開催地 :富山県富山市 立山山麓フライトエリア
主催:らいちょうバレーカップ大会実行委員会
レポート:藤野 光一
【プロローグ】
パラグライダー競技の歴史を刻む中で、ここ立山での大会は数多くの名勝負を生み出してきました。ただ、昨今のグライダー性能の進歩と選手の技術向上にともなってか、立山エリア内では空域が狭く感じられるのもまた事実。今年はチャレンジリーグ(チャレンジクラス)も併催され、総勢90余名の選手達が秋の立山に集い、熱い戦いを繰り広げたのでした。
9月18日(土)
大会前日は曇り時折雨と言う天候で準備がすすめられましたが、大会初日は朝から素晴らしい天気に恵まれました。昨年の大会から秋の連休(通称シルバーウィーク)に開催日程が変更されたこの大会では、常に秋の「台風」が心配されます。今回も天気図上に台風は描かれていますが、遥か南の台湾沖。この連休に関しては影響はないと見て、絶好のコンディションで大会の朝を迎えたのでした。
選手達は7時30分の受付を済ませると、その足でゴンドラに乗ってテイクオフのある極楽坂ゲレンデへ移動します。立山の大会では、テイクオフする場所を確保することが重要なポイントとなっており、選手にとって競技は既に始まっているのです。
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9時30分にはテイクオフにおいて開会式。今大会委員長のJMB立山パラグライダースクール校長関沢氏の挨拶に始まり、エリアの注意点が説明されました。その後はジェネラルブリーフィングに移行し、立山が初めての参加者も多いチャレンジクラスの選手にもエリア攻略のポイントなどが説明されました。
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今回は、ナショナルリーグは立山の対岸(常願寺川を挟んだ北側)のパイロンを含んだ谷全体を使ったタスクが、チャレンジクラスは通常のエリア内を中心としたタスクが用意されました。ナショナルのウィンドオープンは11時45分。デパーチャーオープン12時5分でエリアを一杯に使った三角パイロンを軸とした44.7Kmのエラップスタイムレース。時間と同時にセットアップされていた機体が次々と立ち上がり、エリア最初のサーマルポイントである金山ゲレンデへ向けて列をなす選手の群れは圧巻でしょう。立山ならではの光景と言えます。
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スタート時間が近づくにつれ、上空には雲が大きく厚くなり日射を遮ってしまいました。しかも雲低までもが下がり始める始末。それでも時間と共にタスクを回り始める選手は、時には雲を利用し、時には雲を避けて効率の良いコース取りで駒を進めますが、最初の沖出しであるB02から低く戻って上げ直せない選手は残念ながら脱落することになってしまいました。辛くも生き残った選手は美女平、対岸のレグへとさらに駒を進めますが、相変わらず雲が日射を遮ったままでは上げることよりも生き残ることが優先される展開となり、様子をみながらの超スローペースでタスクが進行しました。
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この頃チャレンジクラスもウィンドオープン。ナショナルに遅れること45分の12時30分に選手がテイクオフし、デパーチャーオープンは12時40分。タスクは26.3Km。しかし、チャレンジクラスが出始める頃にはエリア側の対流は失速気味に停滞し、ほとんどの選手がレースを始めることもままならぬままランディングしてしまったのでした。
チャレンジクラスの選手の動向から、エリア側が働いていないことを察知したナショナルの選手達は、対岸のB16パイロン上空で高度を確保しながらのウェイティング状態となりますが、13時を過ぎた頃から雲もようやく崩れ始め、エリア側にも弱いながらの対流が始まりました。この様子から高度のある選手の集団が常願寺川を渡って金山やB03パイロンのある稜線めがけて突っ込んできますが、コンディションはそれほど整ってはおらず、ナショナルの選手達はほぼ横一線の状態でランディングを余儀なくされたのでした。
競技と言うのは皮肉なもので、ナショナルの選手が全てランディングした後から行われたチャレンジクラスのリフライトでは、再びエリアを覆い始めた雲が良いリフト帯を作り出し、先ほどはスタートすら切れない状態だったのを、しっかりレースが出来る環境にしていたのです。
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しばらくは立山の空を賑わせてくれたチャレンジクラスの選手でしたが、ゴールが出来るほどの時間までは与えてくれず、15時30分頃には全ての選手がランディングし、競技が終了したのです。
競技後は、立山山麓家族旅行村でバーベキューが振る舞われ、選手は薄暗くなった立山の初日を堪能したのです。また、本日のトップ3も紹介され、ナショナルは22Kmを飛んだゼッケン30番の浅沼選手と、ゼッケン201番の廣川選手が同点で1位に、わずか100m差で20番小林選手、25番青木選手、34番伊藤選手、65番塚本選手が並ぶ結果となりました。
チャレンジクラスでも、ゼッケン502番の志水選手とゼッケン564番の中島選手が15.1Km
で同点1位。こちらも100m差で523番山本選手、545番土屋選手が同点3位と言う僅差の結果となりました。
2日目の予報は当初よりも好転したとの情報も入り、選手は明日のタスクに期待をかけて解散となりました。
9月19日(日)
今日も朝から天気は良いのですが、エリア全体が静穏な状況に包まれていました。それでも選手は昨日と同じく受付を済ませてテイクオフへ移動し、自分のポジションを確保して機体をセットするのです。
昨日のタスクでゴール者が出なかったこともあり、本日のタスクは難易度を下げたサービスタスク?があらかじめ選手に示されました。ナショナルは対岸を往復する32Km。チャレンジはエリア側のアウトアンドリターンを基本とした22Km。しかし、日差しがあっても一向に始まらない対流。ダミーも上昇することなくランディングへ消えていきます。待ちに待ってタスクをさらに変更(短縮)しレースを開始しようとした矢先に、空全体が黒く怪しい雲に覆われ、雨までパラつく状況になったため競技はキャンセルとなりました。
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9月20日(月)
最終日は雨音で目覚めることになりました。それでも、7時過ぎには雨も止んだのですが競技の可能性がないと言う判断でキャンセルとなり、10時からは表彰式と閉会式が行われました。
3日間の日程でタスクは1本のみの成立となり初日の結果での表彰となりました。不完全燃焼と言う印象は拭えませんが、厳しい気象条件の中でも精一杯飛んでくれた選手に感謝したいと思います。また、初めて開催されたチャレンジクラスですが、地元立山の選手が上位を占める結果となり、地の利を十分に生かしたフライトが結果に結びついたのだと思います。入賞された選手のみなさん、おめでとうございます。
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来年も立山エリアで選手のみなさんを楽しませる(苦しませる?)タスクを用意しているとのことですので、来年も秋の立山らいちょうバレーカップをよろしくお願いしたいと思います。
最後になりましたが、今大会をサポートしていただいた地元クラブやスタッフの皆様に感謝の意を表します。来年も、大会をサポートしていただけますようお願いする次第です。