JPA/PCL 第7戦 高嶺カップ2010 大会レポート

開催地 長野県平谷村高嶺山パラグライダーエリア
主催 JMB中部パラグライダースクール
レポート 鈴村恵司


【一日目 10月23日】


レースと名の付く競技なのだから競う相手は当然、自分以外の選手であるべきだ。しかしこのパラグライダー競技は時として(いや今年は“しばしば”か)気象条件そのものと戦わされる場合がある。そして今回の「高嶺カップ2010」に参加した選手も難しいコンディションとひたすら格闘することとなった。(一般向けには暴風雨でのゴルフ大会とでも説明すれば良いのかも。)


けっして悪いとは言えない天気予報のもと、オープンクラス:38名、チャレンジクラス:26名が長野県南部に位置する平谷村高嶺山エリアに集合した。5キロも西へ行けば岐阜県、10キロちょっと南下すれば愛知県、まさに長野県南部の地である。


選手を迎えるスタッフは「JMB中部とんびいず」のメンバの面々、そしてスクール間で親交の厚い愛知県のパラグライダースクール「スカイトライ」のメンバも合流している。


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朝からの雲の多い天候の中、テイクオフでの開会式、ゼネラルブリーフィングと大会運営は粛々と進行する。ソアラブルなコンディションが本当に訪れるのか、選手、スタッフ、共に気もそぞろといったところ。タスクコミッティは、昨年のタスクを基本にさらに安易にしたものを設定し“その時”が来るのをまった。昨年はオープンクラスで18名、チャレンジクラスで9名のゴール者が出ている。


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雲が薄くなり日射量が増した11時過ぎにTO前でウインドダミーがソアリングを始め、オープンクラスで11時30分のウィンドウオープン、12時00分のデパーチャーオープンのエラップスタイムレースが開始される。時間の経過とともによりソアラブルになって行くだろうとの予想でチャレンジクラスの時間設定はオープンクラスの20分遅れで設定されている。


そしていつものようにコンペティショングライダーを擁する強者達がレースを引っ張る。雲底待機に成功した数機が12時のデパーチャーオープンに合わせてスタートパイロンに向かってレースを始める。


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タスクはTOのある高嶺山側の三角パイロンを3周し、国道をまたぎLDのある桐山側の往復パイロンを3往復するもの。チャレンジは三角をサイズダウンし往復が2回。


トップグループが三角パイロンの2周目に入ったところで、先に述べた戦う相手が気象条件に入れ替わって行った。オーバーキャスト、雲量増、リフトがなくなる。グライダーの高度がどんどん落ちて行く。レースどころではない、飛ぶだけで精一杯だ、選手の声が聞こえてきそうだ。(但し、これは高嶺山側の話、実は桐山側はソアラブルな条件を維持していた。)


高嶺山側のグライダーが一掃されたあと、日射復活、セカンドステージ到来。リフライトを待ちかまえた選手がTO。しかし、30分程で再度オーバーキャスト。またもグライダーがいなくなる。


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1時30分を越え、三度目の日射条件が訪れサードステージが開幕、するといつの間にかブーメラン7、ブーメラン5、アイスピーク3が高嶺山の谷間でセンタリングを始めている。ファーストフライトで高嶺山から逃げて桐山側で空中待機していたまさに強者、小幡、薬師寺、藤川の3選手である。ここまでで、すでにあっぱれなのだが小幡選手はさらに高度を稼ぎ、駒を進め、ついには2時過ぎに本日唯一のゴール者となる。いわゆる渋い条件の中32キロを完走。驚異的な粘り、という表現は単に重さや、つらさに耐えているような静的な印象があり適正ではないように思える。わずかのリフトを感知し、細やかなグライダーコントロールを行い、瞬時に次の移動を判断する。きっとココロもカラダも精密機械のように動き続けていたに違いない。


オープンクラスのシリアル機では廣川選手がサードステージの条件を使って14キロを飛び、薬師寺選手をも越えた。


チャレンジクラスは、やはりサードステージをうまく使い切った宇野選手が12キロを飛んでタスクトップに輝いた。この人、今年、PNLにもスタッフとして現れる。どの大会でも見かける人だ。


オープン、チャレンジ両クラスとも、半数以上がミニマム距離を越えられなかった条件でありディクオリティはオープン:0.195、チャレンジ:0.125。選手全員に均等な条件が与えられた訳ではない故のGAP計算値。それぞれの勝者が手に入れた得点はわずかなものとなった。もちろんだからといってゴールの栄誉は損なわれるものではなく、むしろ際だって見える。


