2019 COOスプリングカップ


レポート:競技事業部・藤野 光一

2019年シーズン第1戦の「COOクロカンカップ」では、天候に恵まれずタスクは成立しなかったのですが、その2週間後に再びCOOで開催されるスプリングカップは、事前の気象予報もまずまずの晴れベースがぶれることなく固定され、久しぶりに「BigDayになるかもしれない」と言う、何とも言えない予感が選手たちにあったのではないか?と思います。

その予想は期待を裏切らない形で現実のものとなりました。なかなかマッチしない大会でのコンディションですが、今回は本当にタイミングが合った素晴らしい大会となったのです。

4月13日(大会1日目)

天気予報は文句のつけようがない晴れ予報。移動性高気圧が張り出し、キッチリと関東平野を、本州を覆う位置取りで、風も弱く絶好の大会日和、クロカン日和であることを感じさせるものでした。




COOの大会では、毎回朝食サービスが行われます。選手としては非常にありがたいサービスで、主催者と早朝から準備に勤しむスタッフのみなさまには本当に感謝です。朝食を頬張る選手たちは一様に笑顔で、これから始まる大会にワクワクしている様子が見て取れました。


朝食サービス



クロカンタスク

選手は朝食を済ませた後で受付、そしてテイクオフへ移動。一連の流れはとてもスムーズに行われ、テイクオフの優先順位のおかげもあってか、送迎車争奪戦のような殺気立ったムードは微塵もなく、終始和やかなムードで進んで行きました。

テイクオフでは9時30分から開会式が行われ、その後競技委員長によるジェネラルブリーフィングへと移行します。今回の大会はナショナルリーグ第2戦とN2リーグのシーズン初戦。特にN2リーグは、今年からルール変更があったことで300番台選手がその実力を競うリーグになりました。昨年チャレンジリーグを賑わせたツワモノたちがステップアップして参戦しているので、今シーズン注目のリーグと言えるでしょう。


競技委員長


ブリーフィング


両リーグのタスクコミッティーが招集され、本日のタスクを協議します。そして、選手に提示されたタスクは予想どおりのクロカンタスク。そして、ここ数年は設定していなかった北上タスクとなりました。

ナショナルリーグは横岡ゴールの82.2Km。N2リーグも予想されるBigコンディションを生かした黒羽ゴールの67.3Km。
クロカン慣れしていないN2リーグの選手をリードすることも考え、スタートするTPもスタート時間もシリンダーサイズもすべてナショナルリーグと同じ設定。違うのはゴールだけとなりました。


タスクコミッティー


タスクボード


10時30分にWindow Open。スタートは12時30分なので2時間の余裕があります。ナショナルリーグ55名、N2リーグ23名、合計78名の選手も十分スタートに間に合う予定でしたが、結果的にはスタート時間になってもテイクオフできずにいた選手が見られました。2時間の空中待機は長いかもしれませんが、条件は常に変化して行きます。テイクオフも風も一定ではなく、特にCOOのような平野に位置するエリアでは、対流によって風向きが簡単に変わります。ナショナルリーグのトップ選手たちは、淡々と準備をして早々にテイクオフして行きます。彼らにとってもスタートまでの2時間は長いはず。ですが、やはり空中に身を置くことが何よりも優先されるのです。
今回、早く出るのを嫌って後半に出る選択をした選手たちにとっては、高い授業料になってしまったかもしれません。空中に居なければレースに参加することはできません。その点も踏まえ、自分の行動を決める必要があるのではないでしょうか?









気温差の大きかったこの日のサーマルは力強く、そして時に暴力的な激しいものでした。ひとたび上昇の良いサーマルにヒットすると、まさに高速エレベーターのごとく2000mオーバーの世界へ連れて行ってくれます。しかし、同時にそこは寒さとの戦いの場でもありました。気を抜く暇もないほどの荒れた空域で手の冷たさに耐えながら、選手たちは良い位置取りをとスタートに備えるのです。


ナショナルリーグTASK1


N2リーグTASK1


ナショナルリーグの攻防

スタート時刻の12時30分きっかりに、B05のSSS2000mをカットし上空2000m以上に位置する大集団はゆっくりと北を目指して動き始めます。通常の場合、まずは高峰を目指して上げ直すレグとなる訳ですが、この日は十分な高さがあるため先頭集団は高峰をパスして茂木方面へダイレクトに駒を進めていきます。
この日は、東側を通るルートで集団を形成する大きなトップグループと、西側を直線的に北上した小集団の2つのトップグループがレースをリードしました。低く先行する37番只野選手や、高さを維持しながら着実に進む202番青木選手らのグループ。そしてそれを追う2nd以降のグループです。先行するグループはコンディションの整う前に進むことが多く、慎重にならざるを得ない場面も多々見られます。コースを右に左に変えながら、最も効率の良いルートを探りながら進みます。


