2018立山らいちょうバレーカップ・チャレンジ立山


競技委員長:藤野 光一


昨年はゴンドラの故障で急遽開催中止となってしまった立山らいちょうバレーカップ。参加を予定していた選手の方々には大変申し訳ないことになってしまいましたが、幸いにも昨年夏から極楽坂スキー場のビスタクワッドリフト、第3ペアリフトが運行していただけることになり、今年は2年ぶりに大会を開催できることになりました。
天気予報も晴れベースで大会開催を歓迎してくれているようで、2日間が楽しみでした。


大会初日


朝から快晴…の予定が、何故か高層雲が張って日差しを和らげる(この場合は妨げると言った方が良いか?)状況は想定外でしたが、多くのナショナルリーグ、チャレンジリーグの選手が立山エリアに集いました。



従来ですと、受付を済ませた選手はゴンドラに乗って極楽坂テイクオフへ移動してもらうのですが、今回からは選手各自で極楽坂スキー場へ移動していただき、そこからリフト2本に乗って極楽坂テイクオフへ移動する経路になりました。極楽坂スキー場までは車で移動する選手、徒歩で移動する選手など様々でしたが、みなさん開会式の時間までにテイクオフへ集合していただけました。


クワッドリフトでテイクオフへ


高層雲が張ってます


選手の機体が広がる風景


9時30分より極楽坂テイクオフにおいて開会式が行われました。
大会委員長であるJMB立山パラグライダースクールの関沢校長の挨拶に始まり、北陸電力様による高圧送電線に関する注意事項が伝えられました。2年ぶりではあったものの、テイクオフに選手の機体が広がる光景はいつ見ても大会ムードを盛り上げてくれます。


大会委員長


競技委員長


北陸電力様


開会式の後はすぐにジェネラルブリーフィングに入り、各リーグのコミッティーの承認と、ルールや諸注意などを伝達した後、高層雲によりコンディションが整うまでには時間がかかることが想定されるため、タスクコミッティーによる協議を行った後に改めてブリーフィングを行うこととして一旦待機となりました。


ブリーフィング


また、2年ぶりの開催と言うこともあり立山エリアが初めてと言う選手のために、競技委員長自らがエリアの注意点や飛び方などのレクチャーを行いました。
中には初めてではない方もかなり混じっていましたが、初めての方にもそうでない方にも概ね好評だったようです。


エリア攻略セミナー?


タスクコミッティーとの協議では、ベースとなるタスクをそれぞれ決定しておき、実際のコンディションに合わせてシリンダー径で距離や難易度を調整する方向とし、ナショナル44Km、チャレンジは21Kmのタスクをベースにすることになりました。


タスクコミッティー





待てどもなかなか好転してくれないコンディション。再度タスクコミッティーを集めて協議をした結果、ナショナルリーグはベースタスクのシリンダーを一部変更しての40.7Km。チャレンジリーグはタスクそのものを変更した16Kmとし、正式に発表しました。


ナショナルリーグタスクボード


D92-B06(SSS:1Km)-B06-B04-B09-B17-B12-B13(1.5Km)-B12-B10-B12-B13-A72(ESS:1Km)-A72


チャレンジリーグタスクボード


D92-B03(SSS:600m)-B03-B02-D91-B04-B02-B05-B30-B5-B13-A72(ESS:1Km)-A72


ナショナルリーグは12時20分ウィンドウオープンで13時にスタート。チャレンジリーグは13時ウィンドウオープンで13時30分にスタートです。
今年から試行錯誤しながら運用しているオーダーランチとアーリーバードによって、選手はスムーズにテイクオフして行きます。タスクブリーフィングを終える頃から徐々にテイクオフにもブローが吹き付けるようになり、ナショナルリーグの選手が全員テイクオフしたのはウィンドウオープンから12分後でした。スムーズなテイクオフに感謝します。






日射はあれどもサーマルは乏しいと言う状況に、ファーストサーマルポイントの金山周辺はナショナルリーグの選手がひしめき合う状況になっています。サーマルトップはどう見てもテイクオフレベルの1100m弱。レースには厳しいコンディションが容易に想像できました。