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夕方には、ベーシックセミナーを開催。JPAパラグライダー・レスキュー認定検定会の講師をつとめ、レキューBOOKの校正も手がけたフリークライマーの南裏健康氏を迎えての講演である。内容は、飛ぶ人としての覚悟についてから始まり、1990年のトランゴ・タワーの新ルートでのソロ完登、そこからのパラグライダーでの滑空経験。さらには世界のクライミング事情の紹介など、興味深い話を数多く頂くことが出来た。


そして夜の交流会。大会本部にも使用させて頂いているレストラン将軍を借り切ってのパーティ。今日の苦心、明日への期待、明日の天気、選手の話題は尽きない。


【二日目 10月24日】


まぁ要するに曇り空である。低気圧も近づいており雨の降り出しも懸念されるところ。まさかのワンチャンスが訪れることを期待して、今日の気象条件(南東風、強め)に合わせたタスクを設定して冷たい風の吹くテイクオフで待つ。雨雲レーダーでは雨雲は北に抜けているようであるが、気象安定でソアラブルになる兆候は見られない。


結局、10時20分にタスクをキャンセル。フリーフライト、送迎車、思い思いの方法での下山となった。実際、フリーフライトは、ほぼぶっ飛び。競技になる日ではなかった。


最後にフライトしたのは、小幡選手。なぜか南の尾根でセンタリングして高度を維持している。まったく、この人ときたら、である。


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雨の降り出しはまだ先のことと思って野外の表彰式を設定したら、開始直前に霧雨となった。やれやれ。


賞品は大会実行委員長である片桐校長、手ずからの“鳥のまるごと薫製”やら“とれたて野菜”やら“リンゴ”やら。さらにはシャンパンシャワーなんてイベントも。


来年も開催されるそうです。いい天気になるといいなぁ。


さて2010シーズンのJPAチャレンジリーグも大詰め、2週間後に宇都宮大会、まさにファイナルである。


PNL第6戦 2010栂池ジャパンカップ レポート

開催地 スカイワンダーランド栂池エリア
主催 栂池ジャパンカップ実行委員会
レポート 大澤行英





<プロローグ>


 毎年6月に開催されている栂池ジャパンカップ。今年はPWC白馬開催があったので、初めて10月の体育の日をからめた三連休で行われました。この時期の栂池は初冠雪も期待でき、山の高所では雪、中間では紅葉、下段では新緑の三つの色が楽しめる「三段紅葉」が有名です。


 2007年に日本グランプリが開催され、栂池エリアで2回目となる日本グランプリ。2004年から毎年ナショナル大会が開催されており、高い確率で成立しております。今年行われたPWCでは安曇野市三郷へのゴールも大成功をおさめ、新たな可能性を持った栂池ジャパンカップに80名もの選手が集いました。


 そのほかⅩ-白馬も同時開催され、栂池には熱いパイロットたちが集いました。


<10月9日>


 前日の8日の練習日にはたくさんのスタッフと10名以上の選手が集まり、準備とフリーフライトが出来ました。フリーフライトでは岩岳往復が出来ただけに、大会当日に限って雨…。非常に残念ですが、天気ばかりはしかたありません。


 しかし、選手たちは雨でもその時間を楽しむかのように、選手同士交流を深めていました。競技事業部宮田部長による三郷町ゴールへの説明を、今年行われたPWC白馬のトラックログを見ながら行われました。さらに半谷競技委員長より、地形を下見するべきだという指摘もあり、はじめてフライトに行く場所へ挑戦するパイロットに心構えが説明されました。三郷ゴールに現実味がおび出来た選手間では、闘争心が湧いてきたようです。


 主催者により用意された交流会でオードブルをご馳走になった後、選手たちは下見などで各々の時間を有効に使いました。





<10月10日>


 天気予報では雨予報で、フライトするモチベーションがやや沈み気味でしたが、朝の天気は晴れ間ものぞいていました。しかし、予報では明らかに前線が通過する心配がありました。一度はあきらめ、選手ミーティングを行っているさなか、雨雲レーダーから前線がなくなりました。さらに八方エリアからはフライトできるという情報が!10時テイクオフに上がることになりにわかに騒がしくなりました。


