2011PNL第7戦 2011立山らいちょうバレーカップ

2011立山らいちょうバレーカップ 大会レポート
レポート:藤野 光一

プロローグ

「大会前は条件が良い・・・」。昔からよく言われることですが、今回もこの言葉どおりになりました。時期としては遅すぎる太平洋高気圧の張り出しに大会前の数日は夏を思わせる天候ながらも好条件が続いていました。週間予報では当初大会日程3日間は概ね晴れベースであったはずが、台風の発生や太平洋高気圧の後退が予想されて最悪の雨予報へ。大会前日の16日は高気圧縁辺の南風だったものの、昼前から場の風とのコンバージェンスによってエリア内は2000mまで上昇出来るコンディションになり、早めに立山入りをしていた選手にとっては良いプレゼントとなったのですが。

9月17日 大会初日

大会初日は朝から雨。それでも予定通り7時30分から選手受付。9時からは場所を山野スポーツセンターに移しての開会式へと進みます。開会式では、JMB立山パラグライダースクール校長で今大会の実行委員長である関沢氏による開会の挨拶の後、「JPA日本グランプリ」大会として昨年の勝者から優勝カップの返還を受ける「優勝杯返還式」も行なわれました。昨年の勝者にはレプリカが贈られました。天候が思わしくない状況なので初日の競技はキャンセルとなり、16時からのバーベキューパーティーの案内を行なって開会式は終了しました。
空き時間を利用して、先頃開催された「PWCスペイン」に参加した正木選手、伊藤選手、青木選手から世界で戦った感想や、今後どのように取り組むべきか?などを交えた話を聞くことが出来ました。
その後もRedBull X-Alps2011に参加された扇澤選手や松原選手の話も聞くことが出来、有意義な午前中の過ごし方になったのではないかと思います。
16時からは予定どおり立山山麓家族旅行村においてバーベキューパーティーが行なわれ、みなさんそれぞれに楽しんでおられたのではないか?と思います。
この時点で18日の天気予報に晴れマークが出現し、風向きが懸念されるものの飛べる可能性が出てきたことにより、選手はさらに盛り上がったのでした。

9月18日 大会2日目

朝から陽射しも眩しいほどの天気。昨日の状況からは考えられない劇的な変化ですが、上空と地上の風は立山ではフォローになる南の強風。気温も上昇して暑い中を、短いサイクルでウェイティングすることになりました。予想では、昼過ぎから北西風が進入して飛べる状況が見込めるのですが、朝の段階ではゴンドラも止まる程の強風が吹く中ではやや信じ難い予想に思えます。しかし、大会前日も概ね似たような状況で飛べていることを考慮すると、ある程度信憑性もあるため好転を「信じて」の待ちとなりました。
9時、10時とウェイティング時間が延長されて行きますが、なかなか良い兆しを見せない立山の空に大会スタッフはやきもきする時間を過ごすことになりましたが、10時を過ぎる頃から風が落ち始めました。そして山頂へ状況確認に先発したスタッフからは「風が弱まって風向きも変わり始めている」との連絡が入り、選手達がテイクオフへ移動を開始したのです。12時には全選手が極楽坂テイクオフに集合してブリーフィングへと進みます。ナショナルリーグのタスクは湾内を周回した後から美女平、対岸、テイクオフへと戻して再び美女平を周りグラウンドゴールの34Km。チャレンジリーグは稜線を東西にアウトアンドリターンを基本とする20Km。ダミーの状況を見つつ準備に入りますが、エリアのファーストサーマルポイントである金山の上がりが悪いことから、ナショナルリーグのみタスク変更。いきなり美女平の1Kmシリンダーをスタートし、後は対岸にあるA55(緊急ランディングポイント)との間を3往復する32Km。基本的にエリア側は使わない設定となりました。
ナショナルリーグは13時10分にウィンドウオープン、13時30分に空中一斉スタートのレース。広いテイクオフのおかげで60余名の選手は10分余りでテイクオフし、雲低2000mへ続くガーグルを形成したのです。一方、チャレンジリーグもナショナルの選手が出た後で全員がセットアップし、グラウンド一斉スタートのレースとなりました。

スタート時間の13時30分前には、美女平の1Kmシリンダーへ向けてグライドを開始する選手によって機体が列を成し、いかにもレースと言った状況を見せてくれました。美女平から対岸のA55までをワングライドでこなした選手を待っていたのは上がりの悪い、やや荒れたサーマル。集団を形成して協力しながら上げるものの楽に移動出来る高さにはならず、低く移動する選手も多く見受けられました。同様に、美女平もサーマルが活発とは言えず、ナショナルの選手にとっては苦しいレースを強いられる結果となりました。
チャレンジリーグは全く逆の展開となりました。ナショナルの選手が対岸と美女平を使うタスクになったため、エリア側は完全にチャレンジリーグの貸切状態。しかも一旦1500mあたりまで上げてしまえばそれ程落ちないコンディションで、20Kmのタスクでは物足りなかったのではないか?と思える程に、選手は高く移動してほぼ全員がゴールメイクする結果となりました。
立山信仰で有名な立山エリアは、極楽坂や弥陀ヶ原、浄土山などの地名や山名が多いのが特徴ですから、エリア側が天国で対岸から美女平は地獄だったと言うのはあながち間違った形容ではないと言えるでしょう。ナショナルの選手は奮闘努力したもののゴール者はなく、トップは小幡選手の25Km。殆どの選手は2回目のA55か、その手前までと言った状況でした。
そうは言っても、もともと3日間の天気予報は雨ベースだったのですから、飛べるだけでも儲けモノ。レースが出来たのですから上出来では・・・と思っております。ナショナルの選手は普段あまり飛べない美女平や対岸を、チャレンジの選手は立山エリア(湾内)を十分堪能していただけたものと自負しております。

9月19日 大会3日目

朝早いうちは陽射しもあって青空も見えていましたが、対岸や富山市内の平野部では低い雲に覆われて降水もある状況。7時30分の受付時点で競技キャンセルを発表し、9時から閉会式となりました。
閉会式の前に、JPA競技事業部主催の選手ミーティングを開催。来年のリーグ戦における機体のレギュレーションの話やルールについて説明がありました。その後は表彰式へと移り、チャレンジリーグの優勝は西条公啓選手、準優勝が大賀靖子選手、3位が杉岡洋選手。女子の部優勝は大賀靖子選手、準優勝が岩崎聖子選手、3位が熊谷郁子選手でした。チーム戦は優勝が丹波惣菜店チーム、2位が元祖・丹波惣菜店チームでした。
ナショナルリーグの総合優勝は小幡洋三選手、準優勝が廣川靖晃選手、3位が増子友美選手。シリアルクラスでは優勝が高橋苗月選手、準優勝が清水博司選手、3位が藤川裕美選手。女子の部優勝は増子友美選手、準優勝が高橋苗月選手、3位が水沼典子選手、チーム戦は優勝がスカイダンシングチーム、準優勝が碧きWingKidsチーム、3位がノリコトソノタチームでした。

閉会式が終わる頃にはエリア全体が低い雲に覆われて雨も降る天候になりましたが、無事に大会を終えることが出来ました。また、今回は1本のみの成立となり「日本グランプリ」としては不成立となってしまいましたが、大会に参加いただいた選手の皆さんはもちろん、大会を支えてくれた多くのスタッフの方々にもこの場を借りて御礼を申し上げます。
来年も開催する予定ですので、ぜひ多くの皆さんに立山の空を楽しんでいただきたいと思っております。来年も多くの選手の参加をお待ちしております。