ゴールはまだ先(中村選手撮影)


烏山を越え黒羽を視界にとらえる頃には、ばらけていた集団も徐々にコースが集約されて行きます。そして、トップを狙える位置にいるのは1番高杉選手、2番稲見選手、36番只野選手、202番青木選手の4名。ここから先は誰が先に仕掛けてゴールシリンダーをカットするのか?にかかっています。ファイナルグライド勝負を制したのは202番青木選手。2時間24分12秒でフィニッシュ。遅れること13秒で1番高杉選手、さらにその25秒後には3番中村選手がフィニッシュでした。
その後も続々と選手がゴールに現れ、リフライトで粘りのゴールを決めた39番三浦選手がゴールした16時43分までに、実に44名の選手がゴールメイクする好レースとなりました。


ゴール




ゴール上空(三浦選手撮影)



N2リーグの攻防

N2リーグの方も様々なドラマを生みながらレースが進められたようです。ナショナルリーグ同様、スタート前には2000mを超える位置で待機し、一斉に北上を開始します。中にはB05の1Kmシリンダーに入るために大回りしてしまった選手もいたようです。
N2リーグの選手は、高さをキープしながら慎重に大事に進んでいきます。レースは313番谷藤選手、328番松本選手が先頭を走ってリードします。後続は集団を維持しながら比較的スローペースでの展開となりますが、先頭の2人も烏山付近でペースダウンし後続集団に飲み込まれます。そしてトップは328番松本選手と330番工藤選手に変わり、さらに318番飯塚選手も加わるなどめまぐるしく変化して行きます。
最終的に328番松本選手が集団を引き離して2時間11分04秒でトップゴールを決めました。終始トップを守った攻めの飛びが勝利を引き込んだのかもしれません。続いてゴールに飛び込んだのは昨年のチャレンジリーグ女子チャンピオンの317番谷藤幸子選手で2時間34分38秒でした。3番手は324番西川選手で2時間38分36秒。その後もゴール者は続き、16時3分にゴールを決めた304番北島選手まで10名の選手がゴールを決めました。

昨年来、なかなかレースが成立しなかったN2リーグですが、2019年の第1戦は幸先の良いスタートを切ったのではないでしょうか?


ゴールバス(正木選手撮影)


ナショナルリーグもN2リーグも大勢の選手がゴールし、ゴールにはたくさんの笑顔がありました。久しぶりのクロカンタスクで、最高の条件で、自分の力を出し切って掴んだゴールは本当に素晴らしいフライトだったと思います!!おめでとうございます。

ゴールからエリアへ帰るバスの中は大いに盛り上がったのでした。



エリアへ戻れば選手にはハンバーガーが振る舞われました。とても美味しかったですね。ありがとうございました。

4月14日(大会2日目)



大会2日目は曇りがちな、それでも予想よりも日差しが多く暖かな朝を迎えました。初日同様に7時30分から朝食サービス、選手受付、そしてテイクオフへの移動となりました。


ブリーフィング


今日は南西の風が強まる予報もあり、選手は西テイクオフで準備です。まだ穏やかですが、この後徐々に風が強まる予想だけに、しばらくは様子を見てウェイティングとなりました。


タスクコミッティー


タスクコミッティーが招集され、タスクの可能性を探ります。風が強くなる前にレースを終えるためには、早めの展開が必要です。しかし、西テイクオフの場合はサーマルが活発になるまでに時間がかかります。レースが開始された後に風が強まった場合のエスケープなども考えると、やはりリスクが高いと言わざるを得ません。タスクは難しいとの結論で様子を見ていると、やはり強い風が徐々に入り込んできました。この段階で競技委員長はタスクキャンセルを宣言し、選手が下山することになりました。
そして、これをCOOスプリングカップの競技は終了しました。

N2リーグ表彰

N2リーグの入賞者のみなさま、おめでとうございます。

総合



優勝 328 松本 健吾 BGD CURE

準優勝 317 谷藤 幸子 ADVANCE SIGMA10

第3位 324 西川 慎治 GIN GLIDERS EXPLORER

第4位 310 藤原 雅宏 ADVANCE IOTA

第5位 312 岸 幸民 ADVANCE SIGMA9

第6位 302 中川 俊治 NOVA SECTOR

女子



優勝 317 谷藤 幸子 ADVANCE SIGMA10

準優勝 307 中久喜千代 GIN GLIDERS EXPLORER

第3位 332 山岸 里子 GIN GLIDERS BONANZA2

チーム



優勝 西日本連合

(312岸幸民、310藤原雅宏)