 11時過ぎ、選手全員がテイクオフに集まりましたが、先程の晴れ間はどこにもなく、霧のような雨が降っていました。雨はやむときもあるのですが、降ったりやんだりを繰り返します。さらに雨雲レーダーでは消えていた前線が現れました。このままテイクオフで待っていても競技で飛ぶどころかフリーフライトも出来なくなってしまうので、競技はキャンセルとし、希望者のみフリーフライトを楽しんでいただきました。


 下に降りて帰着を済ませた選手たちには、暖かいトン汁がふるまわれ、霧雨で冷えた選手の体を温めてくれました。


 二日間雨でしたが、明日の最終日は間違いなく良い予報です。近隣のエリアに飛びに行くなど、選手は準備に余念がありません。


  


<10月11日>


 早朝、雨が降っていて北風が強く予報とは違う天気に戸惑いましたが、雨がやみ期待していた通りの展開になっていきます。選手たちもそんな天気に心配と期待の表情で、受付の7時30分よりも早く集まり、受付前には早くも行列が出来ました。


 スタッフもそれに応え、選手は9時前には全員テイクオフに集まりました。しかし、テイクオフの視界を低いガスが覆い隠しています。それに気温が低くひんやりとします。選手たちはウエイティングには慣れている様子で冷えないように調整し長くなるウエイティングに備えます。


 最初のブリーフィングでは、気象データを参考に唯一ビッグタスクの可能性が大きいフライトコースが発表されました。テイクオフ→三郷ゴール、54km。ターンポイントはなし。スタートラインはゴールより45kmのビッグシリンダーで、八方と五竜との間に設定されました。あまりにもシンプルで大胆なタスクに選手からどよめきが起こりました。


 タスクを行う上での岩岳周辺の注意事項が説明され、あとはタイミングを待つだけとなりました。時間がたつにつれ、ガスが晴れ10時頃には視界が良くなりましたが、晴れ間がありません。11時を過ぎてようやく栂池エリアに日照が出て、ダミーがサーマルを捕えて上昇します。


 タスクコースは予定通り、D72テイクオフ→A64三郷ゴール54km、スタートラインはA64を中心とする45kmのシリンダーで、八方エリア付近で空中待機できるように設定。ゲートオープンは11時30分、デパーチャーオープン12時30分のエラップスタイムが発表されました。


 ゲートオープンからスタートまで一時間ありますが、栂池から八方まで通常30分ほどかかりますのでスタートに間に合うためには十分に時間があるとは言えません。ゲートオープン時には選手は急ピッチでセットを終え、次々とテイクオフしていきます。


 テイクオフしてすぐに200mほど上空の雲底にはたどり着くことは出来るのですが、栂池からスタートライン付近の八方までには7kmの距離があり、途中には難所の岩岳を越えなければなりません。岩岳へ低く突っ込んだ選手は大スタックを余儀なくされました。低くなったものは上げ直しがさらに難しく、リフライトのため栂池ランディングへ向かう選手も少なくありませんでした。


 そんな中、スタート時間までに30機ほどの選手が集まりました。多くの男性選手の中には女子の村上選手もいます。八方では雲底に着くまでには至らず、1600~1700mの高度でデパーチャータイムを待ちます。


 デパーチャー時刻2分前に2km手前から絶妙のタイミングで走ったのは高杉選手です。その他の選手はフライングしないよう1分前に2km先のスタートラインを目指します。先に行く高杉選手がスタックする間に、扇澤選手、小幡選手、宮田選手が加わり、そのすぐ後ろを大澤選手、稲見選手、長嶋選手、竹尾選手が追う展開となります。


 早い時間に五竜へ到達したグループはなんとか集団で高度を維持して佐野坂へと向かいますが、少しのタイミングの差で下降気流に阻まれる選手も多い中、女子の村上恭子選手、平間利恵選手が佐野坂まで、小森さちよ選手がその手前まで距離を伸ばしました。


 佐野坂付近で二つのコースに分かれました。木崎湖へと伸びている尾根上に低い雲が立ちはだかっているのです。先行している選手の宮田選手、小幡選手は雲の左側の木崎湖コース、高杉選手、扇澤選手は右側の爺ヶ岳にコースを取ります。少しあとから様子を見ていた大澤選手、稲見選手は爺ヶ岳にコースを取ります。この時間を最後に佐野坂上空の雲はさらに大きくなり爺ヶ岳方面のコースを閉ざしてしまい後の選手は木崎湖コースをしか選択肢がなくなりました。どちらのコースが吉と出るか!面白い展開です。


