| 大会レポート
2018しらたか ラ・フランスカップ
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構 成:藤野 光一
レポート:吉川 朋子
ここ白鷹を皮切りに白馬八方、高嶺、四国と続くナショナルリーグ後半戦が「しらたか ラ・フランスカップ」からスタートします。ナショナルの選手にとって、この白鷹での3日間は重要な意味を持つことになりますが、それも競技が成立すればこそ。既に数多くのタスクが成立し盛り上がっているチャレンジリーグとは違い、大会数も少ない中で着実に結果を出してリーグランキングに反映させたい選手にとって事前の天気予報は悪すぎました。
結果から言えば、そんなナショナル・チャレンジの選手にとって結果はどうあれ「3日間とも飛べた」と言うのは奇跡に近い話だったのかもしれません。あるいは、スーパー晴れ男やスーパー晴れ女がいたか、日ごろの行いが良い人がたくさん集まったからか・・・。
何れにしても、大方の予想を大きく裏切って連日の競技成立は参加した選手にとっては何よりのサプライズだったのではないでしょうか?
さて、そんな大会の模様について今回は、ナショナルリーグの吉川朋子さんにお願いしてレポートしていただきました。
1日目
エリアヘ着くと恒例の「まぁどんな」による美味しい朝食のおもてなし!
美味しくいただきながらも、気持ちは空へ向かいます。
空は更に暗くなり、ついに雨が!!!
こんなに降って今日はもうだめかという雰囲気も漂う中、「午後飛べるかもしれない」という植木大会実行委員長の言葉に望みをかけ、ウェイティング。
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開会式
昼頃ようやく空の隙間に日差しが見え、テイクオフ付近の駐車場も乾いたということで選手はテイクオフに移動。少しずつ気持ちも高まってきます。
風向きは若干フォロー気味。
それでも飛べることを期待して、ナショナルリーグのタスクは作業小屋や西黒森山などの湾内をまわって荒砥橋へ向かう26.4Kmが、チャレンジリーグもナショナル同様に湾内を周回する13.6Kmのタスクが発表されました。
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テイクオフは真っ白
チャレンジリーグTask1
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Window Open: 14:30
Start Open: 15:00
ナショナルリーグTask1
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Window Open: 14:30
Start Open: 15:00
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タスク発表
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ブリーフィング
テイクオフはフォローがやむタイミングで出る第1テイクオフか、風はいいけどちょっとまわりこむ第3テイクオフにわかれました。
コンディションはやっとステイできるか、できないか…という状況ですが、出てみないことにはわかりません。
タイミングをみながら選手は徐々にテイクオフしていきます。
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いくつかのガグリングができますが、どこも苦しい感じです。
そんな中を抜け出たのは正木選手と扇沢選手。多くの選手がごちゃごちゃいるガグリングの中でもこれだというサーマルをきっちりつかまえてあげていくのはさすがです。スタートをとり、西黒山に向かいます。
一方では少しずつ高度を落として新山平やランディングに降りる人たちもでてきます。なんとかレベルキープしていた選手も作業小屋の400mをとったところで若干の距離伸ばしをしたあとランディング…という感じ。
いそいそとリフライトにあがるも状況はかわりませんでした。
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結果は西黒山をとった扇沢選手が1位、正木選手も健闘したもののミニマムを超えられず、残り全員2位となりました。点数は残念ながら1位2点、2位1点と悲しいことに。(1000点満点です)
点差は1点!挽回のチャンスはみんなにあります。
チャレンジリーグの選手も果敢にテイクオフして行きますが、やはりタスクを周るには厳しすぎるコンディションに新山平がまるでメインランディングのように選手が吸い込まれて行きました。
結果、選手の健闘も空しくミニマムをクリアすることができずに初日のタスクは不成立となってしまいました。
夕方からはウェルカムパーティー!
激渋の状況ではありますが、やっぱり全員飛べたので気分はいいです。ウェルカムパーティも盛り上がり、最近恒例のブーメランズによるミニライブも開催。今回はなんと沢田研二(ジュリー)のバンドでドラムをやっていた方がドラムをしてくれることに!!