先頭を切ってスタート時間少し前にB06へ向かったのは13稲見選手。金山離脱高度は1070mくらいですから、普段立山で飛んでいる私たち地元からすれば「あり得ない」高さでのスタート。しかし、それ以上の高度が取れなければ先に進むしかないのが競技と言うもの。それに引きずられるように他の選手も次々と低い高度でスタートして行きます。

スタートを切りB06をクリアした13稲見選手はそのままB04へ。他の選手も追随します。意外に沈まないのか機体がよく飛ぶのか、低いながらもB04を何とかクリアした選手たちは亀谷温泉付近の尾根で弱いリフトにしがみつく展開で、さぞや監視スタッフは胃が痛い思いをしたのではないでしょうか?
やはり序盤から低く走らざるを得ない状況では、数名の選手が緊急ランディングにこぼれています。本来ならばそうなる高度なのです。しかし、そうなる高度しか与えられない選手にとっては「無い袖は振れない」ので、やはり前に進むしかないのです。サーマルトップが1100m程度では、B04の次のB09瀬戸蔵山を攻略する高度を完全に割ってしまっています。しかも生き残った選手たちにはさらに試練が。金山付近で上がらず下がらずのステイを続けることを余儀なくされ、いわゆる「金縛り」状態に。それでも高度が取れた選手から意を決してB09に向かうも、テイクオフとせいぜい同等か低い高度で私たちテイクオフスタッフの前を通過するのがやっとの状況なので、B09のシリンダーは遥か高見で、ベストポジションを見切ってメインランディングへ帰るしか取るべき選択肢はなかったようです。

選手たちはただただ我慢のセンタリングを続け、一人また一人とB09へアタックするもシリンダーに入ることは叶わない状況が繰り返され、3扇澤選手がランディングした16時過ぎまでに条件が好転することはありませんでした。

このような状況であるため、チャレンジリーグの競技はキャンセルとさせていただきました。チャレンジリーグの選手のみなさんには申し訳ありませんでした。みなさんにはフライダウンしていただきました。

初日はナショナルリーグのみの競技となり、結果もB09瀬戸蔵へどれだけ近づけたか?が勝負となりました。


バーベキューパーティー


競技の後は立山恒例のバーベキューパーティー。立山山麓家族旅行村で行われたバーベキューでは肉やお酒はもちろんですが、今や大会のツアーバンドと化した「ブーメランズ」の演奏もあり、大いに盛り上がりました。 宿に帰ってもそれぞれが楽しい夜の時間を過ごされたようです。選手のみなさんは2日目の条件に期待を寄せて眠りについたのではないでしょうか?

(バーベキューパーティー写真提供:吉田和博氏)












大会2日目


大会2日目の朝は昨日と違って空はスッキリと晴れ渡っています。今日こそは良い条件…いや、贅沢は言いませんのでそこそこの条件で競技をやりたいものです。
午後からの曇りに対応するため、今日はスピーディーな展開が重要です。選手にもその点を伝えて対応できるように準備をしてもらいます。


受付


雲一つない快晴の朝


今日のコンディションは状況から見てそこそこ普通に上がるのではないか?と予想しています。選手のみなさんには、基本的に昨日のタスクをベースとして条件に応じてシリンダー径を変えて難易度を調整することを伝えて準備をしてもらいます。
タスクコミッティーとの協議では、シリンダー径を変更する条件を予め共有してダミーの様子を観察します。


タスクコミッティー





ダミーの上がりは順調で、今日は十分競技が可能であることが見て取れました。
サーマルも1500mくらいまでは上昇しているようで、ナショナルリーグのタスクも日本グランプリの成立要件を考え、昨日のタスクから少し難易度を上げるために1回目のB13を400mに変更。しかし、標高の高いB10大品山は1.5Km、B12小見小学校は1Kmに設定した38.4Kmに決定。

一方、チャレンジリーグは昨日キャンセルになったもののタスクはそのままで、沖だしのB02東屋のシリンダーを600mとした16Kmタスクで決定。



ナショナルリーグはウィンドウオープン10時30分、一斉スタートは11時。チャレンジリーグはウィンドウオープン10時45分、一斉スタートは11時30分と少し時間を長めに空けました。