準優勝 PinCOO

(302中川俊治、307中久喜千代、311横堀紀子、318飯塚宏祐、330工藤成史)

第3位 今井浜

(308岩野おさむ、313谷藤公明、314斎藤光秋、317谷藤幸子)

ナショナルリーグ表彰

ナショナルリーグの入賞者のみなさま、おめでとうございます。

総合



優勝 202 青木 和広 OZONE ENZO3

準優勝 36 只野正一郎 GIN GLIDERS BOOMERANG11

第3位 1 高杉 慎吾 OZONE ENZO3

第4位 10 正木 晋 GIN GLIDERS BOOMERANG11

第4位 中村 浩希 OZONE ENZO3

第6位 竹尾 雅行 OZONE ENZO3

女子



優勝 19 吉川 朋子 OZONE ZENO

準優勝 17 片貝 月子 NIVIUK PEAK4

第3位 24 田前 英代 NIVIUK ICEPEAK7

第4位 28 吉原 紀子 OZONE ZENO

第5位 37 岩崎 聡子 NIVIUK KLIMBER P

第6位 45 関根 睦 OZONE LM6

チーム



優勝 瀬戸内少年飛行団

(2稲見祐二、11山本雅史、24田前英代、35田前敏、40山田俊介)

準優勝 Team EVOX

(4中島義雅、10正木晋、20伊澤光、21藤野光一、201平松久)

第3位 Z3(ゼットスリー)

(1高杉慎吾、13隅秀敏、63竹内直之)

X-ALPS日本チーム

最後に、間もなく始まるRedBull X-Alpsに日本から参戦する扇澤郁選手とサポートを含めた日本チームが紹介されました。2013年以来の出場となる扇澤選手は今年還暦を迎える最高齢での挑戦です。
各地のパイロットが寄せ書きした日の丸を手渡して、健闘を祈りました。
レースは6月16日スタートです。日本チームはゴールデンウィーク明けから現地でトレーニングを開始します。


扇澤郁選手


左からサポーターの渡部と小熊


寄せ書きされた日の丸


2019年シーズンのナショナルリーグ第2戦、N2リーグ第1戦のCOOスプリングカップは、素晴らしいクロカンタスクが成立し幕を下ろしました。選手の頑張りはもちろんですが、いつも大会を支えてくれるスタッフのみなさまに心から感謝申し上げます。
これで今シーズンのJPA競技会も弾みがつくことと思います。まだまだ始まったばかりです。選手のみなさま、今シーズンも一緒にJPAの競技会を盛り上げて行きましょう!!



2019 COOクロカンカップ


レポート:競技委員長・辻 強

2019年。今年もJPAのパラグライダー競技が開幕です。

北関東は3月上旬、天候・気象条件が良く、クロカンに行けた週末が多くありましたが、下旬になると真冬並みの寒気が南下して、せっかく咲いた桜も風邪を引きそうなぐらい寒くなりました。

30日・1日目

曇りの天気。風は弱い予報ですが、早朝には小雨がありました。それも選手が集まる頃には止みました。選手には朝食サービスがあります。朝からしっかり食べて飛んでもらうために、COOキッチンスタッフが暖かい朝食を準備しました。





朝は山頂の風がまだ強く、本部前にて開会式とブリーフィングが行いました。


司会


JPA会長



競技委員長


11時には山頂の風も弱くなり、フライトが出来そうになったので山頂までの送迎を開始。

お昼にはチャレンジリーグの今年最初のタスクを発表しました。
タスク距離は最短で10Km、エリア内で少しでもサーマル、リッジが在れば飛べるタスクを組みましたが、天候は無情にも雲が厚くリッジも取れないぐらい弱い風になり、ゲートオープンしましたがほとんどの選手がぶっ飛びでした。