 最初は木崎湖付近で高度が下がります。しかし、大町へと近づくとサーマルにヒット!高度を回復し平地へ出るときには高瀬川上空を飛ぶコースと高度の高い山が続く西コース、低い山が続く東コースに分かれました。トップグループで高瀬川コースを選んだ宮田選手はグランドサーマルを乗り継ぎゴールへと向かいます。


 一方、爺ヶ岳は対流現象がなく、そんな中生き残った高杉選手、扇澤選手、大澤選手は低いながら粘り大スタックの末、ようやく爺ヶ岳を抜け出します。


 少し遅れた長嶋選手はどのコースも渋そうであることから東側の山を選択。しかし、東側のコースはサーマルがなく真ん中の高瀬川コースに戻ります。たとえ好条件に見える高瀬川コースといっても他に比べれば日照がある程度で、渋く苦しい旅が続き、サーマルに乗り継ぐことが出来ず一人、また一人とランディングしていきます。


 その頃、遅れて単独で木崎を離れた伊藤選手は、確実にあげるという自分のペースを崩さずに高瀬川上空を飛んできます。


 PWC白馬で実績のある西側コースの高杉選手、扇澤選手、大澤選手はペースを上げ南下しますが、秋の太陽の傾きは早く陰った東斜面からは下降気流が発生しはじめ、2時過ぎにはサーマル雲が消滅し、西側斜面に回り込めなくなった高杉選手から順に、扇澤選手、大澤選手とランディングしていきました。


 日照の当たっている場所でもサーマルは終焉となり最後までサーマルを使い切って宮田選手はただ一人ゴールまで辿り着きました。単独で後を追いかけていた伊藤選手は最後のサーマルまで使い切りゴール手前7kmまで距離を伸ばしました。


 こうして秋の栂池ジャパンカップ最終日は宮田選手たった一人が54kmをゴールしたわけですが、渋い条件で距離を伸ばした選手が少なくDayクオリティーが不十分で、がんばったにもかかわらずトップの宮田選手得点が760点。グランプリとしては不成立でした。


 しかし、ナショナルリーグ大会としては十分成立条件を満たしています。総合は唯一ゴールした 宮田歩選手が優勝、2位には 伊藤博之選手、3位に 大澤行英選手、4位 扇澤郁選手、5位 松原正幸選手、6位 高杉慎吾選手となりました。女子は1位 村上恭子選手、2位 平間利栄選手、3位 小森さちよ選手。シリアルクラスは、1位 平間利栄選手、2位 榎本康次選手、3位 隅秀敏選手。チーム戦は1位 きのこ山 2位 オレンジレーシング、3位 碧きWINGKISSと なりました。入賞された皆さんおめでとうございます!


 本大会は選手たちに白馬で山を越えていく難しさ、渋いときでも距離を延ばす必要な粘る必要性を、時間とともに変わる日射の計算の大切さを教えてくれました。


 グランプリは11月に行われる次のナショナル大会「四国三郎ジャパンカップ」に場所を移して再度開催されることに決定しました。選手たちはグランプリ優勝という目標にむけて再スタートです!


主催者 後藤敏文様より 


 地元の皆様、近隣スクールや各スキー場関係者,ならびに御後援をいただいた各自治体のご協力で、大会運営も非常にスムーズに進めることができました。JPAの競技関係者の皆様、ならびに大会スタッフの献身的な協力なしには、大会の成功はありえません。今大会に携わってくださいました、すべての皆様に感謝いたします。本当にありがとうございました。お疲れ様でした。


2010PWCスーパーファイナルinトルコ

エピローグ


 10月2日、11日間に及ぶスーパーファイナルは7本のタスク成立で終了しました。JPAから参加の水沼、増子、扇澤、長嶋、植田、高杉、宮田、大澤、小林9名は大したアクシデントもなく無事終えることが出来ましたことを、ひとえに皆様の応援のおかげだと感謝しております。


 良い成績とは言えないことを、応援していただいた皆様に大変申し訳なく感じております。本当に申し訳ございませんでした。


 うまく飛べなかった理由は、雰囲気にのまれたもの、モチベーションを維持できなかったもの、調整不足、健康管理などそれぞれですが、これからのJPAが世界で戦っていく上で、重要なことばかりです。


 次の世代や次回のスーパーファイナルを目標にしておられるに方のためにしっかりとフィードバックしていきます。来年には今年よりもたくさんの参加選手がJPAから参加して、結果が残せるようにと願っております。


