白馬八方尾根JAPAN CUP大会レポート(最終日)

■三日目(10月10日)
昨日のように受付前に列を作った選手達の顔が訝しい。張り出された気象予測に戸惑っている。高度1500mで西風8m/sec?フォローじゃん。今夜の前線通過は予測の範囲だが、こんなに早く影響がでるのか。そもそも外は全くの晴天ではないか。
実は昨日の段階で清水競技委員長はこれを予測している。「ちょっと難しいかも。明日は安全に十分なケアが必要です。」この予測は当たってしまうことになる。確かな気象感覚に脱帽である。
テイクに移動しグライダーを広げ、ダミーを出して状況を見る。テイクオフゲレンデはきれいにアゲンストが入っている。
みっかめ 三日目だみー

気象予測、リフト降り場に時たま入る西風、上空に出来始めたレンズ雲。いくつか条件からコミッティと討議して本日はタスクキャンセルとなった。(余談である。まだ、今日はどうかと迷う条件の中、前堀実行委員長となんとはなしにお話しをしている時、リフト降り場のある山側にふわっと湧きあがった低空の雲を見て、「あれが出たなら今日は無理だよ。」と教えてもらった。昔読んだ山岳漫画の1シーンのようだった。かなりシビレタ。すごいなぁ。)
早い判断が功を奏して低空が落ち着いている中、フライダウン出来た選手も多くいた。荷物を預け自力で下るもの、一旦登ってリフトを使って下るもの。三々五々の静かな終了となった。いや、送迎待ちテイク下の選手はその後、西風爆風にさらされた。早い的確な判断が、ストレスのない気持ちの良い終わりを生んだのだ。
「ちょっと尻すぼみになった感じで残念です。」テイクの後片付けをしながら清水競技委員長がつぶやいた。とんでもない、とても楽しい三日間でしたと答えた。
そして表彰式、閉会式。せっかくのグランプリ、10位までは表彰し前に出てきて頂きましょう。トップ3にはお米を、そして八方大会恒例となったガラス細工のトロフィーを。このきれいなトロフィー、主催者のファミリーの方の手作りです。去年のPWCでも外人選手が別の種類のものを持っていった。
かっぷ
そごー じょし
しりある ちーむ

最後にグランプリカップの授与式。3つのカップは来年、本人名のリボンをつけて返還されるまで勝者の家で栄誉の証となる。
ぐらんぷり gpカップ
ウィナー

早起きが基本、宿の朝食を頂く時間はない。受付の行列で1時間ぐらいへっちゃらで待つし、待たされる。時には重いグライダーを背負ってゴンドラ駅に歩くこともある。テイクオフはトイレに不便だしウインドオープン時の緊張感たら並大抵ではない。フリーフライトならこんな苦労をしなくて良い。全くコンペなんて、だ。でも今回の大会のような初日の達成感、二日目の充実感なんてちょっとやそっとでは味わえないものだ。だからコンペはやめられない。

二日そごー 二日シリアル
二日女子


白馬八方尾根JAPAN CUP大会レポート(二日目)

■二日目(10月9日)
翌10月9日、昨日の興奮も覚めやらずで6:30には選手達が受付前に列をつくる。受付開始は7:30だというのに。
「サーマル条件は昨日よりやや落ちるかも。1800mの予測凝結高度がブレイクするかどうかは五分五分といったところ。基本、南風なので今日は北方向のターンポイントも使えそう。」清水競技委員長のコメント。
うけつけ スタッフmtg

今日は77機のグライダーがゲレンデに並んだ。ウインドダミーの上がりも渋く、やや待ちの状態となる。タスクは岩岳、栂池を越え白馬乗鞍のリフト降り場から佐野坂アンテナ跡まで移動し八方に戻る50kmゴールレース。佐野坂ゴールに向かうファイナルグライドセクションは昨日と同じ。「ウインドオープンまで時間がなさ過ぎ。」「全員が空中待機できるデパーチャーオープン時刻にして欲しい。」選手からの声をもとに10:30のブリーフィング終了後から10:45にウインドオープン、11:25にデパーチャーオープンとなった。
結局、11時10分にはテイクにはグライダーがなくなっていた。テイク上空での待機となる八方尾根エリアでは40分は長過ぎたか?
決して活発とは言えないリフト条件の中、77機が空中待機を続ける。お互いに避けながらも隙あらば抜けだそうと駆け引きに忙しい様は観光客の皆さんには伝わっていないであろう。きっと優雅に飛んでいるように見えるんだろうなぁ。
がーグル スタート