そのような厳しい条件の中、1名だけミニマム距離をクリアしてくれたものの、トップ1点でその他全員の選手は2位0点となり、これは幻のタスクになってしまいました。









ナショナルリーグの方はそのようなコンデションなので競技はキャンセルとし、フリーフライトになりました。

フライト終了帰着が済むと、手作りコロッケとハムカツ、イカリングの定食でした。
とても美味しかったです。



31日・2日目

昨晩低気圧と前線が通過、結構雨が降りました。朝からどんよりして雲で山も見えません。






11時まで本部で待ちました。その間、暖かい甘酒で体を温めてもらいました。が、天候の回復が無く残念ながら競技はキャンセル。そのまま閉会式になりました。





閉会式では、幻のタスクとなったもののただ一人ミニマムをクリアした谷藤選手に賞品が贈られました。



また、他の賞品はくじ引きとなり、引きの強い選手たちの手に渡りました。



大会実行委員長


閉会式後は暖かいカレーうどん・蕎麦を食べて選手は帰路に付きました。

今回の大会は、天候不良のため競技は出来ませんでしたが、2週間後には再びCOOスプリングカップが開催されます。思い切り飛べるように準備しておりますので、たくさんの選手のご参加お待ちしております。



四国三郎ジャパンカップ2018

レポート:競技委員長・扇澤 郁

毎年恒例となっているJPAナショナルリーグ最終戦・四国三郎ジャパンカップは、紅葉が深まる四国三郎流域の絶景の中、好天に恵まれ開催されました。

ここまで天候不順に悩まされた今シーズンのナショナルリーグでしたが、来シーズンのシード権を狙う選手たちが実力を発揮するためのファイナルレースの舞台は、地元関係者、近隣パラグライダースクール等、大会関係者全員の熱意で整い、熱い戦いが始まりました。

1日目

大会初日、寒冷前線通過後の四国三郎流域には北風が流れ込む予報となり、水の丸テイクオフから組まれたタスクは、吉野川の右岸にいても左岸にいてもコンプリート出来るフレキシブルなコース取りができる54Km。レース序盤の見どころは、北風の具合により、サーマルのラインが対岸なのか、川の真ん中なのか、手前なのかを読み、スタートをどこのラインで切るかでした。




レース序盤スタート時刻12:30頃、対岸ではリーサイドサーマルに苦戦し、高度を稼げずスタートを切れない選手が多い中、川の真ん中で高度を保ちスタートした選手が少しずつ距離を伸ばしていきます。そのなか、川を渡らず、手前のリッジで距離を伸ばしていたNo.8の吉川選手が順調に距離を伸ばしT2へリターンしたころで、競技委員長からは風が強くなりつつあるとの判断でタスクストップのコール。

タスク1はTask Validity:0.05でポイントの低いレースとなってしまいましたが、北風ベース時の吉野川流域の風の流れとサーマル活動の関係の典型的なコンディションを体感でき、明日につながる良いチャレンジだったと思います。



2日目

大会2日目。決戦の時の朝サーマルトップは1400m~1500mで終日晴れ予報ですが、コミッティーは渋めのコンディションを観天望気し、タスクコミッティーの稲見選手(リーグ戦総合2位)からは、同じくタスクコミッティーの高杉選手(リーグ戦総合1位)を最終タスクで抜き去るためのタスクが提案され、双方合意の上発表されました。
タスクは、四国三郎エリアを東西に3往復する50Km弱ですが、安全圏の山コースだと実走距離がかなり長くなることから、沖コースを狙う一発逆転組と、上位をキープしたい安全圏組に分かれることが予想される興味深いものです。


スタート後レース序盤は、沖を通る選手と山を通る選手に分かれはしたものの、TP2をクリアーしたのちは三頭山のハウスサーマルで上げなおすことになる、集団からなかなか抜け出せない渋めのコンディションが続きました。


レースが動いたのはTP3リターンの時で、真っ先にサーマルトップに到達した只野選手が、ワールドクラスの読みで一気に先行をする展開に。高杉選手を含むトップ集団が只野を追いかける中、一人逆転を狙える位置にいる稲見選手は勝負をかけ大奥の竜王コースを選択。
トップでTP4を折り返した只野選手は高度が低く、平野部で何とか渋いサーマルを育て始める。追いかけたトップ集団の中でも高度を保てた中村選手が、そのサーマルの上にかぶさり高度を稼ぎ始める。ここで、トップに躍り出たのが高度を保ちながらテイクオフレベルの山へ戻った竹尾選手。一気に高度を獲得し水の丸TO8Kmのシリンダーへ向かい始めます。一人旅で竜王コースを選択した稲見選手は大正解で高度ロスなくTP4をリターンし、モトクロス場上空まで戻り戦況を観察しながら余裕のセンタリング開始。



三頭山テイクオフで観戦していた大会スタッフは全体を監視しながらも、この面白い戦況を楽しませていただきました。

トップ2選手の心境を解析すると・・・

只野選手と一緒に低くなってしまった高杉選手は、稲見選手の断然リードと判断。高杉選手は稲見選手が900点代後半の良い位置でゴールした場合、最終タスク前の4本成立の得点計上では断然有利の高杉選手のアドバンテージがたったの8点しかない状況が読めていた。高杉選手は只野選手とは違い遅いゴールは必要なく稲見選手と同等なタイムでゴールラインを切る必要があり、当然のごとく只野と離れギャンブルに出たことで戦線離脱。



