、TP1の月夜棚を取ってダイレクトに八方にリターン。この流れに乗った選手たちでのトップ争いとなりました。
TP1前後に五竜で上げなおしを余儀なくされた選手たちは、下層の渋く南風が強い空域に捕まってしまい大幅に時間ロス。
トップ集団はTP3さのさかに向かう中、焦らずキープハイで小遠見山から稜線上を進んでいった7番伊澤が1人高く上げ大きく高度アドバンテージを獲得し、そのまま独走で圧勝。
2番手争いは大混戦。さのさかリターン後も何機かが低く先行していきますが、コンディションはどんどん渋くなり、結局、五竜周辺の上げなおしで再び混戦。
その間にもサーマルはどんどん弱く、ゴールが遠くなっていきます。
最初に抜け出したのは8番稲見。八方南尾根経由で確実にゴールへ。
少し遅れて、4番中村、3番正木、5番吉川、18番天野、35番針生が追いかける。
その後も、この五竜混戦を抜け出した順にTP4八方を取ってゴールへ。
3番手争いを制したのは、4番中村。5番手の3番正木とは21秒差でした。
前日タスクトップの33番吉田は中盤からジワジワと離され、13番手ゴール。
南風が強いコンディションなので、TP4八方を離脱してゴールへ向かう高度が難しいかと思われましたが、サーマルの減衰とともに南風も収まり、思いのほか最後の八方で高度が取れなかった選手もゴールへ到達。
南風強風コンディション、さらに13時スタートというこのエリアでは異例の遅いスタート時間でしたが、やはりナショナルリーグのトップ選手たちの飛びは素晴らしく、14名ものゴール者が出る素晴らしいタスクとなりました。
白馬八方尾根Japan Cup 2022
TASK2リザルト
ALL
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t2_all.pdf
女子
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t2_women.pdf
チーム戦
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t2_team.pdf
認証機クラス
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t2_uc.pdf
認証機クラス女子
http://jpa.sakura.ne.jp/2022compe/happo/pnl_t2_uc_women.pdf
表彰
ナショナルリーグ総合
優勝 No.7 伊澤 光 NIVIUK ICEPEAK EVOX
準優勝 No.4 中村 浩希 OZONE ENZO3
第3位 No.3 正木 晋 NIVIUK ICEPEAK X-ONE
第4位 No.8 稲見 祐二 GINGLIDERS BOOMERANG12
第5位 No.5 吉川 朋子 OZONE ENZO3
第6位 No.6 小野寺久憲 GINGLIDERS BOOMERANG12
ナショナルリーグ女子
優勝 No.5 吉川 朋子 OZONE ENZO3
準優勝 No.12 吉原 紀子 OZONE ZENO2
第3位 No.25 岩崎 聖子 NIVIUK KLIMBER2P
ナショナルリーグチーム戦
優勝 Coops(正木、伊澤、三浦、岩崎)
準優勝 チームカンフー(小野寺、田邊、籾山、菊池)
第3位 瀬戸内少年飛行団(山本、稲見、山田、吉田)
ナショナルリーグ認証機クラス
優勝 No.23 中田 靖之 NIVIUK ARTIK5
準優勝 No.108 疋田 祥丈 NIVIUK ARTIK6
第3位 No.101 岩野おさむ ADVANCE SIGMA11
ナショナルリーグ認証機クラス女子
優勝 No.105 江草 幸子 ADVANCE SIGMA10
準優勝 No.106 千葉 恵 NIVIUK IKUMA2
第3位 No.117 山岸 里子 GINGLIDERS BONANZA2
まとめ
北風ベースの1日目、南風強風の2日目。天候に恵まれたとはいえ、どちらも非常にタスク設定の難しいコンディションでした。
そんな中、2日間とも絶妙なタスクを組んでくれたのがタスクコミッティーの正木選手と天野選手です。
セーフティーコミッティーの伊澤選手、稲見選手の的確なアドバイスや、その他多くの選手からの意見を積極的に取り入れる姿勢が、なんだか一体感があって良かったように感じます。
本当にありがとうございました。
当エリアでは、大会開催のために通常のスクール営業は完全にストップして、パイロットや講習生の皆さんにボランティアスタッフとしてご協力頂いております。
フライトに最高の季節での開催に、ご自身の飛びたい気持ちを抑えて、ご理解ご協力いただき本当にありがとうございました。
選手の皆様、素晴らしいフライトでした。なにより、事故なく皆さんが楽しく、閉会する事ができて良かったです。
白馬八方尾根エリアは季節によってさまざまな景色やコンディションが楽しめます。
ぜひ、大会以外でもフライトにお越しください。
最後に、当日現地までパトロールにお越しいただいた中部電力に方々、ご理解ご協力いただいた関係各所の皆様方、ありがとうございました。