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さて今日のレースは序盤に選手の判断が分かれた。三角パイロンをダイレクトに回る決断をした選手と安全に山に戻ってV字コースを選らんだ選手に分かれたのだ。ダイレクト組は尾根のかなり下段に取り付き粘りの飛びで上昇してくる。この上げ直し時間を含めるとV字コースにさほど差をつけることは出来なかったようだ。この日のトップとなる扇澤選手はV字コースを選択している。岩岳で上げ、栂池で上げ、白馬乗鞍へ。競技フライトでは定番のコース設定だ。ルーティンワークのように経験値に基づくサーマルポイントを使ってタスクはこなされて行く。佐野坂に向かうリターン路も沖側が渋く、山側しか選択出来ない。
渋めの条件からやや生き残りレースの様相も見え始める。リフライトにチャレンジした選手も少なからずいたようだ。
それでも佐野坂アンテナ跡からのリターンを終え、峰方、佐野坂ゴールのファイナルグライドを始めるグライダーが現れ始める。時間差はあるものの、その数15機、しかしゴールに辿りつけたのは3機のみだった。
「南風が強いのは計算の上だったんだけど。」とは1km手前に降りた稲見選手。昨日の北風と真逆の条件にトップコンペティターの判断もくるいが発生したようだ。
レースは15:00前には終了している。強まった南風と弱まった日射からリフト条件がほぼ無くなってしまったのだ。もう15分早くデパーチャーオープンしてたならゴール出来たかも。タラレバは尽きない。
本レポート筆者も八方に戻る途中の五竜ランディングの36km地点で競技を終了した。自転車モードのまま使ったGPSの実移動距離は125kmを示す3時間半オーバーのフライト。疲れるはずだ。
八方TASK2リザルト付
今日はうどんが振る舞われた。昨日のカレーでカレーうどんの選択も可。全くありがたい話だ。ひたすら感謝である。選手へのサービスだけではない、安全監視体制、回収体制、連絡網、しっかりしたマネジメントで大会は運営されている。なにしろPWCが開催出来る技量を持つエリアである。
本日トップの扇澤選手の得点は993点、小幡選手も3位で989点を獲得したため小幡選手のトップに変動なし。シリアルクラスは10位に入って802点を獲得した小林選手が昨日トップの高杉選手を逆転した。女子もゴール手前500mまで迫って総合8位となった水沼選手が増子選手を逆転した。果たして明日は、といったところである。


白馬八方尾根JAPAN CUP大会レポート(一日目)

■一日目(10月8日)
2011年10月8日、白馬八方尾根エリアは“その日”を迎えた。絶好の好天予報、素晴らしい大会の予感。日本グランプリは北アルプスを越え富山県らいちょうバレーから、ここ八方尾根エリアにもたらされた。今回こそという期待感、その期待感にTASK1での51名のゴール者が応えることになる。
「治りきっていない風邪で体調が悪かった。今日の頑張りで悪化した気がする。今は背中の筋肉痛が気になる。」TASK1のトップを獲った小幡選手の帰着後のコメント。この人、逆境に燃えて力を出すタイプだ。そして二日後には2011年の日本グランプリのウィナーとなる。

秋の行楽日和の3連休、昨今の山ブームも手伝って混雑していたゴンドラ、リフトをくぐり抜けて76名の選手がテイクオフにたどり着く。やっぱり前だ、いや少し後ろでリスクを避けたい。思い思いに場所取りが行われる。ゲレンデいっぱいに広がった76機は壮観である。ゲレンデ脇のリフトで登る観光客の皆さんから「へー」とか「ほう」とかの声が聞こえる。
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「全体としては北東予報ですが地形的に南成分が入ると思います。1700mの凝結高度予報ですが、この日射ならブレイクすると予測します。後半は強めの北風が予測されるので岩岳などの北方向ターンポイントはお勧めしません。」タスクコミッティの前堀選手のコメント。競技委員長の清水さんの天候予測ともブレはない。地元の強みの一言では片付けられない、このエリアの人達の天候の読みの確からしさ。それは、その日もそして三日間に渡って立証されることとなる。
よしと

設定されたタスクは八方尾根湾内の三角パイロンでスタート、佐野坂アンテナ跡と八方を2往復する52kmのゴールレース。最後の八方下段テイクオフTP(ターンポイント)を通過した後は東対岸の峰方山頂TPをかすめて佐野坂スキー場下の佐野坂ゴールへファイナルグライドをかけるもの。10:20にウインドウオープン、10:40にデパーチャーオープンが設定された。もともと切迫していたスケジュールに加えて、いざテイクオフとなると準備に手間取ったり、立ち上げミスが発生したりと全機空中一斉スタートとはならなかった。しかし後れた選手にとって先行するグライダーの挙動は最大の情報源だ。ゆっくり、確実に、特に序盤は。最初から先行するリスクを避ける作戦の選手も多かったかも知れない。
五竜、佐野坂とコマが進むにつれ76機は小集団にばらけてゆく。小集団内で抜きつ抜かれつゴールを目指す。結果的にはどんどん好天していったコンディション(2500m以上あがった選手もいたとか…)にトップグループの大幅なスタックといった波乱は発生せず純粋スピードレースに終始した。最終的には51機のグライダーが、強まった北風にのりゴールにたどり着いた。
やすこ ごーる
ゴール えみ

冒頭の小幡選手のフライト時間は1時間54分弱で最速。レース中にどれだけトップを引っ張ったかを示すLO(リードアウト)得点は4位の竹尾選手が184点でトップの結果。最終ゴール者は小倉 恵深(エミ)選手が3時間31分のフライト時間。あきらめない心がゴールを生む。
たsk
帰還した選手を待っていたのはカレーライス。おいしく頂きながらも「交流会は4時からじゃないの?」と不思議がる。そう、さらに4時過ぎには本部前に椅子とテーブルを並べた野外パーティが催された。オードブルに加えてスタッフ手ずからの炭焼きの焼き鳥(おいしかった。)発表されたリザルト、今日のフライトの振り返り、楽しい一日の終わりである。

うどん ぱてぃ
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PNL第8戦 白馬八方尾根JAPAN CUPフライトログデータ。

PNL第8戦 白馬八方尾根JAPAN CUPのフライトログデータを下記に格納いたしまいた。
今後のフライトの参考にご活用ください。

Task1フライトログ

Task2フライトログ

※フライトログはIGCファイルをZIP形式に圧縮してあります。ダウンロード後、解凍してご活用ください。