稲見選手は、集団から抜け出してきた選手の中に高杉選手の機影がないことを確信し、900点台後半でゴールすることで、リーグ戦トップは確定との判断。集団の中から抜け出してきた中村選手と一緒に余裕のファイナルグライドへ入るつもりで高度を稼ぎまくる作戦。この時、四国三郎の郷上空でシリンダーをカットし山に戻って上げなおしている竹尾選手を確認したが、有利な山コースでゴールを目指しても950点後半は取れるだろうと判断。

・・・等など(扇澤の勝手な推測です)


レース終盤は、コンディションが好転し沖周りの竹尾選手が余裕の単独ゴール。逆に、確実な山周りでゴールを目指した稲見選手を含むセカンド集団は若干スタックすることになり、トップから大きく後れを取った形でゴール。小森選手は集団と一緒にゴールし、女子では断トツのゴール。
その後も、4時間のフライトでESSをカットした吉川選手まで16名のパイロットがゴールを決め、選手全員が笑顔で帰着申告を目指した最終タスクにふさわしい終演となりました。

大会結果

本大会総合順位は竹尾選手が堂々の優勝。女子優勝は小森選手でした。
チーム戦は1本目の順位が加味され珍しく瀬戸内少年飛行団、チームX2、チームドラゴン、チームバーズ!の4チームが優勝。皆様、おめでとうございました。


ナショナルリーグ総合


ナショナルリーグ女子


ナショナルリーグチーム戦

年間表彰

興味深かったリーグ戦の順位は、975点でトップに並べた稲見選手が919点と振るわず、高杉選手のリーグトップで確定。2位に稲見選手。そして、3位はこの大会でもポイントをゲットした中村選手が初のポディウムを決めました。おめでとうございます。


年間総合TOP10


2018NLチャンピオン


女子は、小森選手が星田選手を逆転し優勝。2位に星田選手。そして、3位にこちらも初ポディウムの片貝選手が入りました。おめでとうございます。


年間女子TOP6


2018NL女子チャンピオン


チーム戦は全9タスクでポイントを重ねた三浦選手代表のConta会が優勝に輝きました。
2位は星田選手率いるチームドラゴン。3位は、隅選手がリーダーのチームZ2となりました。皆様、ナショナルリーグ戦にご参加いただきありがとうございました。


年間チーム戦TOP3

今回競技委員長をやらせていただきましたが、競技会は

・よいエリアで
・よい風が吹き
・よいパイロットが集う

ことで素晴らしいレースができるのだと確信できました。もちろん、出張エリアでの大会開催は準備が大切で、大会運営を陰で支えていたスタッフの皆様、素晴らしいエリアを管理されている皆様に感謝申し上げます。
そして、安全に楽しく笑顔で帰着申告していただける参加選手の皆様にも、この場を借りで心から感謝申し上げます。



ファイナルin朝霧

レポート:藤野 光一

チャレンジリーグ、N2リーグの2018年シーズンを締めくくるべく、11月3日・4日の2日間の日程で「ファイナルin朝霧」が開催されました。
本大会は、これまでのランキング上位選手や大会優勝選手を招待選手として迎え、最後の熱い戦いによって今シーズンのチャンピオンを決めるための舞台となります。
参加された選手は、ランキングトップを争う選手はもちろん、他の選手も自身の目標達成のために期待感を持って朝霧に足を運んだのでした。

1日目

初日の朝は、事前の天気予報からは考えられないドン曇り。大会前日入りした選手に
「昨日、良い思いをするからこうなるんだよ~!!」
と、大会あるあるを話す選手が他の選手の共感を得ていました。
しかし、チャレンジはともかく今年のN2リーグはどうも天気が味方してくれない気がします。そんな中でも、選手は9時からの開会式に合わせてWingkissテイクオフへ移動して行きます。



見た目には厳しそうな気象状況を踏まえ、様子を見ながら良い状況になれば即、競技が始められるように両リーグのタスクコミッティーがミニマムタスクを検討します。気象データでは減率が良い分、日照さえあれば競技ができそうと判断。これ以上は短くできないと言うタスクを組んで、その時を待つことになりました。



周囲の機体が前山から稜線方面へ抜けることができる状況になったことから、正式にタスクと時間が発表されました。

チャレンジリーグは11.8Km、N2リーグは20Kmのタスクが発表されました。明日の最終日の予報が悪い方向へ変わってきているため、これが今シーズン最後の戦いになるかもしれません。