D92-B06(SSS:1Km)-B06-B04-B09-B17-B12(1Km)-B13-B12(1Km)-B10(1.5Km)-B12(1Km)-B13-A72(ESS:1Km)-A72


D92-B03(SSS:600m)-B03-B02(600m)-D91-B04-B02(600m)-B05-B30-B05-B13-A72(ESS:1Km)-A72


今日は昨日以上にテイクオフにはやや強めにブローが吹き付けますが、選手たちはもろともせずにあっと言う間にテイクオフして行きます。






チャレンジリーグも10時45分のウィンドウオープンから続々とテイクオフして行きます。昨日はあまり飛べなかった分、スタート前の時間で十分なウォーミングアップをしてもらいます。











今日は金山周辺だけでなく、極楽坂テイクオフや展望台付近にも選手が待機しています。レースのムードが高まります。

ナショナルリーグでは、昨日に続き13稲見選手が先頭で引っ張りほぼ団子状態。コンディションもまずまずなので、軽くB06からB04を回って十分な高さで稜線に戻ったトップ集団は素早く高度を稼ぎ、昨日は遥か高見だったB09瀬戸蔵山へ。B09をクリアしたトップ集団は次のB17立山大橋へ一旦金山付近まで戻っての最短ルートで攻略する意図。ここでトップを走っていた3扇澤選手は金山手前からB17へ向かった26中島選手、25竹尾選手、13稲見選手よりも西側に進んでしまい、大きくコースを迂回した形となってしまいます。先の3名はダイレクトに次のB12小見小学校へ進みますが、高度ロスした3扇澤選手は一旦尾根に戻らざるを得ず出遅れてしまいます。

しかし、サーマルはここに来てやや低調でトップグループも上げるのに苦労している様子。なかなかB13美女平に渡る高度を獲得できない状況に業を煮やした26中島選手は、ほとんどテイクオフレベルで美女平へ向かい目論みどおりサーマルをヒットします。13稲見選手、25竹尾選手もこれに追随。セカンド集団も続きます。B13美女平では先行した26中島選手が先に高度を上げてB12への離脱をうかがう頃、出遅れた3扇澤選手はショートカットのために対岸を経由して美女平へ向かってきます。

対岸が使えると判断したのか、それほど高さのない1高杉選手が対岸へ向けて美女平を離脱。続くように13稲見選手が対岸ルートを選択します。しかし、25竹尾選手、26中島選手は美女平からまっすぐ西に進路を取り、エリア側のルートを選択。この4名がトップ集団として2つのルートからB12を目指すことになります。この時間帯はどちらのルートも期待されるほどのリフトもなく、高度を失いながらの厳しい局面となってしまったようで、みな低いところで苦しんでいます。そんな中で13稲見選手のみ上手くB12からエリア側の稜線に低いながらもたどり着き高度を回復、1人抜け出すことに成功します。

それ以外の先行組は大きくスタック。条件がやや好転して高度が取れるようになった美女平からエリア側ルートを選択したセカンド集団は、十分とは言えないまでも危なげなく金山周辺に到達して高度を上げ始めます。この時点でトップ集団だった1高杉選手、25竹尾選手、26中島選手が降りてしまうと言う番狂わせが発生。先行4名で生き残ったのは13稲見選手のみとなってしまいます。

後続を引き離し、トップを確実にした13稲見選手はB10大品山をクリア、最後のB12も危なげなくこなし、エリア主稜線で十分な高度を獲得してB13美女平へ向けてファイナルグライドへ。それに遅れること2分程度で4星田選手、49只野選手がもつれるようにゴール。

終わってみれば、気にかけていた曇り空が訪れる前に21名の選手がゴールメイクしたスピードレースとなり、日本グランプリも無事に成立となりました。やはり最大のポイントは最初のB13美女平のシリンダーを1500mから400mに変更したことでB12へのルートに選択肢ができ、結果的にその判断が勝敗を分けたと言えるでしょう。



一方、チャレンジリーグはナショナルに遅れること30分後の11時30分にスタート。なかなか上げるのが厳しいコンディションの中、最初の沖だしB02をクリアしたのは立山エリアをよく知るベテラン501中村選手。続いてオープン参加の地元立山324吉田選手。今年のチャレンジリーグを同じくオープン参加で盛り上げてくれている303谷藤選手の3名。ここで、B02を取って金山方面の尾根へ戻った501中村選手、303谷藤選手とは違い、地元の324吉田選手はダイレクトにD91展望台テイクオフをシリンダーギリギリの高さでクリア。トップへと躍り出たものの上げあぐねてB04へ向かう頃には再び501中村に抜かれてしまいます。