9月27日 Task6

本日は南西の風がやや強めなのでいつものテイクオフより一段低いところにあるテイクオフ(標高700m)からフライトしてタスクを行うことになりました。


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雲量が多めでコンディションが整わないかもしれませんのでエラップスタイムレースで行うことになり、テイクオフ前のスタートを取ったら一段高い台地の上にあるいつものテイクオフ(標高約1700m)をとってから、裏に流していきTASK3で使用したゴールに向かう72.5kmのエラップスタイムレースとなりました。


13:45ゲートオープン、で選手は続々とフライトしていきます。しかし早い時間からスタートする選手はほんの数名、他の選手は有力選手の動向などを見ながらお互い牽制しあっているようです。今日はこの早い時間にスタートをきったかどうかで明暗が分かれました。


コンディションはエラップスタイムレースが組まれるだけあって、雲は多くサーマルも単発的で風は時間とともに強くなっていきます。ゴールレースならスタートは一斉なので大集団で移動していくのですが、エラップスは選手が好きなタイミングでスタートをきれるので、集団もそれほど大きくはありません。確実にリフトのありそうなところ、日射のあるところなどを探しながら駒を進めます。そしてゴールの前に平野のターンポイントをひとつとらなければならないのですが、そこに着く頃にはほぼひとつの集団が形成されてきていました。しかし地表の風が強くなっていて陽射しも傾き、リフトもなくなってきている時間で、そのターンポイントをとったら後は距離を伸ばすだけになってしまいました。


そんな中、今日のゴール者は4名。一番早い時間にスタートをきった選手のみでした。JPAチームは水沼がゴール手前5kmまで距離を伸ばし総合12位。


明日はここのコンディションはあまり良くないので、70kmくらい離れたエリアへ移動してタスクを行います。


2010 PNL第5戦 立山らいちょうバレーカップ大会レポート

開催地 :富山県富山市 立山山麓フライトエリア
主催:らいちょうバレーカップ大会実行委員会
レポート:藤野 光一


【プロローグ】


パラグライダー競技の歴史を刻む中で、ここ立山での大会は数多くの名勝負を生み出してきました。ただ、昨今のグライダー性能の進歩と選手の技術向上にともなってか、立山エリア内では空域が狭く感じられるのもまた事実。今年はチャレンジリーグ(チャレンジクラス)も併催され、総勢90余名の選手達が秋の立山に集い、熱い戦いを繰り広げたのでした。


9月18日(土)


大会前日は曇り時折雨と言う天候で準備がすすめられましたが、大会初日は朝から素晴らしい天気に恵まれました。昨年の大会から秋の連休(通称シルバーウィーク)に開催日程が変更されたこの大会では、常に秋の「台風」が心配されます。今回も天気図上に台風は描かれていますが、遥か南の台湾沖。この連休に関しては影響はないと見て、絶好のコンディションで大会の朝を迎えたのでした。


選手達は7時30分の受付を済ませると、その足でゴンドラに乗ってテイクオフのある極楽坂ゲレンデへ移動します。立山の大会では、テイクオフする場所を確保することが重要なポイントとなっており、選手にとって競技は既に始まっているのです。


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9時30分にはテイクオフにおいて開会式。今大会委員長のJMB立山パラグライダースクール校長関沢氏の挨拶に始まり、エリアの注意点が説明されました。その後はジェネラルブリーフィングに移行し、立山が初めての参加者も多いチャレンジクラスの選手にもエリア攻略のポイントなどが説明されました。


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今回は、ナショナルリーグは立山の対岸(常願寺川を挟んだ北側)のパイロンを含んだ谷全体を使ったタスクが、チャレンジクラスは通常のエリア内を中心としたタスクが用意されました。ナショナルのウィンドオープンは11時45分。デパーチャーオープン12時5分でエリアを一杯に使った三角パイロンを軸とした44.7Kmのエラップスタイムレース。時間と同時にセットアップされていた機体が次々と立ち上がり、エリア最初のサーマルポイントである金山ゲレンデへ向けて列をなす選手の群れは圧巻でしょう。立山ならではの光景と言えます。