Window Openからスタートまでの時間帯で、早めにテイクオフした選手はそれ程苦も無く稜線へ抜けることができたようですが、中盤から後半に出た選手は前山で上がらない中、忍耐のセンタリングを続ける羽目に陥りました。中には力尽きてスタート前に地上の人となる選手も見受けられました。


チャレンジリーグがスタートしたのは12時ジャスト。時間に合わせて数名の選手が白糸TOの3Kmシリンダーをカットし、さらに西進して行きます。しかし、空はどんよりと曇ってしまい、日差しを選手から奪ってしまいました。この状況で動いていた選手は上げることができず、ランディングに戻るのが精一杯。リフライトに懸けることになりました。

一方、N2リーグもチャレンジに遅れること12時15分にレースがスタート。渋さをものともせずに天子の3Kmシリンダーをカットし、さらに1Kmシリンダーを取りに行った選手は軒並み低くなり、陣馬の先で何とか粘るもランディングを余儀なくされます。やはり、状況に応じた戦い方が必要です。
そんな中にあって、着実に上げては移動して無理をしない飛びで、今日一番の厳しいコンディションを乗り切った選手が20小森、16関根、39河野の面々。決して無理をすることなく、かと言って動ける時にはしっかりと動いてタスクの駒を進めていく。そして、厳しい時間帯は13時前には再び顔を出した日射によって終わりを告げ、リフライトの選手も交えての賑やかな空域が現れました。
そうは言ってもタスクを楽にこなせるようなコンディションにはならず、徐々に空中の機影が少なくなっていきます。
そんな中、ただ一人ゴールを決めたのが20小森さちよ選手。ファイナルグライドはギリギリの高度でYMCAゴールに届くのか微妙だったそうですが、執念が通じたのかギリギリのゴールを果たしました。

チャレンジリーグはリフライトにおいてもゴール者は残念ながら現れず、最長距離を飛んだのは機体を変えて臨んだ504斎藤選手。ダントツの6Kmを飛んで堂々のトップでした。



初日の結果はN2リーグのトップが223点と低く、リーグランキング上位の選手に脅威を与えるものとはならず、トップは16関根選手のままです。
チャレンジリーグもトップの飛行距離が6Kmと、基準距離の10Kmに満たないために100点タスクとはならず、ランキングに変動を与えることはなく、トップは503松岡選手のままでした。

夜はYMCAの食堂をお借りしてのパーティーと、最終戦恒例となった「ナントカ王」の表彰が行われ、大いに盛り上がりました。

2日目

昨日の天気予報では雨だったはずが、朝は何故か日差しもあり期待を持たせる朝となりました。
そうは言っても昼頃から雨の予報もあり、競技ができるかは難しい状況です。
泣いても笑っても最終日。これで2018年シーズンの結果が決まってしまうのです。


選手は今日もWingkissテイクオフへ移動して行きます。が、ほぼ全ての選手がそろった9時前に無情にもYMCA近辺から天子付近には雨が・・・。雨は徐々に長者岳から猪頭方面へ勢力を広げつつあることから、残念ながらこの時点で競技はキャンセルされて2018年シーズンのチャレンジ、N2両リーグ成績が確定したのです。

最後に思い切り戦ってシーズンを締めくくってもらいたかったのは、選手も主催者も同じです。しかし、天気ばかりはどうしようもありませんね。

大会結果

最後に思い切り戦ってシーズンを締めくくってもらいたかったのは、選手も主催者も同じです。しかし、天気ばかりはどうしようもありませんね。

チャレンジリーグ総合

優勝 504斎藤 光秋 Gingliders-Bonanza2

準優勝 524小名木伸枝 Nova-Mentor5 Light

3位 502岩野おさむ Advance-Iota2

3位 508阿部 耕司 Nova-Sector

3位 517谷藤 幸子 Advance-Sigma10

3位 529荒金 正之 Gingliders-Carrera+

3位 536疋田 祥丈 Advance-Iota


チャレンジリーグ女子

優勝 524小名木伸枝 Nova-Mentor5 Light

準優勝 517谷藤 幸子 Advance-Sigma10

3位 523西条 薫 Advance-Iota2


チャレンジリーグチーム戦

優勝 コンタ君(松岡、阿部、貝田、小名木)

優勝 チーム今井浜(岩野、齋藤、谷藤、西条)

3位 ファイナル中村門下生(疋田、佐野)

3位 なまず(荒金、飯田)