それを聞いただけでなんか演奏がプロっぽく感じてしまいます(笑)
楽しく飲んで食べて歌ったウェルカムパーティでした。
2日目
さて、この日の天気予報も微妙です。
前日の予報では、初日と違って風向きはいいものの日中曇り、雲底も低く、ちょっと強い予報。しかし当日になると風も弱まっていい感じ。しかも曇りが徐々にとれ青空が!!!
気分も高まり期待して受付後すぐにテイクオフにあがります。
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雲底は低いもののダミーは雲底につけて空中待機できる状況です。
ナショナルリーグのタスクは新山平をスタートして西黒山、漆山中学校5Kmシリンダーの後にメインランに帰ってくる30.7Km。
チャレンジリーグは作業小屋をスタートしてメインラン、狐越えの後1本松の1Km、西黒森山の1.5Km、白鷹神社を経て荒砥ゴールの18.9Kmとなりました。
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チャレンジリーグTask2
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Window Open: 10:45
Start Open: 11:30
ナショナルリーグTask2
D61-B04(SS:1Km)-B04-B10(1Km)-B32(5Km)-A41(ES:1Km)-A41
Window Open: 11:00
Start Open: 12:00
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チャレンジリーグの選手が続々とテイクオフして行く中で、アーリーバードを利用してナショナルの選手も混じってテイクオフ。雲低はテイクオフより100m程度の高いくらいですが、リフトはしっかりあるようです。時折沖へこぼれる選手も見受けられますが、雲低付近ではスタート待機の選手が徐々に溜まってきます。
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これに続いてナショナルの選手が続々とテイクオフしていきます。そして、雲中飛行にならないように気を付けながら、他機警戒を怠りなく高度とポジションを調整しながらスタートまでの時間を過ごします。
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スタート時間と同時に新山平をとって西黒山へ。
しかし、その間サーマルはなく低い高度でテイクオフに戻ってきます。ダントツの速さと高さで戻ってきた竹尾選手も徐々に高度を落としていきます。神社付近でガグリングを形成するもなかなかあがらずレベルキープが精一杯。スタート前は吸い上げがあって雲の中に入らないように調整していたのに、状況は一転して今やオーバーキャスト。めぼしいリフトは忽然と消え去ってしまったのです。
そんな中、先行選手たちが低くなるのを見てアクセルを緩めて高度維持を図った吉川選手はテイクオフに高めで戻ってきます。ほんの少しのリフトにしがみつきながら、少しずつ高度をあげていった吉川選手は雲底レベルについたところでしびれをきらして離脱。それを見た他の選手も遅れて次々に離脱していきますが、状況は決して良くありません。雲の下に来ても、日射が当たっているピークにすり寄ってもなかなかサーマルはありません。
吉川選手は西側の稜線を、扇沢選手は稜線わきの沖を、他の選手は中腹を、と散らばってサーマルを探すもなかなかありません。あまりギリギリまで粘ると沖に出るまでにも距離があり、また刈り取った田んぼはまだ少なくかなり限られているので、常に選択を迫られるサバイバルゲームです。
途中レベルキープでスタックしている吉川選手のところに扇沢選手、中島義雅選手、竹尾選手が合流し4人の先頭集団を形成、扇沢さんが集団をリードして少しずつコマを進めますが、南風も入ってきて状況はさらに厳しくなります。扇沢選手はターンポイント付近の稜線に近づくものの、期待したリフトはなく沖に向かって山並みを離脱。後を追ってきていた中島義雅選手と吉川選手もこれ以上は攻められないと判断し沖のリフトを期待して山並みを離脱していきます。
一方その後で弱いリフトをきっちり上げ切り高度を獲得した竹尾選手は、ターンポイントに向かってコマを進めます。同じ頃少し後方の1本東側の稜線の上にある黒い雲にしっかりつけてあげている佐々木選手、小田選手、田前英代選手、佐藤選手、星田選手もターンポイントに向かいます。竹尾選手はなんとかターンポイントの稜線に付け弱いリフトを利用して遂にターンポイントをゲット。その後地形と風の流れを読み、苦しいながらも少しづつリターンし、ただ一人ゴールすることに成功します。見事なフライトでした。
結果、タスク2の1位はもちろん竹尾選手。2位は佐々木選手、3位は佐藤選手。女子1位は総合でも5位の星田苗月選手でした。
チャレンジリーグも決して良いとは言えないコンディションの中、我慢を強いられる戦いを繰り広げていました。前半は多くの選手が降りてしまう中で最も距離を伸ばしたのが飯塚選手。しかし、何故か仕事の予定を入れていた飯塚選手はリフライトできずにお客様先へ。
勝負はリフライトへ移り、13時を過ぎた湾内には日射も戻り午前中よりも高度が取れる状況になっていました。これを利用して着実にタスクを周る選手がファイナルグライドに入るも、南風が影響して届くはずの荒砥ゴールにあとわずかで無情のライディング。松岡選手も斎藤選手も疋田選手も。そして、唯一ESSをカットしてゴールできそうと本部でモニターしていたスタッフが思わず「ああっ・・・」と声を上げた惜しいフライトが谷藤選手でした。ゴールシリンダーまであと300mだったのです。本当に惜しい!!この日は、予想された北寄りの風ではなく南寄りの風で荒砥ゴールが遠くなってしまったのです。
結果、1位はほぼゴールの谷藤幸子選手。2位は疋田選手、3位は斎藤選手。女子1位は総合でもトップの谷藤選手でした。
本部へ戻るとプロ並みの美味しさを誇るピザがお出迎え!!
