| 大会レポート
奥越高原スプリングカップ2021
レポート 大会実行委員長:堀幸雄
競技内容補足 競技事業部:藤野光一
福井県大野市、勝山市一帯のことを奥越と表現します。
6月5日(土)、6日(日)にこの奥越高原で「JPAナショナルリーグ第3戦 奥越高原スプリングカップ2021」が開催されました。
この地でナショナルの大会が開催されるのは実に15年以上ぶり。2019年から関係各所と調整を行い、いよいよ開催発表となった昨年はコロナ禍。直前になって中止となってしまいましたので、「今年こそはなんとしても開催する!」という気持ちでした。
JPA競技事業部のご努力により、出来る限り非接触での運営。紙の書類提出なども廃しほとんどの手続きがWEB上、オンラインで行われるようになりました。大会本部もPC画面での作業がほとんど。まさにテレワークです。その分見た目的にはかなり簡素化された大会となりましたが、肝心の競技に関しては非常に飛びごたえのある濃い内容となりました。
DAY1
朝から日差しもある奥越高原。しかし、昨日降った雨の影響か周囲にはガスも垂れこめており、コンディションが整うのは昼過ぎになるのでは?との予想ながら、選手は明るい笑顔で受付を済ませて、各自乗り合わせてテイクオフのあるスキージャムへ移動です。
コロナ禍でもあり少数ながらもツワモノが集まった今回の大会は、15年ぶりのナショナルリーグと言うこともあり、奥越高原の空域を広く使った競技がどれくらい可能なのか?を改めて検証する実験的な要素も含まれています。この時期は、田んぼに水が入っているのでアウトランができる場所は限られます。また、奥越の山々は標高も高く急峻ですので当然ながらリスクはあります。それらを踏まえてナショナルリーガー達の技術によって安全で内容のある競技ができるのかが興味の尽きないところです。
この日の条件は渋めと予想。いきなり大きなタスクは難しいと判断したタスクコミッティーは、ジャム勝の湾内+αを東西に行き来したのちに六呂師スキー場にゴールする31Kmのゴールレースをセット。沖だしは最大で勝山大仏B41の2Kmと、これまでN2リーグを主として行ってきたタスクでは登場しないターンポイント。これもナショナルだからこそでしょう。山側もB98ファンタジーTOPの800mとなんとも微妙なシリンダー設定。
ウィンドウオープン10時45分。一斉スタート11時30分と発表されましたが、渋めの空域では選手の動きも鈍りがちです。11時ころからぼちぼちテイクオフし始めました。
この日の波乱はスタート直後に多くの選手が低くなり、上げ直せない選手がランディングにこぼれてしまうと言う事態から始まりました。空域は高層雲が張り、時折日射が巡ってくると言うトリッキーな状況の中、ジャム勝エリアとしては早めの11時30分スタートは大きな落とし穴でもありました。それでも、ランディングに足が付きそうな高さから粘り強くリフトを拾って復活する様は、さすがナショナル。技術と精神力の高さを感じます。
レースは4番中村選手、20番藤野選手が先行し、それを11番関根選手、23番田村選手らが追う展開で進みます。と言っても、移動よりも上げるのに時間を使うため、一旦手にしたリードもタイミングによってはすぐに失ってしまうような一進一退の試合展開。動きがあったのは、最初のB41を中村選手と藤野選手が取りに向かった時に起きました。先行した中村選手がシリンダー手前でリターンし、エリアへ戻っていきます。これを見た藤野選手は「ビビッて引き返したか?」と思ったとか。実はタスク設定ミスでシリンダーが大きかったとのこと。みなさん、タスクのチェックはしっかりしましょうね。
痛恨のミスをやらかした中村選手を置き去りにして、一躍単独トップに躍り出た藤野選手は「ジャム勝は午後から・・・」のとおり徐々に活発になってきたコンディションに乗り、順調にタスクをこなしていきます。
この日のタスクはB98も鬼門となりました。なかなか高度の上がらないコンディションでは、B98の800mシリンダーは厳しかった。低く突っ込む選手も見受けられ、監視しているスタッフはやきもきしたそう。
そんな状況の中、レースは着実に進行して最後の山場を迎えます。勝山大仏B41でファイナルグライドを切るために上げ直す藤野選手に11番関根選手、23番田村選手が追いつき、まさにファイナルグライド勝負となりました。
目線では届くかが微妙なゴールのある六呂師高原スキー場の駐車場。上げ直しながらも3人の駆け引きの中、藤野選手がギリギリと思われる高度でファイナルグライドを切ると、関根選手、田村選手が続きます。
結果、ギリギリの高度ながらもゴールに到達できた藤野選手がトップでゴール。続いて関根選手、田村選手の順となりました。
その後も211番小川選手、206番藤川選手、やらかした4番中村選手もゴールに飛び込み、最後に高くゴールに現れた212番中田選手で7名がゴールする素晴らしいレースになりました。
高層雲の張り出している時間が多くなかなか高度も取れない難しい条件でしたが、渋い時間帯を持ちこたえた選手たちのフライト技術に見学のフライヤーはみな感動ものでした。先頭集団のゴールは手に汗握るデッドヒート。最後の六呂師ゴールに届くかどうか、微妙な高度でしたので、みんなはらはらしながら応援していたそうです。