N2リーグ総合

優勝 20小森さちよ Ozone-Zeno

準優勝 39河野 美樹 Niviuk-Peak4

3位 16関根 順 Ozone-Enzo3

4位 17藤野 光一 Niviuk-Artik5

4位 70関根 睦 Ozone-LM6

6位 307中久喜千代 Gingliders-Explorer

6位 311千葉 恵 Gingliders-Explorer

6位 325小熊 健 Gingliders-Bonanza2


N2リーグ女子

優勝 20小森さちよ Ozone-Zeno

準優勝 39河野 美樹 Niviuk-Peak4

3位 70関根 睦 Ozone-LM6

4位 307中久喜千代 Gingliders-Explorer

4位 311千葉 恵 Gingliders-Explorer

6位 211柏倉 恵美 BGD-Cure


N2リーグチーム戦

優勝 Tateyama Team-C(藤野、小森、吉田)

準優勝 チーム東北(関根睦、柏倉、田邊)

3位 PinCOO(平松、中川、中久喜)

3位 KPS(清水、石原、江連)

3位 とちおとこ(関根順、谷藤)

3位 NIVIUK+α(田前敏、藤本浩司、田前英代、藤本裕子)


年間表彰

チャレンジリーグ総合

優勝 503松岡 茂 Nova-Mentor5

準優勝 504齋藤 光秋 Gingliders-Bonanza2

3位 502岩野おさむ Advance-Iota2




チャレンジリーグ女子

優勝 517谷藤 幸子 Advance-Sigma10

準優勝 512富重のぞみ Nova-Phantom

3位 524小名木伸枝 Nova-Mentor5 Light


N2リーグ総合

優勝 16関根 順 Ozone-Enzo3

準優勝 26中島 義雅 Ozone-Enzo3

3位 51田前 英代 Niviuk-Icepeak7




N2リーグ女子

優勝 51田前 英代 Niviuk-Icepeak7

準優勝 20小森さちよ Ozone-Zeno

3位 39河野 美樹 Niviuk-Peak4




N2リーグチーム戦

優勝 KPS(中島、清水、青柳、石原、江連)

準優勝 とちおとこ(関根順、田村、谷藤、園部、西川)

3位 PinCOO(中川、工藤、中久喜、横堀、平松)


2018年のチャレンジリーグ、N2リーグがここに閉幕しました。各地の大会に参加いただきました選手のみなさま、ありがとうございました。 大会主催者のみなさま、支えてくださったスタッフのみなさま、多くの方々にこの場をお借りして御礼申し上げます。 2019年も、みなさんと一緒に楽しい競技会を作っていきたいと考えておりますので、来年も多くの皆様の参加をお待ちしております。

 

JPA競技事業部



高嶺カップ 2018

レポート 鈴村恵司(競技委員長)

N2リーグ、チャレンジリーグ併催大会で実績を積み、’17年シーズンからナショナルリーグ、チャレンジリーグ併催大会に様式を変えたこの大会、昨年は、残念ながら二日間とも雨で不成立となった。天気ばかりは…と判っていても、“今年こそは”の思いは強い。
願いはかない、結果としてナショナルは昨年から設定されたエリアのある平谷村の隣の、さらにその隣のマチの新野のゴールに5名が到達し1タスク、チャレンジは2タスクが見事成立した(チャレンジは2タスクともにゴール者が出なかったのは残念だった)。

【一日目】

「何が良いって天気が良い」といった朝。風は西風弱めで、午後から中層雲が濃くなる天気予報。チャレンジは定番のTOのある高嶺山側で三角パイロンを2周し、国道を空中で横切った位置のLD周りの三角パイロンをやはり2周する約17kmのタスク。ナショナルは、LD側から高嶺側に戻り、さらにLD側でも三角パイロンを巡る約38kmのタスク。ナショナルタスクは、新野ゴールを使うタスクの提案に対して、午後から雨を予測している天気予報もありリスク大とタスクコミッティの判断により設定されたものである。
PCL タスクはこちら
PNL タスクはこちら

果たして残念ながら雨予報は当たってしまう。チャレンジデパーチャオープン15分後、ナショナルはデパーチャオープン15分前の12:00に雨によりタスクストップとなる。数年前の大会で急速な雨雲の発達(来襲?)に多くのグライダーが失速におびえながら高度処理していたシーンが思い出される。実際この日もタスクストップ後、1時間近く雨やみを待ってのフライダウンでも雨に祟られた選手が出てしまった。
ともあれチャレンジは15分間の短い試合時間の中、トップの中村選手が9kmを飛び、得点も240点となるタスクが成立。高嶺側の三角パイロン2周をクリアし、LD側に向かう途中でのタスクストップだったようで、つまりこの時、中村選手が先頭だったということだ。
N2クラス選手で構成されたオープンクラスでは袴田選手がトップを取った。
PCL総合TASK1の結果
PCLオープンクラスTASK1の結果