今日も渋いとはいえ、予報を良い方に裏切る天気で飛べて大満足の1日でした。
3日目
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今日も予報はよくありません。明け方までしとしと雨が降り続いてました。風向きはまぁまぁだけど強くなる予報。
今日はどうかなぁ~と思いながらも、好転を期待してテイクオフへあがります。
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テイクオフにあがると景色は真っ白です。昨日の雨の影響で日が差すとすぐに雲が湧き出ます。
雲があがるのを期待してタスクは発表されます。
ナショナルリーグのタスクは、スタートが初日と同じ作業小屋、その後西黒山の手前と電波塔跡地を行ったり来たりして最後は荒砥橋ゴールの31.4Km。
チャレンジリーグも作業小屋をスタートしメインラン、狐越え、一本松の1.5Km、西黒森の1.7Kmの後に荒砥ゴールの16.2Km。
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チャレンジリーグTask3
D61-B12(ES:1Km)-B12-A41-B14-B06(1.5Km)-B10(1.7Km)-A43(ES:1Km)-A43
Window Open: 11:00
Start Open: 11:30
ナショナルリーグTask3
D61-B12(SS:1Km)-B12-A46(15.5Km)-B09-A46(15.5Km)-B09-A46(15.5Km)-A43(ES:1Km)-A43
Window Open: 11:15
Start Open: 11:45
ウィンドオープンの時間が近づくもののあまりコンディションはよくありません。新山平付近でステイしている機体が心もち上がったのをみて、次々に選手はテイクオフします。
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が、状況は非常に厳しくチャレンジの選手とナショナルの選手がガグリングにごちゃまぜで混沌とした状況に…。
そんな中、扇沢選手と中村選手は抜け出て神社付近の上空で高度を高くキープしています。ゲートオープンの時間になりスタートに向かうものの厳しい状況は何一つ変わりません。そのまま西黒山方面に向かう機体とテイクオフで上げ直して向かうグループにわかれます。テイクオフで上げなおしといっても、なかなか上がりません。
少しずつ高度を獲得した選手が西黒山方面に向かいますが、リターンはかなり低くなっています。ランディングしてしまう選手もちらほらいます。西黒山方面からのリターン組もテイクオフに戻ってきましたがなかなか状況は好転しません。
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そんな中、正木選手とリフライトの選手とが新たなガグリングを形成し一段上の高度を獲得。正木選手は対岸の電波塔跡地に向かいます。電波塔跡地をとったあと日射が当たっていたパレス方面にリフトを期待していくも期待したリフトはなく無念のランディング。
少しずつ選手がいなくなる中で、テイクオフ付近には関根睦選手と岡本洋子選手と吉川選手の3名のみとなりました。リフトを探すもののほとんどありません。待っても待ってもレベルキープも厳しい状況に。徐々に高度も下がっていきます。日差しは一切なくまわりは暗い状況です。
これ以上の好転は待ってもないと判断し、吉川選手が対岸に向かって離脱すると、関根選手と岡本選手も続いて離脱していきます。途中「ピッ」と一瞬バリオがなっても回すほどのリフトは全然ありません。
なんとか吉川選手と関根選手はポイントをとって少しベストポジションをとったあと谷間の田んぼ跡地にランディング。
結果、なんとタスク3のタスクトップを吉川選手と関根睦選手の女性2人がとることに!!