そして、密かにこの二人を追うのは同じく地元立山で今大会がデビュー戦となる535渡部選手。ここからは501中村選手がトップを引き535渡部選手、324吉田選手が続く展開のままB05ゴンドラ山頂駅へともつれこみます。

しかし、ここはベテランの501中村選手がやや低い高度ながらも先行して美女平へ離脱。続いて324吉田選手、いつの間にかしっかり先頭グループに追い付いてきた503松岡選手、504斎藤選手が美女平へ渡っていきます。
美女平に低く着いた501中村選手は間髪入れずにサーマルをヒットし上げ始めますが、その下を324吉田選手がゴールへ向けてファイナルグライドに入ります。そして見事にトップゴール。地元でオープンクラスの貫禄を見せてくれました。

チャレンジリーグ選手では、503松岡選手と504斎藤選手のまさにデッドヒートがESSまで続き、僅か9秒差で503松岡選手に軍配が上がりました。535渡部選手は上げあぐねたもののチャレンジリーグ4位でゴールメイクしデビューをゴールで飾りました。

チャレンジリーグも終わってみればオープンクラスを含めて16名がゴール。チャレンジだけだと8名がゴールし女性の524小名木選手も含まれています。

昨日は競技キャンセルでうっぷんがたまっていたかもしれないチャレンジの選手には、納得のレース内容だったのではないか?と思います。


表彰式・閉会式



ナショナルリーグ、チャレンジリーグ共に多くのゴール者を出しての競技成立となりました。また、ナショナルリーグは日本グランプリでもありましたが、こちらも堂々の成立です。


ナショナルリーグ総合


◆ナショナルリーグ総合

優 勝:13 稲見 祐二

準優勝: 4 星田 真一

第3位:49 只野正一郎

第4位: 6 隅  秀敏

第5位:16 関根  順

第6位:14 小林  宙


2018日本グランプリ覇者


2018日本グランプリ

13番 稲見 祐二


ナショナルリーグ女子


◆ナショナルリーグ女子

優 勝:38 星田 苗月

準優勝:23 片貝 月子

第3位:20 小森さちよ


2018日本グランプリ女子


2018日本グランプリ女子

38番 星田 苗月


ナショナルリーグ・チーム


◆ナショナルリーグ・チーム戦

優 勝:ぐぐっと群馬 (14小林宙・16関根順・70関根睦)

準優勝:とちおとめ  (5中村浩希・8吉川朋子・29吉原紀子・43竹田明彦・44田村昌久)

準優勝:チームドラゴン(4星田真一・7佐藤辰美・24矢野寛・38星田苗月・60青木翼)


チャレンジリーグ総合


◆チャレンジリーグ総合 

優 勝:503 松岡  茂 

準優勝:504 齊藤 光秋 

第3位:501 中村 裕昭 

第4位:535 渡部  祥

第5位:511 東   直

第6位:508 阿部 耕治


チャレンジリーグ女子


◆チャレンジリーグ女子

優 勝:524 小名木伸枝

準優勝:515 籾山久美子

第3位:517 谷藤 幸子


チャレンジリーグ チーム


◆ナショナルリーグ・チーム戦

優 勝:THE 西日本(511東直・529荒金正之・532武⽥憲⼆・535渡部祥)

※4チームのみのエントリーのため優勝チームのみ表彰


チャレンジリーグ オープン


◆チャレンジリーグオープン

優 勝:324 吉田 勝一

準優勝:303 谷藤 公明

第3位:322 伊藤 弘子


2年ぶりに開催することができた「2018立山らいちょうバレーカップ」と「2018チャレンジ立山」は、2日間ともに飛ぶことができました。2日目は、ある意味”立山らしい”コンディションで競技が成立したことは、大変喜ばしいことでした。参加いただいた選手、大会を支えてくれたスタッフのみなさまに感謝申し上げます。

来年もリフトが運行されれば大会を開催されると思いますので、ぜひ参加いただきますようお願い申し上げます。