なんだかんだとは言え、飛べた日のパーティは盛り上がる。もともと予報的には日曜が本番だとみんな思っていた。遠すぎてぼんやりしていた「来年こそは」の思いは、はっきりとした「明日こそは」に変わってゆく。
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【二日目】



昨日は雨の影響で南東風だったが、高嶺山は南西風で飛ぶのが基本である。その通りの風が吹くものと週末前までは思っていた。しかし、この日の予報は、標高800m辺りは南西風ながら高嶺TOの標高1500m辺りは午後過ぎまで北北東風、そして現実も南西向きのTOの裏側から強い北風が入ってきていた。但し、標高1500mからの雲底高度は3000m!、
果たしてどうなるのか、いわゆる胃が痛い状況の中で選手もスタッフも待つことになった。

北風に打ち勝つ南西風の到来、雲底高度3000m。飛べればきっと“とても”良くなる(はず)の予測のもと、ナショナルはLD側から山頂側を2回リターンし、ゴールに向かう45kmタスク。チャレンジはLD側の三角パイロンを1周増やした20kmタスクを設定した。
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願いは、かなって11時過ぎから南西風になりウインドダミーも空中待機。11時50分からチャレンジのウィンドウオープンでゲームスタート。予測外だったのがTOに吹きつける風がサーマルまじりで強くなったこと。チャレンジのグライダーでも立ち上げると持っていかれて右往左往。ましてやナショナルの高性能グライダーはヒヤヒヤするTOシーンが展開した(でもトラブルはなかった、良かった。)。さらに予測外がもう一つ、サーマルトップはとても3000mとはいかない、どちらかといえば渋いコンディションとなったこと。
チャレンジの選手たちは高嶺側をこなし、LD側に向かったがサーマルに恵まれずにゴール者なし。飯塚、岩野、谷藤(幸)、松岡の4名が僅差で飛行距離を争った。PCLオープンクラスは谷藤(公)選手がトップ。
PCL総合TASK2の結果
PCLオープンクラスTASK2の結果

ナショナルのトップグループは高嶺側でしっかり上げてLDに向かいLD側サーマルを使わずにリターン。そして後続組は時間経過とともに活発になったLD側のサーマルで上げなおしてのリターンを始める。しかし平均速度があげられないコンディションの中、高嶺側とLD側の2リターンの完遂は大半の選手には難しかった。トップグループ5名の内の高杉、扇澤、中村、稲見の4名が集団でゴール。少し遅れて追従していた薬師寺がゴール行の最終切符を手に入れたもののゴールは5名にとどまった。レース中盤でトップを引いた扇澤選手が高いリードアウト得点を得て、ゴール到達はトップであった稲見選手を抑えて1位。レース序盤を制していた高杉選手もリードアウト得点を活かして2位を得た。女子は’15年の高嶺N2リーグで強い印象を残した片貝選手が1位となった(片貝選手は総合でも9位)。
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ナショナルはタスク2成績が大会成績だが、チャレンジの大会成績は2タスク合計となる。チャレンジ総合は岩野選手が松岡選手を僅差で抑えて優勝。オープンクラスは谷藤(公)選手がトップとなった。
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見事大会成立。しかし課題も残った。チャレンジリーグは高嶺側のパイロンを増やして時間をかせげばLD側のサーマルを楽しんでもらえたのではないか。ナショナルの2リターンは長すぎた。サーマルトップ3000mを本当に信じていたのか、与えられた数値に流されてしまったのではないか。まったく自らを騙すことほど、たやすいことはない。
そう次の「来年こそは」が始まったということだ。

長野県側からでも愛知県側からでも岐阜県側からでも高速を降りて1時間ぐらいはかかる。関東から見れば南アルプスを大きく回りこむ、どこからも近くはないロケーション。一番近いコンビニは車で30分。しかし他では経験できない山岳コンディションでのフライト、晴れた日には伊勢湾が光り、少し上げれば南アルプス越しに富士山が見えるといった、ここならではの特徴も持つ。また、この時期、紅葉もきれいです。今年いらした方、来られなかった方、そして新たに参加を考えている方、どうか今後とも高嶺カップをよろしくお願いします。

>最後に高嶺山頂西側の紅葉、多くのPNL選手は目にしたはず。