僅差で正木選手が3位、ギリギリまで頑張ってポイントまであと少しだった岡本洋子選手が4位でした。
(点数は全然ありませんでしたが)
チャレンジリーグの選手も果敢にテイクオフして行きますが、作業小屋を取ってテイクオフ前に戻ると低いところから上げ直さなければなりません。が、簡単に上げ直せるようなサーマルはなく、ステイも叶わずランディング。そしてリフライトへ。
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もともと西風が強く入る予報でしたが、長井辺りから回り込んできたのか南寄りの風が強まることによって、スタートの作業小屋を取ることさえ困難になり、さらには雲がエリア全体を覆ってしまい万事休す。追い打ちをかけるように小雨まで降ってきたために、チャレンジリーグを含めたレースは事実上終了しました。
チャレンジリーグはミニマム距離を超えた選手がいないために残念ながら不成立となりました。
結果
「2018しらたか ラ・フランスカップ」は、競技日程の3日間とも飛ぶことができました。雨マークの並ぶ天気予報を見ながら
「白鷹では大鍋の芋煮を食べに行こう!」
とか、それぞれに予定を立てていた選手には逆に気の毒?でしたが、パラグライダーの大会は飛べてナンボです。ホントに飛べて良かった。
チャレンジリーグは2日目の結果が総合成績となりました。ゴールシリンダーまであと300mと大健闘した谷藤幸子選手が総合、女子ともに優勝となりました。チーム戦では「今井浜」が強さを発揮しての優勝となりました。
ナショナルリーグは内容はともかく3本のタスクが成立しました。総合優勝は2日目にただ一人ゴールを決めた竹尾選手でした。女子優勝はTask3で巻き返した吉川朋子選手。チーム戦は「Comta会」が優勝となりました。
チャレンジリーグ総合
優勝 517谷藤 幸子 Advance-Sigma10
準優勝 536疋田 祥丈 Advance-Iota
3位 504斎藤 光秋 Gingliders-Explorer
4位 503松岡 茂 Nova-Mentor5
5位 526飯塚 宏祐 Nova-Mentor4
6位 502岩野おさむ Advance-Iota2
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チャレンジリーグ女子
優勝 517谷藤 幸子 Advance-Sigma10
チャレンジリーグチーム戦
優勝 チーム今井浜(谷藤、斎藤、岩野)
2位 中村門下生(疋田、松岡、井出)
3位 コンタ君(飯塚、阿部、東)
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チャレンジリーグオープン
優勝 333田邊 万作 Niviuk-ICEPEAK7
ナショナルリーグ総合
優勝 25竹尾 雅行 Ozone-ENZO3
準優勝 204佐々木祥吾 Niviuk-ICEPEAK6
3位 7佐藤 辰美 Ozone-ENZO3
4位 200小田 雅也 Gingliders-Carrera+
5位 206岩崎 幸教 Gingliders-Boomerang GTO2
6位 8吉川 朋子 Ozone-ZENO
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ナショナルリーグ女子
優勝 8吉川 朋子 Ozone-ZENO
2位 38星田 苗月 Ozone-ZENO
3位 70関根 睦 Ozone-LM6
4位 29吉原 紀子 Ozone-ZENO
5位 48岩崎 聡子 Niviuk-KLIMBER P
6位 20小森さちよ Ozone-ZENO
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ナショナルリーグチーム戦
優勝 Comta会(正木、中島、岩崎)
準優勝 とちおとめ(中村、吉川、吉原、竹田、田村)
3位 チームドラゴン(星田真一、星田苗月、佐藤、矢野)
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特別賞
503松岡 茂 (遠く山口県から参加していただきました)
562井出 大貴 (福井県から参加してくれた福井県立大学の学生さん)
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大会を振り返ると、3日間ともたくさん飛べ、美味しいおもてなしもたくさんあった大満足の3日間でした。これもすべて、コンディションの好転をあきらめず信じて行動した大会本部、たくさんの準備とサポートと美味しいおもてなしをしてくれたスタッフみなさんのおかげです。
本当にありがとうございました。これを活かして残りの後半戦に挑みたいと思います。