TASK1リザルトALL
TASK1リザルト女子
DAY2
2日目の朝は昨日と打って変わりドン曇りの様相。テンションの上がらない朝と言ってしまえばそれまでですが、気象データでは昨日よりも良くなると言う情報に「今日こそはゴール」と、選手は意気込んでジャム勝へ移動して行きます。
数値予報では昼前から午後2時過ぎまでが最も活発になるとのこと。そして、やはりジャム勝は午後からのエリア。昨日も結果的には尻上がりに良くなった。私もここで選手や競技委員長を何度も経験してきたので、このパターンは本当によくある(藤野談)。タスクコミッティーは、このデータとこれまでの実績を重視し、奥越高原を広く使った46Kmのタスクをセット。スタートはコンディションが揃うであろう12時30分に設定しました。
高層雲が空を覆う状況ながら、徐々に晴天域が訪れエリアが明るくなります。大会あるあるですが、ダミーが飛ぶといい感じです。今日はウィンドウオープンが11時30分。一斉スタートは12時30分です。が、ウィンドウオープンの頃になると高層雲の濃さも増し、渋そうなムードが漂います。しかし、出てしまえば十分浮いていられるコンディションで、スタート時間に向けて選手が次々とテイクオフして行きます。
この日もスタート後のリターンで上げ直せない選手がランディングしてしまう事態で始まりました。昨日よりも高く上がるとはいえ、TPは恐竜博物館の3Kmスタートののち2Kmシリンダーをカットしなければなりません。シリンダーは意外に遠く、目測を誤ったのか予定よりも低く帰ってしまった選手は途中で拾ったサーマルにしがみつく者、昨日同様ランディング間際から上げ直す者、残念ながら地に足を付けてしまう者に振り分けられてしまいました。
しかし、この苦境を乗り切った選手たちには素晴らしいサーマルと景観が待っていました。空を覆っていた高層雲も徐々に薄くなり、要所要所でサーマルのある展開にトップ集団のギヤが上がります。スタート後のリターンで抜け出した4番中村選手がトップで勝山城B31へ向かいますが、B98を取った後に南側の尾根からB31へ向かう48番扇澤選手と、ノーマルコースでB31へ向かう20番藤野選手が追撃。さらに後には9番稲見選手、13番吉川選手と続きます。勝山城から大仏付近で高度を上げた中村選手はジャム勝南側の尾根をそのまま東進してB98を伺います。扇澤選手、藤野選手もこれに続き、この後この3名がトップ集団を形成してレースを引く展開となりました。
B98付近の法恩寺山頂ではサーマルトップ1700m。ここで上げ切った3名はB55の8Kmへ。途中上げながらもなるべく山沿いにコースを取ってB55をリターン。この時、一番高度のあった藤野選手が稜線付近のコースを取ることができ、山側から高く法恩寺山へリターンに成功。扇澤選手、中村選手、吉川選手は六呂師スキー場付近で高度を上げてB44へダイレクトコースのショートカット。やや早くB44に到達した扇澤選手、中村選手に続き、藤野選手、吉川選手がB44をリターンしてレースは佳境を迎えます。B44から三頭山付近でサーマルにヒットした中村選手に扇澤選手、藤野選手も合流してESSのB55へ向けて高度を上げます。今回のレースはB55でタイム計測が終わるので、その後はゆっくり高度を稼いで六呂師スキー場へゴールすればよい訳です。
勝負の場面では意志の強さが求められます。どう考えてもリスクのある高度でグライドしたのはやはり扇澤選手でした。藤野選手や中村選手よりも100mは低いであろう高度で、それこそ迷いなく真っすぐにB55のESSへグライドしたのです。ESSをカットしてもゴールできなければ意味がありません。山よりのコースを進む中村選手、扇澤選手を追随している藤野選手も徐々に怖気づいて山側へシフト。扇澤選手は最後まで一直線でESSをトップでカット。高度は650mと対地高度は300m余り。後で聞いたら「ゴール南側の山影(リーサイド)で絶対サーマルがある」と思って進んだそうです。恐れ入りました。
2番手で中村選手、3番手に藤野選手がESSをカットし、おのおの高度を上げてゴールメイク。
この後も好条件に支えられて続々とゴールに選手が現れました。結果的には10名がゴールし大成功のレースとなりました。
一時高層雲に阻まれ苦しい時間帯があったものの、時間を追うごとに良くなる中、半数以上の選手がゴール。
今までスキージャム勝山エリアは飛んだことがある選手たちも、今回初めて眼下に見る六呂師高原の牧歌的雰囲気や荒島岳の雄大さに感激もひとしおだったようです。
TASK2リザルトALL
TASK2リザルト女子
様々なイベントが見合わされる状況の中、少しでも明るい未来に向けて一歩踏み出す気持ちでの開催でした。ご協力いただいた大野市、勝山市、スキージャム勝山、大会スタッフの皆様、当エリア会員様や学生のみんな、そしてこの状況でも諦めずにきていただいた選手の皆様に心より感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。
表彰
優勝 No.20 藤野 光一 NIVIUK ICEPEAK X-ONE
準優勝 No.4 中村 浩希 OZONE ENZO3
第3位 No.23 田村 昌久 NIVIUK ICEPEAK EVOX
優勝 No.13 吉川 朋子 OZONE ENZO3