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スタート時間が近づくにつれ、上空には雲が大きく厚くなり日射を遮ってしまいました。しかも雲低までもが下がり始める始末。それでも時間と共にタスクを回り始める選手は、時には雲を利用し、時には雲を避けて効率の良いコース取りで駒を進めますが、最初の沖出しであるB02から低く戻って上げ直せない選手は残念ながら脱落することになってしまいました。辛くも生き残った選手は美女平、対岸のレグへとさらに駒を進めますが、相変わらず雲が日射を遮ったままでは上げることよりも生き残ることが優先される展開となり、様子をみながらの超スローペースでタスクが進行しました。


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この頃チャレンジクラスもウィンドオープン。ナショナルに遅れること45分の12時30分に選手がテイクオフし、デパーチャーオープンは12時40分。タスクは26.3Km。しかし、チャレンジクラスが出始める頃にはエリア側の対流は失速気味に停滞し、ほとんどの選手がレースを始めることもままならぬままランディングしてしまったのでした。


チャレンジクラスの選手の動向から、エリア側が働いていないことを察知したナショナルの選手達は、対岸のB16パイロン上空で高度を確保しながらのウェイティング状態となりますが、13時を過ぎた頃から雲もようやく崩れ始め、エリア側にも弱いながらの対流が始まりました。この様子から高度のある選手の集団が常願寺川を渡って金山やB03パイロンのある稜線めがけて突っ込んできますが、コンディションはそれほど整ってはおらず、ナショナルの選手達はほぼ横一線の状態でランディングを余儀なくされたのでした。


競技と言うのは皮肉なもので、ナショナルの選手が全てランディングした後から行われたチャレンジクラスのリフライトでは、再びエリアを覆い始めた雲が良いリフト帯を作り出し、先ほどはスタートすら切れない状態だったのを、しっかりレースが出来る環境にしていたのです。


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しばらくは立山の空を賑わせてくれたチャレンジクラスの選手でしたが、ゴールが出来るほどの時間までは与えてくれず、15時30分頃には全ての選手がランディングし、競技が終了したのです。


競技後は、立山山麓家族旅行村でバーベキューが振る舞われ、選手は薄暗くなった立山の初日を堪能したのです。また、本日のトップ3も紹介され、ナショナルは22Kmを飛んだゼッケン30番の浅沼選手と、ゼッケン201番の廣川選手が同点で1位に、わずか100m差で20番小林選手、25番青木選手、34番伊藤選手、65番塚本選手が並ぶ結果となりました。


チャレンジクラスでも、ゼッケン502番の志水選手とゼッケン564番の中島選手が15.1Km


で同点1位。こちらも100m差で523番山本選手、545番土屋選手が同点3位と言う僅差の結果となりました。


2日目の予報は当初よりも好転したとの情報も入り、選手は明日のタスクに期待をかけて解散となりました。


9月19日(日)


今日も朝から天気は良いのですが、エリア全体が静穏な状況に包まれていました。それでも選手は昨日と同じく受付を済ませてテイクオフへ移動し、自分のポジションを確保して機体をセットするのです。


昨日のタスクでゴール者が出なかったこともあり、本日のタスクは難易度を下げたサービスタスク?があらかじめ選手に示されました。ナショナルは対岸を往復する32Km。チャレンジはエリア側のアウトアンドリターンを基本とした22Km。しかし、日差しがあっても一向に始まらない対流。ダミーも上昇することなくランディングへ消えていきます。待ちに待ってタスクをさらに変更(短縮)しレースを開始しようとした矢先に、空全体が黒く怪しい雲に覆われ、雨までパラつく状況になったため競技はキャンセルとなりました。


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9月20日(月)


最終日は雨音で目覚めることになりました。それでも、7時過ぎには雨も止んだのですが競技の可能性がないと言う判断でキャンセルとなり、10時からは表彰式と閉会式が行われました。


3日間の日程でタスクは1本のみの成立となり初日の結果での表彰となりました。不完全燃焼と言う印象は拭えませんが、厳しい気象条件の中でも精一杯飛んでくれた選手に感謝したいと思います。また、初めて開催されたチャレンジクラスですが、地元立山の選手が上位を占める結果となり、地の利を十分に生かしたフライトが結果に結びついたのだと思います。入賞された選手のみなさん、おめでとうございます。


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来年も立山エリアで選手のみなさんを楽しませる(苦しませる?)タスクを用意しているとのことですので、来年も秋の立山らいちょうバレーカップをよろしくお願いしたいと思います。


最後になりましたが、今大会をサポートしていただいた地元クラブやスタッフの皆様に感謝の意を表します。来年も、大会をサポートしていただけますようお願いする次第です。